マリリンとデート
9話 マリリンとデート
「マリリンさん、こんにちは」
「やあマリリン。いい天気だね」
「マリリンおネエちゃんだ。ハーイ!」
町の人たちがスレ違うとマリリンに声をかける。
マリリンは、この町では人気者なのだな。
いつもは黒い帽子に黒いサングラス、そして黒いスーツの私だが、さすがにそのかっこうではと。
今日は麦わらの中折れ帽に、サングラスはそのまま。黒メインのラメが入ったヤシの木柄のアロハに青い半ズボン。靴はいづもの革靴を履いている。
まだちょっと寒いが、こんなかっこうでないとマリリンとはつりあわない。
マリリンのブラは今日は赤だ。
「あっ うそ〜マリリンさんだ」
女子高校生くらいだろう。茶髪のショートカットで縁無しのメガネをかけたちょっと色黒な女の子。ハーフぽい顔立ちだ。
開校記念日の休日、最近出来たショピングモールへ買い物に行こうと徒歩で家を出た。
ショピングモールまでは歩いて15分程度、学校より近い。
コンビニの駐車場でマリリンを見かけた。
ん、今日は連れがいる。しかもマリリンみたいな真夏ファッション。
でも履いている靴が。まあそれなりにあってなくもない。
誰かしら。まさか診療所の。
「あっ うそ〜マリリンさんだ」
ぶりっ子して手をふってしまった。なぜだかマリリンに会えてうれしかった。
「あ、えーとキリガクレ・マタラ」
「キリシマ・マテラですマリリンさん。今日は博士とお散歩ですか?」
「ハカセ、違う」
「あ、私はマリリンの仕事関係の者で久々の休暇で。君は?」
「ちょっとした知り合いです」
「そうですか。マリリンはこの町に知り合いが多いですよねアハハ」
「グリュッウ!」
と意味不明の言葉を発したマリリンは今日は楽しそうだ。デートかな? 邪魔しちゃ悪いのですぐに別れよう。
「アレはナンダ?」
とマリリンが空を指さした。
ん、この頃の空には。
「アレが噂のU・F・O」
アロハの男はサングラスを下げ裸眼で見上げた。 おお、意外にキレイな大きな目。
ちょっと肌寒いが快晴の青空にクラゲのようなのが浮いてる。あたしはスマホを取り出し動画モードにし、撮影しはじめた。
「大きい!」
なんか前より大きく見えるのはアレが近いのか?
クラゲの下部から数本の触手のような物がたれさがっていた。
「なにか釣ってる」
マリリンには釣りに見えるの?
上にあがる触手のような物に何か動くも物がからまっていた。
「アレはネコ? かしら……」
「マテラ、あいつネコ食べた」
触手状の物が、クラゲの中に生き物を入れている。あれは生き物を捕食しているの?
触手のような物をゆらゆらさせながらクラゲは移動はじめた。
「霧島ぁああ」
雑木林の方から自転車で走って来るドーテーが見えた。
あたしのそばまで来たドーテーがハアハア言いながら。
「UFOがぁ。 ハァハァ見たから、追って来たハァハァハァ」
「ええ、まだ見えるわ、あっちに移動はじめた」
「あっち……この先には農高の」
農高とはこの町にもう一校ある大海田農業高校だ。この道路の先、クラゲが向かった先には農高の家畜ファームなある。まさかあいつ。
「ドーテー、後ろ乗せて!」
あたしはドーテーの自転車にまたがった。
「追って!」
つづく