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第18章 それぞれの覚悟3

 私は部下を背に羅剛神がイアンを引き寄せていくのを見ていた。イアンは麒法を違反しているから、そのけじめはつけなければならない。それに軍に捕まり地獄を味わうならここで一思いに死んだ方がイアンのためなのだ。イアンが羅剛神の手で殺されるのも時間の問題だった。それでいいんだ。そう何度も言い聞かせながらも、私は迷っていた。覚悟はできていたはずなのに、目の前でイアンが殺されるかもしれないと思うと今すぐ駆け出したくなる。


 やっぱり生きていて欲しい。笑っていて欲しい。死なせたくない。羅剛神は強くて私1人では到底敵わない。力量の差は明確だが行かなければイアンは確実に殺される。結局、イアンに苦しい日々を強いたのも、この状況に追い込んでしまったのも全部私のせいだ。やらされたんじゃない。私が選択して実行した。私の愚行の尻拭いをイアンにさせてはいけない。


 イアンがペガサスとここに来たのは私が勧めた本の中に麒麟の居場所についての記載があったからだ麒麟に会うことで、この世界でただ1人の友達とずっと一緒にいられるように交渉するためだ。


 イアンに何もしてやれなかった? 何を悲劇のヒロインぶっているのか。私は今イアンを助けてあげられる。時間を稼いであげられる。麒麟に会わせてあげられる。私にできることは、イアンを殺すことで苦しい現実から助けてあげる、なんて自己満足なことじゃない。いつどんな時も、世界中を敵にしても味方でいてあげる、それだけだ。


「クラン、私の部隊をお前に託す。皆を頼む」


クランが驚いて何かを言う前に私は声を張り上げた。


「羅剛神介入により任務続行は不可能と判断。これよりクランに指揮を譲る! 至急ここから撤退し、全員生きて国に帰りなさい! これがリーダーとしての、私の最後の命令だ!」


ここまで一緒について来てくれた仲間達を巻き添えになどさせない。 


 私は刀を強く握り直して地を蹴ると、イアンを殺そうとする羅剛神に向けて刀を振るった。動植物の蔓は丈夫でこんな刀では切れない。羅剛神の手から蔓を離させるしかない。本能が叫んでいた。目の前の敵には勝てない。手を出せば終わりだと。それでもいい。もう決めたの。もう2度と迷わない。私はイアンが大好きだから。

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