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プロローグ

不遇職と呼ばれるテイマーの少年が、両親に内緒で迷宮に潜りながら成長していく物語です。

気に入っていただけましたら、ブックマーク・評価をいただけると励みになります。

4章まで作成済みですので毎日20時頃に更新予定です。よろしくお願いします。

レインは、目の前に並べられた二つの素材を見つめていた。赤黒い輝きを宿す、ミノタウルスの魔石。そして、黒曜石のような光沢を放つシャドウパンサーの黒爪。どちらも、簡単に手に入るものではない。ミノタウルスとの遭遇では死を覚悟し、シャドウパンサーとの戦いでは何度も追い詰められた。それでも逃げずに戦い続けたからこそ、今ここに二つの素材がある。


レインは、その隣にいる小さな魔物へ視線を向けた。


「キュ?」


チビが不思議そうに首を傾げる。二ヶ月前まで、ただの弱い魔物だった。それが今ではレベル十。そして――融合の条件を満たしている。


レインはゆっくりと息を吐いた。


「……ついに、ここまで来たな」


チビは意味が分からないのか、尻尾を揺らしている。レインは小さく笑った。あの日、隠し部屋で得た力。それは、この世界のテイマーが知らないはずの可能性を秘めていた。魔物は、レベルを上げて強くなる。だが、生まれ持った種族そのものを変えることはできない。それが、この世界の常識だった。しかし、融合は違う。条件を満たした魔物へ魔石とドロップアイテムを使うことで、その存在そのものをより高位へ変質させる。さらに、異なる種族の素材を組み合わせれば、本来なら存在しない進化が生まれる可能性すらある。特殊進化。前例のない、異質な進化だった。


「……どんな姿になるんだろうな」


レインはチビを見つめた。角が生えるのか。身体が大きくなるのか。あるいは、まったく別の姿になるのか。何も分からない。だからこそ、期待してしまう。


レインは魔石へ手を伸ばした。指先が触れる。その瞬間だった。頭の奥へ、膨大な情報が流れ込んできた。


「……っ」


以前、スキルオーブを使った時と似た感覚だった。断片的だった知識が、次々と理解へ変わっていく。複数の進化先。それぞれ異なる特徴。必要となる素材。そして、その中に――ひときわ強く意識を引くものがあった。ミノタウルスの魔石。シャドウパンサーの黒爪。その二つを組み合わせた時にのみ到達できる進化。レインは息を呑んだ。


「……これだ」


理由は分からない。それでも、なぜか確信できた。これがチビに最も適した進化だ。レインはチビへ視線を向ける。


「お前は、どう思う?」


すると、


「キュッ!」


と元気な鳴き声が返ってきた。レインは小さく笑う。


「そうか」


そして、二つの素材へ手を伸ばした。ミノタウルスの魔石。シャドウパンサーの黒爪。その二つが、レインの手の中で静かに輝き始める。


「……行くぞ」


赤黒い光と、闇色の輝きが混ざり合う。やがて二つの素材は宙へ浮かび上がり、渦を巻きながら強い光を放ち始めた。


「キュッ!?」


チビが驚いて飛び退く。しかし、伸びた光は小さな身体を包み込んでいく。白い輝きが部屋を満たした。レインは、ただその光を見つめていた。成功するのか。それとも――。数秒にも満たない時間が、永遠のように長く感じられた。

第3話までは一気に投稿します。

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