勇者よ、死んでしまうとは情けない!
「勇者よ、死んでしまうとは情けない! 」
「出かけて数分で命を落とすやつがあるか! 」
「なに……? 腹を下して? 草陰で用を足していたら? 襲われたあ??? 」
「……それはまあ、仕方ないか? 」
「……いやいやいや」
「不用心すぎるぞ勇者。そういう時こそ、旅の仲間とフォローしあってだな」
「む……? そういえば、勇者よ旅の仲間はどうした? 」
「一人で街を出た!? 」
「そんな無茶をする者があるか! 」
「……勇者たるもの、一人旅ぐらいやってのけるだと!? 」
「できとらんやないかーい!!! 」
「ものの数分で魔物に襲われて、城に戻ってきとるやないかーい!!! 」
「そういうのは、強くなってからやりなさい! 」
「ふう……もうよい」
「次は、しっかり準備をするのじゃぞ。便所を済ませ、仲間を集めてから街を出るのじゃ」
「ん……? どうした? 」
「何処で仲間を集めればよいか、じゃと!? 」
「そんなの、酒場に決まっておろう! 」
「酒場で旅の仲間を集うのは勇者の伝統! 今時の若者は、そんなことも知らんのか! 」
「怖くて酒場に入れないじゃと! なんと情けない! 」
「ううむ……いや……まあ……」
「確かに勇者の申すことも尤もじゃ。わが国では未成年の飲酒は違法じゃ」
「勇者がまだ成人を迎えていないことをすっかり忘れておったわ」
「よおし、わかった。大臣よ仕度をせい! 儂が征く!」
「まつりごとは、大臣、貴様に任せた」
「なんじゃ勇者。情けない顔をしおって! 心配するでない!」
「これでも、先々代の勇者。旅など慣れたものよ! 」
「ははは!久々に血湧き肉躍るのう! 」
「さあ征くぞ。勇者よ! 」