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第15章 ごめんなさい

 実に愉快だ。僕の人生で1番と言っても過言ではない。あのペガサスと一緒にイアンが笑っている顔を見ると腹が立って仕方がなかった。あの笑顔を壊してやればどんなに楽しいだろうと思っていたけが結果は予想以上だった。清々して気分がいい。


「ほんと、楽しいなぁ」


 森の奥、羅剛神の封印も解き終わった僕はのんびりと散歩していた。南部に比べて気温は低いが、気持ちが高ぶっているせいか寒いというよりむしろ暑い。


「あの顔傑作だったなぁ」


イアンの絶望に歪んだ顔を思い出すだけでおかしくなって笑った。後は世界が破滅していくのを傍観していればいいのだ。そうして全てが無に還った時、僕は満たされるのだろうか。いや、満たされるのだ。僕はそのために今まで頑張ってきたのだから。


 ふと背後に気配を感じて振り返ると、そこには1番嫌いな人間が立っていた。鬱陶しいほど構ってきて、何度撒いても追いかけてくる男。


「あぁまだ僕を追ってたの? マキノ、あんたも暇だね」


うんざりして言うが、本人は特に気にしていないようだった。どれだけ露骨に嫌いだと言っても俺は好きだとか言ってくっついてくる。皆僕の事を避けるのにこの男だけはなぜか妙に僕を気に入っている。迷惑な奴だ。


「俺の任務はニールと一緒にいることだからな!」


いつも通り堂々と暑苦しく話しかけてくるマキノにうんざりしながら言った。


「マキノは他の仕事を任せられないほどバカなんでしょ。軍辞めた方がいいんじゃない? どうせこのまま昇級できないわけだし、いるだけ邪魔だと思うよ」


「まぁ、そう言われればそうだな。俺は頭がいい方じゃないし」


挑発して、マキノが乗ってきたことは一度も無い。僕の考え方も一理あると笑っているし、気にしてないようにも見える。そこがまた面白くない。


「で、わざわざ僕の前に出てきた理由をいいなよ。雑談目的じゃないんでしょ?」


この男が怒った顔を見たら愉快なはずなのに、イライラしているのはいつも僕の方だった。


「あぁ、そうだな。確かにそうだ」


マキノは一度深呼吸すると、初めて真剣な顔で僕を見た。


「今日はニールに真剣な話があって来た」


いつも僕の背中をついて来ていたくせに、今さら何だって言うんだ。


「やりたくもないことはもう終わりにしないか?」


「は?」


素直に出た反応だった。マキノは構わず続ける。


「俺はお前を止めに来たんだよ」

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