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第1章 宝剣ベリトル2

 ペガサス達の姿が見えなくなると、イアンは鞍についている取っ手に手を掛けて背中から降りた。乗っていても構わないのだが、イアンは必要以上に僕の背中に乗ろうとしない。鞍はズレてくるとイアンが丁寧に直してくれた。鞍のつけ方、扱いは動物の馬と変わらないが、違うと言えばイアンは手綱を使わないということだ。本来馬に意思を伝える役目があるけれど、僕らは話せるから特に必要ない。そのおかげでイアンが僕を降りてから手綱が目の前でブラブラするなんてことは一度も無かった。


 特に変わらない森の中、隣を歩いていたイアンが突然指をさして声を上げた。その先にはきらりと光る何やら細長いものが落ちていた。


「イアン、あれって人間が使う武器だよね」


「あれは剣って言うんだよ。両方に刃がついている武器で、突き刺すのに向いてるんだ。刀っていうのもあるけど、あれは一方にしか刃がついてなくて切るのに向いてるんだよ」


と、イアンが解説してくれた。人間の武器のも色々あるらしい。


「普通は鞘に入ってるもんなんだけど、なんでそのまま落ちてるんだろ」


僕らはただ興味に突き動かされて剣に近づいた。その剣は細長くて、柄頭に赤い石の様なものがはめ込まれていた。剣は陽の光を反射していて眩しく、近づいて覗きこむと僕の顔が映った。イアンはそっと剣を拾い上げると、重いと言いながら楽しそうに眺めた。


「お前達の様なやつがこの宝剣ベリトルを拾うとはな。誇るがいい。本来触れることも許されない身分だが、まぁ今回は大目に見てやろう。感謝するんだな」


突然剣から声が聞こえたが、僕らは驚くというよりもむしろ目を細めて顔を見合わせた。何を言うでもなくイアンはポイッと剣を後方に投げ捨てる。


「カミー、さっそく明日の予定だけどさ」


「あ、そうだね。明日はどこに行こうか」


二人で剣を放置して去ろうとすると、


「ちょっと待て! 冗談だから! さっきの冗談だから真面目に話しするから待って! 待ってください! ごめんなさい許してくださいお待ちください神様仏様」


と、必死な声が聞こえてきた。どうやらこの剣、上から目線はただのキャラ作りらしい。僕らはもう一度顔を見合わせてから、渋々上から目線の剣の元へ戻った。


「私が自分から勇気を振り絞って話しかけたというのに、本気で置いていこうとするとはどういうことだ! 置いて行かれると思ったぞ! また独りぼっちかと思ったぞ私は!」


剣が今にも泣き出しそうな雰囲気で僕らを必死で責めるのを聞いて、イアンが僕に言った。


「だって、拾った瞬間から上から目線で話されてもねぇ」


「ねぇ?」


と、剣に目線を戻す。


「だって、私誰かに拾われたの久しぶりだったんだもん。ずっと寂しかったからテンション上がっちゃったんだもん」


そこまで言ってから、剣は咳払いした。


「とにかく、戻ってきてくれてありがとう。私の名前はベリトル。二人の名前は?」


あまりにも見ていてかわいそうなので、話だけは聞いてやろうと僕らは仕方なく腰を下ろした。きっとこの剣も幻属の一つだろう。そうじゃなきゃ道具が話したりしないもの。


「僕は人間のイアン。こっちはペガサスのカラミーユ。僕はカミーって呼んでるんだ」


と、イアンが僕を紹介してくれた。ベリトルは動かないし、どこで見聞きしているのかは分からないが話は通じており、よろしくと挨拶を返してくれた。


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