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ボクは、ギルドハウス!  作者: タハノア
1章 ボクは、動物の家
9/43

8話 訪問者

 テンテンデッカーを撃退した後に、眠ってしまった僕は、やっと目を覚ましました。


 聞き覚えのある話し声が聞こえる。


「――ということだ。命の恩人、死んだかもしれない」

「ワタシ、見た! これ魔法のゴミ箱、変身した」


 ゴブリン夫婦は、無事だったんだねよかった。けれども僕がゴミ箱じゃないのはバレちゃったみたいだね。


「ゴミ箱? そういえば、なくなってた」

「ワタシ、目の前で見てた。神様にお願いしたら助けてくれた!」


 え? 神様!? なんか大ごとになってるよ。変なことにならなければ良いけど。


 そんな心配をしていたら、聞き覚えのないこえが聞こえてきた。


「ここにいたのか、お二人さん。死者の埋葬は終わったよ」


 そこに現れたのは、見たことがない生き物で、二足歩行の猫さんだった。


 顔はイタチの記憶にあった、トラ猫そのもので、全身毛におおわれている。背丈はゴブリンと同じ1m20cmぐらい。手足や体は、短くまるっこくて、かわいらしい。


 頭には革の帽子と、ゴーグルを付けている。帽子には耳用の穴があいていてかわいい耳がピョコンと飛び出ている。服は着ていなくて毛皮丸出しで、背中には大きなリュックを背負っている。


 リュックはパンパンで、巻かれた紙や剣の柄など、いろいろと物が収まりきらず、飛び出していた。


「おっと! そのでかい貝はニャんだ?」

「殻なしエビ、命の恩人、テンテンデッカーの腕、切り落として、押さえつけた」

「魔法のゴミ箱、これに変身した」


 猫さんは、僕をジロジロ見ながら何かを確かめるように、周りを回っている。


 どうやら、猫さんは、「な」と発音できないみたいで、「ニャ」になってしまうようで、ちょっとかわいい。


「殻ニャしエビ?ああ、ヤドカリのことか。それでコイツがその殻か。確かに魔力はあるニャ、だがこんニャでかい貝がいるはずもニャい。だから本物のヤドカリということはニャい……」

「でも、ちゃんと中身、いた。でも、戦い終わったら、黒いドロドロになって消えた」


 そっか、片耳ゴブリンさんには、消えたように見えたんだ。本当は地面にあふれて土に染み込んでしまったのだけどね。


「黒いドロドロ? う~ん。わからニャい! こんニャもの見たことも聞いたこともニャい」

「ワタシ、物消えるゴミ箱、これに変身するの見た」


 そうだね奥さんには、見られちゃってたからね。本当のことを伝えても、燃やされたりしないかな?


 僕は思い切って貝殻からミップを圧縮して、いつものサイズの倒木に擬態をすることにした。


 貝殻は一度、黒い塊になりぐにぐにと動き小さくなっていく。そして倒木に擬態をした。


「うわ! 元に戻った!」

「ワタシ、言ったとおり!」

「うわ……。ニャんだこりゃ」


 片耳ゴブリンさんは、散乱していた扉の破片を拾うと、僕の中に投げ込んだ。


 僕は、いつもどおり、ゴミを吸収した。


「消えた、これまだ壊れてない」

「よかった。命の恩人、生きてた」

「確かに、機能はヴォイドペールにそっくりだニャ」


 ヴォイドペール? ゴミが消える魔道具(まどうぐ)の本当の名前かな?


「なんでもいい、命の恩人で仕事道具! オレ、だいじにする」


 ゴブリンさんは、とってもうれしいことを言ってくれた。このゴブリンさんなら、僕が魔物だと分かっても大丈夫かもしれない。


 僕は覚悟を決めて、本当の姿である鳥の巣箱に戻った。


「うわ! ニャんだ! これ!」

「知らない形!」

「小さな家!」


 さすがに、3人とも、あとずさりして少し離れてしまった。


 初めに近づいてきたのは、やっぱり片耳ゴブリンさんだった。僕をヒョイッと持ち上げると、警戒しながら中をのぞきこむ。


「からっぽ」


 3人で僕を上に持ち上げて下から見たり、ぐるぐる回してあちこち確認している。そんな3人に誰かが声をかけた。


「ソコネさん、何やってるんですか?」


 そこに現れたのは、背丈が160cmほどある生物だった。


 お~! 人間だ! 初めて人間にあったよ!


 顔つきは、くりっとした目に丸い輪郭。髪形は、オレンジ色のうねりのあるロングヘア。服装は村娘風の作業着と腰巻きエプロン姿。大きな手さげカバンと、背中には大きなフライパンを背負っている。装飾品は耳に掛る髪を止めているヘアピン。


「おお、いいとこに来たニャ!」


 ソコネと呼ばれてトラ猫さんが、返事をしたってことは、トラ猫さんはソコネという生物なのかな?


「コトカ、ちょうど良かった。これに鑑定スキルを掛けてみてくれ」


 あれ? この人間は、コトカとよばれたぞ? 人間ではなくコトカという生物なのかな?


「なんですか? それ、鳥の巣箱?」

「いいから鑑定してくれ、さっきから形が変わりまくってるんだ」

「わかりましたよ。すぐにやりますよ」


 片耳ゴブリンさんが僕をもちコトカさんに近づける。


「<鑑定>!」


 コトカさんから放たれた緑のモヤモヤが僕を包み込んだ。なんだかベタベタ触られているようで、むずかゆい。


「うわ! 離れたほうがいいよ! それ人食い屋敷だ!」


 そう! 僕は人食い屋敷だよ! でも離れたほうがいいって……。やはり僕の種族名からして、普通は人を食べる生き物なのかな? 僕は気に入った生き物は食べないから大丈夫なんだけどな。


「は? こんニャちっこい人食い屋敷がいるかよ!」

「私だって知りませんよ! でも鑑定結果は人食い屋敷です!」

「人食い屋敷? オレそれ知らない」

「ワタシもしらない」


 ゴブリンさん2人は、僕を持ったままだけど、ソコネさんとコトカさんは、一歩だけ後ろに下がった。


「そうか、建物を建てニャいお前らナチュラルゴブリンは、知らないか」

「人食い屋敷っていうのはですね! 中に入った人を食べて大きくなる魔物です!」


 そこから僕の種族である人食い屋敷についての説明が始まった。


 築100年を過ぎた大きなお屋敷から人が居なくなり、かなりの年月がたつと生まれるそうです。食事や宝石などで、人間を誘い込み食べるそうです。人を食べるごとに、部屋数が増えどんどん大きくなるそうです。


 へ~そうなんだ。体の中を自由に変えられるんだ。ちょっとためしてみよう!


 僕は、ぐぐぐと力を入れてみたけど、壁がうにうに動くだけで変化は、できなかった。僕がまだ小さいからダメなのかな? やはり大きくならないとダメかな?


「それで、どうするんだ?」

「人食い屋敷、話できる?」


 ソコネさんは、腕を組ん首をかしげてう~んとうなる。


「すごい美人がいて、男をたくみに誘い込んだって聞いたことがある。だから、話し(はニャし)は、できると思うけど……」


 美人? ルアーかな? それともアバターかな?


 でも今の僕じゃ、しゃべれる生き物に変身できないし……。


「オレ、話しかけたら、わかるか?」

「わかると思うぞ、試しに話しかけてみればいい」


 片耳ゴブリンさんは、そっと僕を地面に置くと話しかけてきた。


「話わかる? わかったら、木のゴミ箱、なって」


 うん! わかるよ!


 僕は、すぐに倒木の家に擬態をした。


「やっぱり聞こえてる。理解してる。」

「私たち、助けてくれた!」


 ゴブリン夫婦は、とてもよろこんでくれているようだ。僕に意思(いし)があるって伝わったみたいですごくうれしい。


「本当に、人食い屋敷なのか?」

「ソコネさん<鑑定>スキルを疑うんですか?」

「そうは言ってもな、コトカ……。ヤドカリって家か?」

「え? ――そうだ! 貝殻が家なんですよ!」


 お! コトカさん正解です!


「んじゃ中身は?」

「中身は……もしかして変身できるんじゃないですか? 美女がいたって言ってたじゃないですか」


 またまた正解!


「そうニャると、食った生き物に変身できるってことか?」

「そうですね。しゃべれる生き物でも食べれば、話ができるんじゃないですか?」


 あ~! 残念! 不正解です。食べなくても記憶を読めば擬態できます!


 僕は、鳥の巣箱に戻り、ミップを開放(かいほう)する。そうして皆が入れるぐらい大きな鳥の巣箱になった。


「――しゃべれるやつを食わせろってことか?」


 ええ!? 違うよソコネさん! ちょっと入るだけでいいんだよ!


「違う! 人食い屋敷、命の恩人! 食べるなら、寝てるとき食べてる!」

「そういえば、寝室に置いてあったって言ってたな」

「オレ、入ってみる……」

「おいおい、マジか」


 片耳ゴブリンさんは、意を決したようで、奥さんの顔を見て一度うなずく。そして、鳥の巣である僕の丸い穴の入り口に、手をかけた。


「大丈夫! 命の恩人!」


 そう言って片耳ゴブリンさんは、勢いよく僕の中に入ってきた!


 ゴブリンさんは決意したようで、ついにみんなと話すことができそうです。



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