表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/12

最終話 転生ラミアとヒトの子のシアワセな生活




 今日もまた、夜が来た。


 平凡で平和で、なんにも珍しいことのない一日が終わった。

 昨日もおとといも、おそらくは明日も明後日も、なにも変わらない日を過ごしていく。



 面白かったことといえば……先日生まれた豚の子が、山羊のエサを奪おうとしてシエルに怒られてたくらいかな。

 豚と違いアクティブな山羊は、エサを切らせると遠くへ行ってしまう。シエルが必死になるのもわかるけど、彼はぼんやりシルエットしか目が見えないものだから、全然ちがう豚に向かって説教してた。

 エエッ俺ですか? てな顔をした豚が、おかしくておかしくて。


 今日一日、なんど思い出し笑いをしただろう。わたしはくつくつ、ベッドで笑った。


 ――あれから、もう一年の月日がたつ。季節は一周し、森にはふたたび、秋のにおいが満ちていた。

 十一歳になったシエルは、いくぶんたくましく背も伸びて、細長い手足を折りたたむようにして眠っていた。今日もよく働いたものね。深い眠りにおちているようだった。

 わたしの体――なめらかな鱗、ほんのすこしだけひんやりとした蛇の脚に、しがみつくようにして。

 

 わたしは彼の髪を撫で、穏やかに微笑む。


「おやすみシエル。また明日」


 こんな生活が、いつまで続くのかはわからない。

 だけど一日でも長く、一時間でも多く……こうして彼と生きていたい。


 うとうとしかけたところに、声が聞こえた。



――ばんわー、ひさしぶりっ。起きてるー?――



 女の声だ。



――やあ、いろいろごめんね。あたしってば取り違っちゃって――

――だってほら、下半身が蛇になりたいなんてややこしい言い方するからさあ。

――ほんとごめん。今度はちゃんとするからね。準備はバッチリよ。チートで無双する勇者でもハーレムキングでもお望み通りにやり直しさせてあげるわ――


――ねえ、生まれ変わるなら、何になりたい?



 わたしは答えた。


 

蛇妖女ラミアにしてくれて、ありがとう」 

   


 

お読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ