第十話:決着
「まだ終わってないよ!」
「何だと!?」
ジャドは狼狽した。
何故生きている?どうやって回り込んだ?そもそも立って歩くことも困難なこの空間で?
その疑問に答えるように白波は語りかけた。
「君に二度も助けられちゃったね」
そう、ヤモリに。
鎌が振り下ろされる刹那、天啓のごとく白波に囁いたのは、あのヤモリであった。
その鳴き声を聞き、白波は迷わず、その力を再度借りた。
壁に貼り付く。その単純な、しかし不可思議な力は二度も白波を救ったのだ。
致命的一撃を壁に貼り付くことで回避。
だが問題はここからだ。床に立つだけで危ういというのに、壁に貼り付いて動くのは至難の技である。
そこで白波は賭けに出た。
壁に貼り付く能力を解除!そして同時に借りたのは…ヤモリの色覚能力!
あまり知られていないが、ヤモリの特異な色覚能力は暗闇でも発揮される!
それが何を意味するのか。
ジャドの能力はかなり高性能であり、影になっている部分でも一様な模様になるように調節されるのだ!
それゆえに壁と床の境目すら分からなくなってしまうのだが、それが仇となった!
暗闇を見透かすヤモリの目は、その変化を感じ取り、かえって違和感を生じる!
それにより、正常に壁と床を認識できるようになった白波は壁を蹴って跳躍!
弾き飛ばされた盾まで走り、回収に成功したのだ!
ヤモリの色覚もさることながら、恐ろしいのはそれを一瞬でやってのける白波の素早さ!
「おのれちょこまかと…我が能力を破ったというのか!」
ジャドが怒りに吼える!
「さあ、決着を付けよう!」
白波は槍と盾を構え突進攻撃!
「調子に乗るな!能力など無くても、貴様を切り刻むことは容易!」
迎え撃つように鎌を振りかぶるジャド!
「ヌゥン!」
横になぎ払うように振るわれる大鎌!
だが手ごたえは無い!
白波は槍を使い、棒高跳びの要領で回避していた!
「我の後ろを取れるなどと思わんことだ!」
それを目ざとく見てとったジャドはそのまま鎌を一周させる!
だが、手応えは…無し!
「何!?どこへ消えた!?」
素早く周りを見回すが、どこにも見当たらない!
「残念だけど、私の…いや、私とこの子の勝ちみたいだね」
声のする方向は…真上!
白波は天井に貼り付いていた!
天井に到達するタイミングで能力を切り替え、貼り付いたのだ!
「これで…終わりだ!」
そして白波は天井を蹴って落下の衝撃を乗せた一撃を見舞う!
「何…だと…き、さ、ま…グフッ」
脳天に激しい一撃を喰らったジャドは気絶。
部屋の色が元に戻っていく。
「勝った…ふう、しかし私以外にも特殊な能力を使える人がいるなんて、ねぇ…」
白波は一つ息をついた。
「キュイ!」
ポケットからヤモリが顔を出す。
「ああ、ごめんね、今返すよ…ありがとう、君のおかげだよ」
「キュイ?」
「さ、帰ろうか…しかし、この人、どうしようかなぁ」
辺りをみまわす。縄の代わりになりそうな物は…
「あの奥の部屋になにかあるかな?」
白波は最奥の部屋へと足を踏み入れる。そこは盗品置き場であった。
「これなんかよさそうだね」
そういって白波は金の鎖でジャドをぐるぐる巻きにした。
そしてそれを引きずってアジトを後にするのだった。




