第8章 羅剛神の在処3
僕にあんなことまで言っておいてよくもそんなことが言えたものだ。あの時から僕の中のニールは極悪非道の悪者だ。今回はイアンの命を救ってくれたから大目に見てやろうとも思うが、やっぱり癪にさわる。
「いやぁ、レイン大佐を敵に回すとロクなことがない。あの人の強さは異常だからね。1人で3メートルぐらいあるヒグマ秒殺だったよ。鬼と呼ばれるだけあるよね」
ニールは危なかったぁと笑顔で言う。
「まぁ、それは置いといて……。イアンの腰にあったベリトルはどこ?」
その言葉に心臓が大きく跳ねた。ニールにばれるのはまずい気がする。イアンもまた同じことを思っていたようで黙ったままだ。
「あ、そっか、イアンの声は僕には聞こえないんだよね。僕ったら、うっかりしてたよ。はいこれ。この木の枝で地面に文字を彫るといいよ。ほら、遠慮しないで」
優しそうな声の裏で何を考えているのか全く分からない。ベリトルのためにも言ってはダメだ。僕らが断固として動かないのを見て、ニールは困ったように頬を掻いた。
「あれれ。僕の質問がわからなかったのかな?」
突然ニールが動いたと思った瞬間、僕の首にはいつ抜いたかもわからないニールの剣が押し当てられていた。冷たい金属の刃が毛の更に下にある皮膚にしっかりと触れている。僕が少しでも動けば切れてしまうだろう。
「僕は宝剣ベリトルがどこにあるのか訊いてるんだけど。答えないとどうなるかぐらいイアンには分かるよね? もし君達が奇跡的に僕の手を逃れたとしても、君達の位置は完璧に把握できる。この翡翠色のブレスレットは持ち主の求める幻属の場所を示す。つまり、このペガサス君に反応して僕を導いてくれるんだ。よくできてるでしょ? 大戦中の技術ってほんとすごいよね。殺したいって気持ちが痛いほど伝わってくるよ」
ベリトルの予想が的中していた。何度も僕らの居場所が分かったのもそのブレスレットのおかげと考えていいだろう。
笑顔で言うニールだが、殺そうと思えば平気で僕を殺すだろう。肌を刺すような殺気に、嫌でも体が震えだす。イアンとニールが見合って数秒、イアンが悔しそうに文字を彫った。
「ベリトルは埋めた。場所は忘れた」
さすがイアンだ。これを言われればニールも何も言えないに違いない。だってイアンが忘れたと言っている以上何を聞きだそうとしても僕らは忘れたと言えばいいのだ。
ニールはその文字を読んで、またにっこりと笑ってから押しつける剣に力を込めてきた。
「じゃあ、君が羅剛神の居場所を引き継いだはずだよ。羅剛神はどこ?」
ベリトルについてそこまで知ってるのか。それに、ニールの目的はベリトルの予想通り羅剛神だ。麒麟の封印をもしニールが解いてしまったら、また大戦が勃発しかねない。そうなってしまえば人間側も幻属側もまたたくさんの命を失うことになってしまう。何がなんでも場所をバラすわけにはいかないと理解していても、いつ首を切られてもおかしくない今自然と鼓動が速くなる。体が熱くて変な汗でも出てきそうだ。
「そんなもの知らない。ベリトルが埋めてくれと言ったから埋めた」
イアンが顔色を変えずに返事を書くのをニールは笑顔で見つめている。言ってはダメだと言いたいけれど、僕が捕らわれている限りイアンは言わざるを得ない。僕が少し後ずさろうとした時、剣が肉に食い込むほど強く押し当てられた。
「ペガサス君、次動いたらもう片方の剣で右の翼斬り落とすよ?」




