3話:使ってもらおう。
あれから3週間がたちます。一向に使う気配がありません。道具としてこれはどうかとおもいます。
実はあのねずみキラーのあと、中に入ってきたリリーナちゃんが泣き叫びました。はい。
しっかり念入りに拭いてもらった後に、床の掃除をしてました。しかし、俺には関係ないのでしっかりがっつりLV上げをしたいと思い
ここ21日間、罠にかかったねずみをうまーく狩りつつリリーナちゃんを泣かせていたところ、ステータスがこんなんになりました。
魔鉄のクワ(you)粗悪品
Lv10
HP:なし
MP:50/50
スキル
なまくら
魔鉄
頑丈
大地操作
隠しスキル
言語、閲覧機能
ステータス
自動回復
魔力操作
となりました。はい。MPだけ増えていくとおもったら、スキルの鉄が魔鉄に変わり、さらに少しだけ燃費がよくなりました。
成長するっていいね!そろそろなまくらが消えてほしいころだけど・・・。というか一切使われない?抱き枕につかわれたんじゃたまったもんじゃない。
こうなったら実力行使だ。よし。こんど帰ってきたら・・・ふふふ・・・
ガチャっと音がする。さて、かえってきたかな?
・・・・おや?
「ひひひ、奴の元気の源はこいつかなぁ・・・?」
ニタァという表現がふさわしいくらいのクズっぽい男がそこにいた。背は低くないし、肌の色は白。ただし顔は悪い。
みたことはないが、まるでゴブリンみたいだ、とおもう。だけどこいつ人間だろう。おそらく。たぶん。きっと。
「ほぉー、いいモノつかってんじゃねぇかぁ・・・」
黙れカスが。
「あ?こいつしゃべった?」
おっといけない。つい声が出てしまった。
「まぁいいや。こいつは高く売れそうだぜ・・・。」
げ、こいつは俺を盗む気だな・・・だけど、俺は道具だ。何もできない。下手をしたら壊されかねない。
いくら頑丈であっても、大地に触れなければ、俺は魔法も使えない。こまった。
ゴソゴソと音がして、俺は荷物袋に放り込まれる。いや、でかいなこの袋。
真っ暗闇で何もみえやしない。しかし、周りでヂャラヂャラと重い音やら軽い音やらがする。
貴金属を集めてるようだ。ドロボウかなにかかな?ドロボウだろう。
何も見えないが、音は聞こえる気がする。扉の開く音、閉じる音。
炎が燃え盛る音、さらには悲鳴まで。なにがあったのだろう。
「へへへ・・・ここからいなくなっちまえばそれで終わりだぁ!楽して暮らしてやるぜ・・・」
三下の声が聞こえる。あ、なんかギャオオオオン!とかいう咆哮が聞こえる。
「まずった!ドラゴンだと?!ギャアアアアアア!」
次の瞬間、ゴオオオオ!という音とともに袋ごと燃え上がる。ドサっという音と衝撃がくる。どうやら火葬されているらしい。
袋がすべて燃え尽きると、自分へこびりついた様々な貴金属とともに俺の視界が晴れていくのがわかる。
目の前では巨大な羽の生えていない爬虫類と一番最初に見たおっさんが戦っている。
あともう一人・・・リリーナが何かを探している。武器だろうか。
そういう雰囲気はいやだ。リリーナ!こっちだ!と心の中で叫んでみる。
「だれ!?」
実際叫んでしまったらしい。しかたない。もう一回叫ぼう。
「こっちだ!俺をつかってくれ!」
驚いた顔でこっちを見てくる。刃なんかない俺が役に立つわけがない。だけど。
「あった!あった!ちょっと形がかわっちゃってるけど、だいじょぶかな?だいじょぶ!ちゃんと打ち直してあげるよ!」
と言ってくる。まて、まて今はまずい。
「とけた金属がこびりついてるんだぞ!」
そう言って叫んでも
「大丈夫!大丈夫だから!」
といって銀色のガントレットをつけた手で持ってくる。それでも痛いはずだ。
「私の武器はあなただけなのよ!」
ちょっと心の中で涙があふれそうだった。そんなとき
「ぐあぁ!」
おっさんが倒れる。
「おやっさん!」
リリーナが叫ぶ。俺を両手に持って。ガントレットが特殊製なのか、金属がくっつく気配がない。
だけど熱そうだ。手に傷が絶対に残るはずだ。
そのうち、おっさんが食われそうな状態になっている。あの人は師匠なんだろう。大事な人のはずだ。
「「あなた(あんた)、私(俺)に力を貸して(くれ)!」」
そう、叫んでいた。お互い、どういう風にやればいいのかわからないのだとおもう。だったら、いまできる全力をやってみる。
あのおっさんが死んだら、この子も死ぬんだろうか。それは許せないよな。
幾分か考えて、天井付近をみてみる。大きな岩が埋まっている。おあつらえ向きなのかもしれない。
「あなた、どうすればいいの!?」
「俺をおもいっきり、岩のとこまでなげつけてくれ!それだけでいい!」
「どうするの!?」
「いいから!」
「わ、わかったわ!」
そういいながらジャイアントスイングばりに岩に向けて俺が投げられる。
飛んでいて、気がついたが、俺、すごくやらかくなってるし、棒部分なんて50cmもなくなっている。
たぶん、岩につぶされたらひとたまりもない。だいじょうぶ。それによって救われるのならば。
最後に話ができてよかったなぁ。短い人生(?)だったけど。
自分の刃先が岩に触れ、つきささる。全力でMPを使い、岩の周囲の地盤を砕く。砕けたのは幸いである。
だが、同時に自分の運命を受け入れる番でもある。岩が崩れ落ちる。俺は岩ごと爬虫類の背中におちる。最後に頑丈だったために、折れる一瞬前、竜につきたたったような
感触とともに意識が暗転していく。
俺の意識はそこで途切れた。
ちょっとひどい終わり方ですが、まだ続きがあります。
大地操作は精密にやる(断面をきれいに落とし穴を作る)ことや
大規模にやることでMP消費が大きくなります。主人公はまだ知りません。