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ゴミ箱にぐちゃぐちゃに入っていた遺言

遺言


お母さんへ。


先に逝くことを許してください。


きっと皆は、「彼氏に振られたから耐えられなかったんだ」と言うのでしょう。


違います。


確かに私は彼を愛していました。


彼が「ここなら救われるよ」と勧めてくれた集まりにも、自分の意思で入りました。


そこは「〇〇〇〇」という名前でした。


「人は音で生まれ、音で救われる。」


それが教えでした。


最初は優しかった。


皆が私を迎えてくれました。


「もう独りじゃない。」


そう言われて、私は泣きました。


でも、彼はある日、私にこう言いました。


「ごめん。もう君とは会えない。」


振られた理由は聞きませんでした。


その日から、教団の音が変わりました。


誰も鳴らしていない鈴が鳴る。


誰も歩いていない廊下で足音がする。


誰も叩いていない壁が鳴る。


相談すると、皆は笑いました。


「祝福が始まったんだね。」


違いました。


あれは祝福ではありません。


誰かが、音だけで私の居場所を確かめていたのです。


毎晩、音は近づいてきました。


私は耳を塞ぎました。


それでも聞こえました。


音は耳ではなく、頭の中で鳴っていたからです。


昨日、教団の部屋で一冊の古い本を見つけました。


最後のページには、一文だけ書かれていました。


「愛を失った者は、最も美しい音が鳴る。」


その意味が、ようやく分かりました。


私は救われるために呼ばれたんじゃない。


彼は私を救おうとしたんじゃない。


ただ、次の「音」になる人間を連れてきただけだった。


だから、私で終わりにします。


お願いです。


私の部屋で、音がしても探さないでください。


と廊下を歩く音がしても、ドアを開けないでください。



それは絶対に私ではありません。


私の声は、もうどこにもありません。


聞こえているのは、私のあとに誰かを探している、「あの音」だけです。




筆者が見つけた遺言。

誰のものかは不明。

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