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誰かの遺書

遺書


この手紙は、私の葬儀が終わってから読んでください。


どうか、棺のそばでは読まないでください。


あの方は、音をよく聞いていますから。




私は、生まれてから一度も誰かに愛されたと思えませんでした。


だから私は、「〇〇〇〇」という集まりに入りました。


あの方たちは言いました。


「神は姿を見せない。音だけであなたを抱きしめる。」


最初は優しい音でした。


鈴。風鈴。拍手。木魚。足音。


どれも「祝福の音」だと教えられました。


毎日、耳を澄ませるようになりました。


すると、本当に聞こえるのです。


誰もいない部屋で、


「愛しています。」


そう言われました。


私は泣きました。


初めて、誰かに必要とされた気がしたからです。


ですが、入信から四十九日目。


教祖は私にこう言いました。


「祝福は、あなたの音になる。」


意味が分かりませんでした。


その夜からでした。


家中の音が、私の名前を呼ぶようになったのは。


床が鳴り天井が鳴る。


耳の中でも鳴る、眠れませんでした。


相談すると、皆が笑いました。


「もうすぐ愛される証です。」


違いました。


あれは祝福ではありません。


音は、私を愛したのではありません。


私を覚えただけでした。


今も聞こえます。


誰もいない部屋で。


……コン。


一回。そしてまた、


……コン。


近づいています。


もう逃げられません。


だから死にます。


でも、安心はしないでください。


私が死んでも、音は終わりません。


次は、この遺書を最後まで読んだ人の名前を覚えます。


もし読み終えたあと、どこからともなく


……コン。と一度だけ聞こえたなら、


「愛しています。」


だけは言わないでください。


その言葉は、この宗教で最も古い祈りです。


祈った人は皆、二度と自分の足音を聞けなくなりました。


私も、もう聞こえません。


聞こえているのは、私を迎えに来る、あの方の足音だけです。



ネット掲示板で見つかった。遺書である。

何のために投稿したか不明。


現在はもう見られないらしい。

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