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カッパ・イート・マン ~EAT AND KILL~  作者: 藤宮きな


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14/14

第14回 「彼らが向かう先」

工場跡地へ戻ったカッパ・イート・マンとハナを迎えたのは、耳をつんざくような爆音だった。


荒々しいメタルが鉄骨を揺らしている。

発信源はマスミの持つラジカセ。

彼は遠くからブラッディを視察、萩原に指示を送っている。

萩原はそれに合わせ刀を振る。


「あ!ちょうどよかった!僕が指示を出します!まずは……!あ、えっと、そういえば!お名前はー!」


「カッピーだよ!私はハナ!」

「おい」


「カッピーさん!ハナさん!僕は河本マスミと言います!」


「マスミんね!」


「こっちは…」


ハナの視線が萩原に向いた。


「ヤクザのおじさん!右!危ない!」


萩原はハナの指示により飛んでくるブラッディの拳に気づく。


ブォン!!


ガッ!!


間一髪、刀でそれを受け止めた。厚い脂肪と筋肉により刀はほんの少ししか入り込まない。


「誰が…ヤクザだバカ……ッ野郎!」 ブンッ!!


萩原が刀を上空へ薙ぎ払い、ブラッディは斬られた拳から血を撒き散らしながら後退した。


「はぁ…はぁ…くそったれが」


萩原は息を切らして前を睨む。向かいからは、負傷した箇所を諸共せず疲弊を知らない巨体が迫ってきている。


「チッ…」



萩原に突進するブラッディに、横から飛び出してきたカッパ・イート・マンが蹴りを入れた。



ドゴォン!!


ブラッディが壁に叩きつけられる。

あの図体が軽い質量に見えてしまうほどの勢い。

コンクリートが砕け、亀裂が広がった。


「おいおい…俺結構頑張ってたんだな」


萩原は呆然と壁を見つめた。


「「ぐっしょぶ!」」






砂埃が舞い、あたりに立ち込める。

奥でシルエットが大きく揺れた。

ブラッディは再び立ち上がり斧を握りなおしている。

しかし先ほどの蹴りが効いたのか、少しふらつきがあるようにも見える。


武器を握り直す、萩原とカッパ・イート・マン。


煙を裂き、斧を振りかぶったブラッディが2人に突進してきた。


「避けて!!」


マスミの合図により左右に跳躍するカッパ・イート・マンと萩原。


ドォン!!


ブラッディの振るう斧が床に叩きつけられた。

地面に深く突き刺さったのか、ブラッディは重心を後ろに運び引き抜こうとしている。

カッパ・イート・マンは空中で体をしならせ、ブラッディの頭へ手を付くとそのまま背後へ着地。勢いに乗せ、背部を斬撃した。


ズバッッッ!!!


ブシュゥゥゥゥゥゥ…!!



噴き出す血を顔面で受けるカッパ・イート・マン。

顔についた赤黒い血を舌に運んだ。


「……こいつは…」


バッ!!


ブラッディが反応しカッパ・イート・マンの方に振り返る。

突き刺さった斧を引き抜こうとしていた手が片方離れた。


「萩原さん!奴の関節を!」


「あいよ!」


斧へ残った方の腕、その肘関節めがけて萩原が刀を斬り込む。

生身の肉体で受けるブラッディ。

萩原の刀ではやはり、切断しきることは不可能だった。


「くそっ…たれが」


ブラッディは斧から手を離し、腕を振り上げ突き刺された刀ごと勢いよく萩原に振り下ろす。




ザシュッ!!!!



萩原の右腕が切断され地面に落ちた。




「がッ……あああああああああああああっ!!」


血が勢いよく噴き出る。


「萩原さん!!!!」


マスミが萩原に駆け寄った。



「くっそ…ちくしょう…」


「は…萩原さん!血が!ごめんなさい、僕が…!」


「バカ野郎、てめえのせいじゃねえ」


マスミは自身の上着を使って急ぎ止血した。


「俺のことはいい!…引っ込んでろ坊主」


「でも!!」



2人の元へゆっくりと足を進めるブラッディ。

巨大な影が2人を覆った。






「おい」


ブラッディは声のする方へ振り返った。


「赤髪に言われなかったか?自分(テメェ)ご自慢の武器は手放さず持ってろってなァ」


そこには、先ほどまで自身が手にしていた巨大な斧を持つカッパ・イート・マンがいた。



今まで感じたことのない恐怖——。

奴がこれまでに捕食してきた全てのカッパたちが味わった屈辱が今、全身に降りかかる。


——逃げなくては。


彼がそこまで考えを巡らせた頃にはもう、鋭く光った斧の刃が頭上1センチ先まで来ていた。





——ザザザザザザザザザザザンッッッ!!!



ズドッ




カッパ・イート・マンは足元まで斧を振り下ろし、ブラッディの肉体を両断した。

斧が地面に突き刺さる衝撃で、今や二つに分かれた巨大な肉塊はゆっくりと左右に倒れ、断面を上に向けて横たわった。



「お…終わった…」


マスミが安堵のため息をつく。


「カッピー!」


ハナはカッパ・イート・マンに駆け寄った。


「こいつぁ、結局…」


萩原がカッパ・イート・マンに視線を向ける。


「ああ、カッパどもの血も混じってたが、あれぁ人間の血だな」


カッパ・イート・マンは口に残ったブラッディの血を、舌で転がしながら言った。


「きっとそうだよ。赤髪のカッパは、あいつらの血を人間に取り込む実験してた。私も、実験に使われた…」


マスミと萩原がハナの顔を見上げる。


「この人も元は人間で……赤髪は人間の言葉を話すし、私たちを襲ってきたカッパにも、理性はあるのかな?私たちみたいに考えたり、遊んだりするのかな…私、もう、わかんない」


ハナは下を向き、涙を流した。


「うるせえぞクソ女…………………」


しばらくの沈黙の後、カッパ・イート・マンが再び口を開く。


「殺(や)らなきゃ、殺(や)られるだけだろうが」












「僕たちはひとまず、近くの避難シェルターをあたってみようと思います。あそこなら医療センターも機能していると聞きます。まずは、この人の体を治さないと」


マスミは肩に萩原の腕を回し、支えながら立っている。


「うん、ありがとうマスミん。それからヤクザのおじさんも!気をつけてね」


「誰がヤ………ッ痛(て)ぇ!」


「あ、危ないですよ。暴れないでください」


「おい機械頭、てめえの力には何度も助けられた。人類の味方してくれてるうちは強力だが、同時に危険でもある。…隣の嬢ちゃん傷つけんじゃねえぞ」


「……」


「短い間でしたが、ありがとうございました。ハナさん、カッピーさん、どうかお元気で」



萩原の歩幅に合わせながら2人は歩いて行った。夕日に照らされ小さくなっていく背中に、ハナは大きく手を振った。








工場跡地、奥の扉から出た先、断崖絶壁。そこにはやはり、広い海が広がっている。

赤髪のカッパ、ルーシーは先の交戦で特殊なオーラと共に別のどこかへ消えていった。




「待て、どこへ行く?」


ハナたちに声がかかる。声がした方へ目を向けるとそこには全身に機械を纏った少女が立っていた。カッパ・イート・マン暴走時、彼を鎮めマスミたちを助けた少女だ。


「アァ?誰だテメェ、関係ねえだろ」


少女の右肩に刻印された「5」のマークが目に入る。

ハナの頭の中で、カッパ・イート・マンの後頭部にある「3」の刻印と重なった。


「あ、あなたは一体…?」






「私は、オオカミオトコ・ギア・レディ。こいつと同じ、イートマンシリーズ…その第5号機だ」

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