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第九話:対峙

階段を上りながら、白波は考える。

思わぬ怪我を負ってしまった。そもそも槍斧形態はかなり重いので独力では上手く使いこなせない。

それなのに無理をしたせいで右足の負荷はかなりの物になってしまった。

この状況でボスに勝てるのだろうか。

敵陣に自分一人という孤独感も手伝って、白波はかなり自信喪失していた。

その時。

「キュイ」

ふいに何かの鳴き声がして、白波は立ち止まる。

「……?」

辺りを見回すが、気配は無い。

「キュキュー」

「なんだ、君かぁ」

声の出所は白波のポケットだった。

ポケットからヤモリが這い出てきたのだ。

「落とし穴のところからずっとついて来てたのかい?」

「キュー!」

「やれやれ……さっきとか危険だっただろうに」

「キュッ!」

「分かってんのかな全く……これからもっと危なくなるから、ホラ」

そう言って逃がそうとするも、ヤモリは離れようとしない。

「キュイキュ!」

「分かったよ、でもちゃんとポケットに隠れてるんだよ。全く、変に懐かれちゃったなぁ……」

呆れつつも、思いがけぬ奇妙な道連れを得て、白波は少し心強くなった。


数分後。

上階の大扉を開けた白波を迎えたのは、二メートル超の威圧的な長身!

「フン、ここまで来るとは……な。お前は一体何者だ?」

頭目、ジャドが恐ろしい声で問う。

「私は白波。通りすがりの借賊だよ」

「シャクゾク?なんだそれは?」

「君たちみたいに物を盗むのが『盗賊』なら、勝手に借りて行く私は『借賊』だ。違うかい?」

怪訝そうに聞き返すジャドに、楽しそうに答える白波。

「借りる?一体何のことだ?」

「こういうことだよ」

白波がそう言った途端、ジャドの全身から力が抜ける!

「!?…なん…だ、貴様、何をした…?」

「悪いけど、君から力を『借りた』。文字通りね。このままトドメを刺させてもらう…!?」

ジャドの怪力を上乗せした豪力で、一気に片を付けようとする白波。だが、異変が…?

「体が…動かない…?くっ…!」

懸念していた通り、この能力にはなんらかの制約があるのだ。そう察した白波は能力を解いた。

「小細工を!」

即座に、力の戻ったジャドが鋭い蹴りを叩き込もうとする!白波は危うくそれをステップ回避!

「なるほど……貴様も…奇妙な能力を持っているらしいな」

「『も』?」

聞きとがめる白波。その時!

「ハァッ!」

ジャドが気合を込めると、そこを中心に奇妙な空間が広がる!

床が!壁が!天井が!波打つように不気味に蠢く模様に塗り替えられていく!

「うわっ!なんだこれ!?」

白波は、四次元空間に浮かんでいるような奇妙な感覚に陥った。

「我が能力……それは色を操り、『塗り替える』能力!」

「驚いた…私以外にも能力を持った人がいるなんてね」

「フン、我以外に能力者は不要!覇者は常にただ一人であるべきなのだ!」

ジャドは武器を構える!一振りで10人は首が飛ぶであろう巨大な大鎌だ!

白波も武器を構える!威圧する巨盾と大槍!


「フンッ!」

先に仕掛けたのはジャドだ!大きく鎌を振りかぶり、一撃で首を撥ねにかかる!

走ってかわそうとする白波!だが!

「!?」

上手く走れない!危うく盾で防ぐ!だが!なんという怪力!盾は弾き飛ばされてしまった!

「フハハ!我が能力の下では貴様は歩くことすらままならぬ!」

その仕掛けは四次元めいた模様にある!

足から伝わる石の床の確かな存在感!しかし、視覚から伝わる奇妙な浮遊感!その差が白波に襲い掛かる!

「ホラホラホラホラ!あがけあがけ!貴様にはそれくらいしか出来まい!」

襲い掛かる非情な大鎌!体制を崩し床に伏せた白波は、無様に転がって回避!

「何か打つ手は…無いのか…?」

体制を立て直す暇もなく、這って距離を取る白波。だが!

「!?しまった…!」

進もうとした方向には、冷たく無情な石の壁!

これぞ「塗り替える」力のもう一つの罠!

壁と床の境目が分からなくなり、部屋の広さを見誤ってしまうのだ!

「色を操るとは、すなわち場を操ること!地の利を得ればすなわち勝ちは必然!死ねィ!」

振り下ろされる大鎌!

その一瞬に、白波は考える!

(せめて…せめてこの色のトリックをどうにかできれば!)

その時!天の啓示か、白波に囁く者あり!

そして……


「フン、能力を持っているとはいえ、弱敵であったな…」

土煙の中、呟くジャド。だが!

「まだ終わってないよ!」

不意に後ろから声!そこには、弾き飛ばされた盾を拾い、地を踏みしめて立つ白波の姿が!

「何だと!?」


続く

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