第18章 それぞれの覚悟
吹雪のおかげでレイン達はすっかり僕らを見失ったらしい。それをよいことに、僕らは一気に山を登り、そしてついに越えたのだ。北の山を越えた先にあったのは、流氷が浮かぶ海の真ん中につきだした巨大な洞窟の入り口だった。洞窟は海の底へと続いており、入り口までは氷の道が繋がっていた。それ以外は本当に何もなく、樹も1本すら生えていない殺風景な場所で、北の果てと呼びたくなる気持ちも理解できる。
「さぁイアン、これが旅の最後だね」
イアンは頷いた。ここで僕らは麒麟に許しをもらい、羅剛神を再封印してもらうように交渉する。それが終わった時点で僕らは逃亡生活を終えて新しい日々を生きていくのだ。
「カミー」
僕に笑顔を向けるイアンは尋ねた。
「僕らはどこにいても、いつまでも一緒、だよね?」
イアンがこんなことを聞くなんて不思議だ。答えなんか決まっているのに。
「当たり前だよ。もー、何言ってんの?」
「ははっ、なんでもないよ」
そう言って、僕はイアンと共に歩きだした。
洞窟の中は下り坂になっていて暗かった。足元に気をつけながら進むと、予言をした老婆のいた岩の中みたいに洞窟の奥から光が漏れているのが見えてきた。魔石とはまた違う、少し濃くて透き通るような青い光。僕らがその光を目指して歩いていくと、やがて開けた所に出た。
そこは、中央に青く光る広い湖があり、1本の道が湖の反対側まで真っすぐに貫いていた。そして、その道の先にはまた陸地があり、壁からは何やらオレンジ色の光が見える。
「あれが本当に最後だね。さぁ、行こうか」
僕らが前に進もうとした時、洞窟の後方から何人もの軍人が駆けてくるのが見えた。
「レインだ!」
僕が声を上げるなり、イアンは僕の背中に飛び乗ろうとした。
「させるか!」
クランが手に持っていた蔓の様なものを投げてきた。先端は輪になっており、避けようとしたイアンの手に引っ掛かった。クランが思い切り蔓を引くと輪は一気に小さくなってイアンの手を締めあげ、引かれる勢いのままイアンは地面に倒れた。一刻も早く逃げ出そうと試行錯誤するが、クランが引いていることでさらにイアンの腕を締めあげる。結び目を必死で解こうとするが、その間にもレインが抜刀して駆けてきた。
「解けない! 固くて解けない!」
悲鳴に似た声でイアンがそう言いながら必死にもがく。イアンとクランの間を張っていた蔓が急に弱まり、ぶつかり合う音が聞こえた。
「レイン戻れ!」
クランがそう叫ぶ声がして、レインはイアンを目の前にして振り返った。レインに体当たりしてやろうと思っていた僕もその方向に目線を移すと、そこには軍人達に襲いかかる羅剛神の姿があった。クランは蔓を放りだして他の部下を守って応戦しているが、羅剛神の腕はそれぞれ動きながらクランに斬り込む。一人では勝ち目がないとみたようで、レインはクランに加勢した。僕がイアンを見ると、イアンもまた僕を見ていた。今なら行ける。もう一度飛び乗ろうとしたイアンの腕がまた引っ張られ、地面に叩きつけられた。




