勇者よ、女に振られたぐらいで泣くな! 情けない!
「勇者よ、女に振られたぐらいで泣くな! 情けない! 」
「長年愛した妻に逃げられたとでも言うならともかく、相手はたかが町娘ではないか! 」
「なにぃ? 妻に逃げられたことがあるのかじゃと!? 」
「そんなのショッチュウじゃわ! 涙も枯れたわ! ははは!」
「……ふむ、確かに心身ともに美しい娘ではあったな」
「ふふふ、儂も、もう少し若ければ手を出しておったかもしれぬぞ」
「ああ、すまんすまん。冗談じゃ」
「だからいい加減泣くのをやめなさい!」
「致し方ないではないか、勇者よ」
「わし達と共に町を救った、あの青年剣士」
「聞けば、あの町娘と良い仲だったと言うではないか」
「ぽっとでの貴様じゃ敵わんさ! 」
「ははははは! 」
「なに。女なぞ星の数ほど居る! ただし侮るなよ勇者! 」
「ライバル足り得る男達も星の数ほどおるのじゃ! 」
「しかも、我が国の人口比で見ると男の星のほうが多いしな! 」
「どれ、ちょいと一杯引っ掛けに行こうではないか」
「かつての儂が如何に姫騎士を口説き落としたか」
「若き勇者に、その術を伝授してやろうではないか! 」
「それに、いくら若いと言っても、そろそろ酒の味も覚えても良かろう」
「未成年? そんなもの知るか! 王都を出てしまえばこっちのものよ! 」
「勇者よ。お主は剣技に関しては、一人前と言っても過言ではない」
「だがの、一端の男たるもの、酒ぐらい嗜まなくては、いつまで経ってもガキのまんまじゃ!」
「なにぃ!? わしのほうこそガキっぽいじゃと!? 」
「女の口説き方も知らん奴に言われとうないわ! 」
「まあ、黙ってついてこい勇者よ」
「儂のことをガキ扱いした罰じゃ、今日は酒だけじゃ済まさんぞ……! 」
「実は、この町はな。かつて冒険のさ中に立ち寄ったことがあるのじゃ」
「……儂もな、この町で大人の男になった口なのじゃよ」
「まあ、あの店がまだあるかは定かではないがな! 」
「そんな情けない顔をするな勇者! 」
「兎にも角にも、まずは酒じゃ! 」
「女の口説き方を覚えたら、さっそく思い出のあの店で試し打ちに行こうではないか! 」
「さて今宵は長くなりそうじゃのう! 」
「ほら! 行くぞ勇者! はよついてこい! 」




