第12章 避けられないもの2
もしかしたらここでイアンは自分の家族について手がかりを得るかもしれないのだ。早速出発しようとする僕を、イアンは静かに止めた。
「ウンディーネの湖には行くつもりなんだけど、その前に1つ確認したいんだ」
イアンは深刻な顔で老婆に向き直った。
「おばあちゃんは僕らを助けたことで麒法に違反したことになるんじゃないの?」
はっとして老婆を見る。もしそうなら僕らが老婆を巻きこんだことになる。それは完全に僕らのミスだ。そんな僕らの心配を、老婆は笑い飛ばした。
「バカだねぇ。そんな心配は無用だよ。私の存在自体が麒法違反そのものだから今誰を助けようが麒法を破ろうが関係ないのさ。それに、もし麒法違反が怖かったらわざわざあんた達に話しかけたりするもんかい。私は自分がやりたいから話しかけてこの岩の中に入れたんだよ。あんた達が気にすることじゃあない。気にせず前へ進みなさい」
老婆の言葉に、心が随分楽になる。巻きこんでしまったと思ったら、きっとこの先ずっと心が重くて辛かっただろう。胸をなでおろすイアンを見ていると、ふと思った。もし老婆にこれから先の言葉見えるのなら、僕らが麒麟に出会えるかも分かるんじゃないかと。
笑顔の老婆に、僕は思い切って尋ねてみた。
「ねぇ、もし未来が見えるなら僕らがどうなるかもわかる?」
興奮気味に尋ねた僕の隣でイアンも身を乗り出すようにして返答を待つ。老婆はそっと目を閉じた。何も言わずに時折顔を動かしたりして五分くらいたつと、老婆は目を開けた。
「あぁ見えたよ。途中までだが、お前達がどうなるかという、旅の終着点は見えた」
僕とイアンは目をぱちくりさせながら顔を見合わせ、同時に老婆の方を向いた。
「ねぇ、僕ら自由になってる?」
祈るような気持ちで老婆を見ていると、老婆は僕らを焦らすように間を空けてから言った。
「自由になれるよ」
その言葉に僕らは同時に立ちあがって飛び跳ねた。
「なれるって? 今自由になれるって言ったんだよね!」
「そうさ。あんた達は自由になれる。困難な道のりではあるけどね」
隣にいたイアンもまた目を見開いて僕を見た。
「僕らは自由になれるんだよ!」
「そうだよ! 今までやって来たことは無駄じゃなかったんだ!」
あまりの興奮に僕らの声は自然と大きくなる。麒麟に会って自由になれるんだ!
「まぁ、どの道を行くかは言わないでおくよ。そうそう出発する前にこれを持っておいき」
老婆は突出した水晶の後ろに隠していたらしい一冊のノートをイアンに差し出した。
「これはアルフォードの手記だ。アルフォードは麒麟に会って許しを得る為、今までの冒険から麒麟がいるであろう場所を特定し、旅立った。残念なことにアルフォードは道半ばで絶命した。たまたまアルフォードを追っていた他の冒険家が死んだアルフォードを見つけてね、遺体と手記を持って帰ってきた。私の家には代々この手記が家宝として渡されてきたんだが、内容が私にはもう分からないし持っているだけ無駄。だからこれをお前達に渡そう。きっと役に立ってくれるはず」




