最終資料 閲覧番号:LAST
ここまで読んだ人へ。
まず、一つだけ訂正があります。
この資料や遺言は事件の記録ではありません。
被害者の記録でもありません。
これは、
音が、誰を見つけたか
を書き残した一覧です。
遺書を書いた女性。
死亡。
録音を解析した警察官。
退職。
資料をまとめた記者。
失踪。
共命会の教祖。
死亡。
最後の信者。
記録なし。
あなたは気付いていない。
被害者一覧には番号が振られていた。
001
002
003
……
010
その続きは空白だった。
違う。
空白ではなかった。
まだ名前が書かれていなかっただけだ。
音には姿がない。
だから逃げられる。
そう思われていた。
違う。
音は追いかけない。
待っている。
誰かが思い出すまで。
誰かが読むまで。
誰かが頭の中で鳴らすまで。
ここまで読んだあなたは、常に音を何度も頭の中で想像した。
実際には鳴っていない。
それで十分だった。
この資料は、読むこと自体が最後の儀式だから。
もし今夜、
眠る前に部屋が静かだったら、
安心してください。
静かな夜ほど、音はよく聞こえます。
何も聞こえないなら、まだ大丈夫です。
でも、聞こえた人は、このページを閉じても終わりません。
誰にも話さないでください。
話した相手は、次の資料を読む人になります。
そして、この一覧には、
また一人、番号が増えます。
ここまで読んでくださった皆様へ。
まず最後に、一つだけ。
共命会は黒幕ではありません。
彼らもまた、被害者でした。
共命会とは
1867年。
山中で正体不明の「音」を聞いた一人の男がいました。
彼は恐怖のあまり逃げました。
しかし、その音は消えませんでした。
音を消す方法を探し続けた末に生まれたのが、
共命会です。
彼らは音を神として崇めたのではありません。
鎮めようとしていました。
鐘。
鈴。
木魚。
読経。
すべては、"あの音"を聞こえなくするため。
しかし年月が経つにつれ、
本当の目的は忘れられ、
「音は救済である」
という教えだけが残ってしまいました。
被害者
被害者に共通点はありません。
年齢。
性別。
職業。
住む場所。
何も関係ありません。
唯一の共通点は、
音を意識したこと。
聞いた人ではありません。
気になった人です。
だから、
遺書を書いた女性も、
警察官も、
記者も、
同じように巻き込まれました。
遺書
女性は最後まで勘違いしていました。
彼氏に振られたことが原因ではありません。
共命会へ入ったことが原因でもありません。
彼氏は、本当に彼女を救おうとしていました。
だから共命会を紹介した。
しかし、共命会にも救う方法はありませんでした。
音
最後まで、誰も音の正体を知りませんでした。
だから名前がありません。
名前を付けた瞬間、
それは理解したことになります。
理解したものは、
忘れることができません。
だから資料には最後まで
「音」
などとしか書かれていません。
あなたへ
この物語には、
一度も音は収録されていません。
それなのに、
多くの人は頭の中で音を再生します。
それが、この物語の最後の伏線です。
音は、耳から入るものだけではありません。
思い出した瞬間にも、生まれます。
もし読み終えた今、少しだけ周囲が静かに感じたなら、
それは物語の演出かもしれません。
あるいは、ただ静かなだけかもしれません。
その答えは、誰にも分かりません。
だから、この事件は最後まで
**「未解決」**のままなのです。




