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0_はじまり

 Side:名取川 静菜



聖盾(ライトプロテクション)!」


 その声とともに強烈な光が彼を中心に広がっていく。


 光の向こう側に「女」が叫び声をあげながら押し出されていくのが見えた。


「女」の周辺で浮かんでいた赤い鏡は強烈な光で圧迫され、すべて砕け散っている。光に焼かれながら壁の向こう側で藻掻き、こちらに血まみれの手を伸ばすが光の壁にさえぎられて動きが取れないようだ。


 私は驚愕していた。

 たった一言で強大な悪霊の動きを封じてしまうなんてありえない。

 こんなでたらめな力があるのは、おとぎ話の主人公や英雄譚の中だけだ。


「今だ、やれっ!」


 光をもたらした彼が叫ぶ。

 私は動揺を押し隠して胸の前に右手を置き、祓いの祝詞を奏上する。


「たかまがはらにかむづまります

 アマテラスオオミカミ


 さずけられし、さんしゅのみたから

 けんをもちいて、てきをうちたち


 かがみをかがげては、やまとのくにをみ

 まがたまをもちいては、けがれをうちはらわん


 はらいたまへきよめたまえ

 かしこみかしこみもうす」


 私の右手に光の粒があつまり、9個の光の勾玉となる。


大祓(おおはらえ)!」


 私の言葉に反応し光の勾玉が稲妻のように「女」に突き進む。今まで私の攻撃を防いできた赤い鏡はすでになく、すべての勾玉が直撃し爆発した。


「痛い!苦しい!なぜわらわが消えねばならぬ!わらわは皆と一緒に遊びたいだけじゃ!」


 体の大半が消し飛び崩壊していく「女」が、己の歪んだ欲望を吐き出す。


「浜川のように遊んだのか・・・」

 彼は疲れた様に呟く。


「貴様と遊んだ者達はどうなった?どこへ行った? 貴様は大罪を犯した。その罪により地獄を彷徨うことになる。貴様は自らの罪業を償えるよう、大地母神様の慈悲にすがるがいい」


「わらわは遊び足りぬ!満たされておらぬ!まだ達しておらぬ!わらわに罪などない!罪無きわらわを害した術師どもよ!呪われるがいい!」


 彼の言葉に「女」は呪いの言葉で応じるが、彼はもう相手にはせず滅び朽ちていく「女」を悲しげな眼で見つめている。「女」が悍ましい悲鳴を上げ悶え苦しみながら光の壁の向こう側で消えていく。


 私は彼のその真剣な横顔から目を離すことができなかった。


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