第8章 羅剛神の在処5
僕とイアンの間にニールが入る形で並んで歩いていた。ニールは剣を抜いていないけど逃げ切れる気がしない。今逃げだせば今度こそ僕は翼とさようならだろう。こんな危ないやつに羅剛神の場所を教えてしまったら大変なことになると焦りばかりが募る。
「カミー、傷大丈夫?」
イアンは僕の方を見ずにそう言った。人間と意思疎通ができないことを逆手にとったのだ。
僕もまた前を見たまま答える。
「大丈夫。血は出てたけどそんなに深い傷でもないよ。こんなのかすり傷さ」
浮かない顔のままイアンは歩き続けた。ベリトルがイアンに残した羅剛神への道筋は僕が思っているよりもずっと鮮明らしく、イアンは1度も道を間違えたと言わなかった。
重い空気の中、イアンが突然足を止めた。今まで迷いが無かったイアンだが、その時だけは目を見開いて驚きを隠せない様子でニールを見た。目の前にあったのは岩肌が露出しただけの崖。高すぎて上の様子は分からず、そこにはイアンが言った洞窟などない。
「ねぇイアン、ここのどこに羅剛神が隠されてるの?」
そう笑顔で尋ねるニールに、イアンは慌てて文字を彫った。イアンの反応から、嘘をついたわけではないのは分かるが、ニールは果たして信じるだろうか。
「確かにここに洞窟があった。嘘はついていない」
「洞窟はどのあたりにあった?」
と、訊かれてイアンは指をさすが、そこはただの崖。割れ目すらないのだ。ベリトルは間違えた場所を教えたのか? そう思いかけた時、ニールが触れた場所が突然揺れた。それはまるで景色がプリントされたカーテンが揺れたようだった。
「さすがだよイアン。ここだ」
合ってしまった。間違いであって欲しかった。ニールを導いてしまったここが羅剛神の隠されていた場所。ベリトルに間違いは無かったのだ。
ニールがカーテンの様なものを掴んで思い切り引くと、そこにはさきほどまで見えていたはずの崖は無く、ぽっかりと開いた洞窟の入口が現れた。ニールが持っているカーテンの様な物は巨大な樹皮で、崖の上から垂らした一枚で洞窟の入り口を隠していたのだ。
「ありがとうイアン。この翡翠の玉をもってしても羅剛神の場所は分からなかったんだ」




