第17章 飛べない意味5
温かかった。吹雪に巻き込まれて、全身から力が抜けて、今度こそダメかもしれないと思ったけれど、僕は目を覚ますことができた。カミーの翼が毛布の代わりをして僕を温めてくれたのだ。カミーは僕が目を覚ますと、頬を何度も擦り寄せて喜んでくれていた。それだけ今回は危なかったのだろう。体はまだ痛くて怠いし熱もあるみたいだけどなかなか止まない吹雪のおかげで僕らはゆっくり休むことができた。欲を言うならお腹が空いたということだろう。カミーの鞍袋の中から木の実をとりだして口に入れると、それだけで力が出てくるような気がした。
しばらくして吹雪の音が収まると僕が横たわっている右横に雪が落ちてきた。上は穴が空いているのか光が差し込んできて洞窟の中が少し明るくなる。
「元気になって良かった! 力を使うのは大変みたいだしそこにいて。吹雪が止んだみたいだからちょっと外を見てくるよ」
「ありがとう」
カミーが外の様子を窺いにいった間僕は薄暗い洞窟内を見回した。洞窟と言っても奥は狭すぎていけないし、空洞になっている場所は僕らが横になれるくらいのスペースしかない。
体を動かしてみた。あんなに力を使ったのに僕の体はまた回復している。やっぱり僕が死ぬなんて予言は間違ってるんじゃないかと思った時、突然咳き込んだ。手に生温かいものが付く感覚があり、咳が収まってから恐る恐る手の平を見てみる。その瞬間、血の気が引き、心臓が凍りついた。僕の手にはべっとりと血がついて、口の中も血の味がしたのだ。
「ま、まさか……」
体が震えだした。急に不安が襲ってくる。やっぱり僕は死ぬの? 自由を手にした時お前は死ぬ、というおばあちゃんの言葉が鮮明に甦ってくる。
「イアン、晴れてて行けそうだけど動ける?」
と、こちらを見たカミーから突然声をかけられて、僕は咄嗟に手を背中に隠して笑った。
「どうしたの? イアン」
自分が死から目を背けたくて、信じたくなくて、言うのが怖くて、またカミーに何も言えなかった。どこかで気づいてほしかったけど、この事実を知ったカミーの事を考えると、やっぱり言いだせなくなった。
「今行くよ」
不安に押し潰されそうになりながら笑った僕は、この日確実に自分が死に近づいていることを知った。




