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第20章 問いの答え

気がつくと、愛の羅剛神は奥の地面に転がっていた。隣で使ったイアンの力によって愛の羅剛神は飛ばされたらしい。


「や、やったのかな……?」


地面にはレインを始めとする軍人達が倒れていて、辺りは静まり返っていた。僕はじっと愛の羅剛神を見た。もう起きないのだろうか。早く麒麟を探さなければならないのに。隣に立っているイアンを見ようとした僕は、響き渡る声に血の気が引くのを覚えた。


「あぁ、ここにもまだ愛を持つものがいたとは……。そうそう、お前を忘れていたよ」


錆びた体は、きしむような音を立てながらゆっくりと立ち上がる。


「まさか、あいつまだ生きて……」


何をしても倒れない、不死身の羅剛神の姿を見て僕は恐怖で一歩下がった。羅剛神が動いた、そう思った瞬間愛の羅剛神はもう僕の目の前に迫っている。


「さぁ、妾の愛を受け止めよ」


剣が振り下ろされる、その時、


「控えよ!」


それは地の底から響くような声だった。突風が吹きつけて思わず目を閉じた僕は、風が収まってからゆっくりと目を開いた。


 そこには金色に輝く馬のようなものがいた。鬣は風になびき、額から空へ貫くように生える角も光っていた。足は蹄ではなく獅子のように大きく爪が生えていて、体つきもまた獅子に似ていた。頭から首は馬、体は獅子の姿を持ち、身体中が金色の体毛に覆われて輝く眩しい生き物が目の前にいる。こんな生き物を生まれてから見たことがなくて、あまりの神々しさにうまく言葉が出てこない。


「まさか、麒麟……?」


震える声で尋ねてみると、エコーがかかったような、高音と低音が混ざったような不思議な声が頭の中に直接響いた。


「いかにも。私が麒麟。この世界を見守るものである。来るのが遅れてすまぬ」


何も言われなくても頭を下げてしまうような貫禄を纏っていた。


「お前も妾に愛を与えてくれるのか?」


歩み寄る羅剛神を麒麟は憐れむような目で見てから、地面に倒れる軍人達を悲しげに見た。


「朽ち果てるにはまだ時間がかかるが、それにしても随分と古くなったものだ。大戦の時であればただ一太刀も防ぐ事は出来なかっただろう。朽ち始めているとはいえ、今でも相当強かったはず。人の身でよくもまぁここまで追い詰めたものだ」


羅剛神は朽ち始めていた? 麒麟は慈悲深く自ら命を奪うようなことはしないと聞いたことがある。だから麒麟は羅剛神を手にかけるのではなく封印して動きを封じ、自然に朽ちて土に還るのを待っていたのか。


「お前が悪いわけじゃないんだよ。時代がお前を必要とした。そして役目が終わっただけ」


麒麟が羅剛神を見ると、羅剛神は金縛りに遭ったかのように剣を振り上げたまま動かなくなった。

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