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英雄とドラゴン  作者: ヒトミ
出会い
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出会い

この作品は創作です。実在の人物や、団体、言葉の意味などとは関係ありません。


行間修正、誤字修正しました。内容に変更はありません。

「おお、勇者よ、良くぞ来てくれた。歓迎するぞ」

「来たくて来たんじゃねぇけどな」


この領主。無理やり連れて来た癖に、何言ってんだ?

よく見ろ、騎士どもに捕まってるだろぉが。

それに、俺は勇者じゃねぇ。ただの探索者だ。


「なにか言ったかね?」


おい、処刑しようとするんじゃねぇよ。


「いえ、お目にかかれて光栄でございます、エンハンブレ伯爵。して、どのようなご要件でございましょう」


殺されるのはごめんだね。大人しく言うこと聞いとくか。


「お主に頼みがある。この地を襲うドラゴンを生け捕りにして貰いたい」


ドラゴンが人の領域を襲う?

そんなことするかね。

それに、討伐ではなく生け捕りとは。


「ははっ! 見事捕らえてきてみせましょう」


厄介事の匂いしかしねぇな。

向かったフリしてバックレるか?


「我が領地が誇る騎士団も付けてやろう。ありがたく思え」


ちっ、クソが。余計なのつけやがって。



それから二日後。


俺は遠巻きに付いてくる騎士団を、振り落とす勢いで平野をかけていた。


迷子にでもなってな。


「ラルジャン殿、お待ちください!」


騎士団長か?よく付いてこれるな。多少見直したぜ。


「街を襲うドラゴンがいるんだろ! 迅速な行動が重要じゃねぇのか?!」


街の様子を見た限り、誰も不安気な様子じゃ無かったけどなぁ!


「それはそうですが、貴方の速さに他の者が付いて来れません!」


「それは残念だ。帝国の騎士は軟弱だな!」


獣のように鋭い金眼で威嚇する。

侮辱されたのは初めてなのか、固まった騎士団長を放置して、森の中に辿りついた。



森は平野の比じゃないくらい、魔物がでる。用心するに越したことはない。


首にかかってる魔石に魔力を補充する。後はイメージするだけでいい。


身体強化!


前回かけた効果が切れる前に、上書きされたのを感じる。


「おっし、やるか!」


木々の隙間から、狼型の魔獣が多数。

大剣を振り上げ、振り落とす。

ザンッーー!

一気に半数片付けた。

残りが襲ってくる。

俺は樹を伝って、空高く飛び上がり、上空から切りつけた!


銀髪に飛んだ返り血を拭う。


「俺はここでなぁにやってんのかねぇ」


褐色の肌にあたる風が冷たい。



領主がドラゴンを求める理由がイマイチわからん。

昔、近くに住んでた爺さんが言ってたんだよな……。


ドラゴンは自然の力を調整する存在で、手だししなければ、襲って来ることは無いってな。


要するに、あの領主はドラゴンになにかやったか、これからやるつもりってこった。


そんなもんの片棒担ぎたくねぇよなぁ。


やっぱ、バックレるか?そしたら、帝国では暮らせなくなるな……。

どぉすっかな。


そんなこんな考えてると、開けた所に出た。

大きな湖がある。

そこに、女……??!


湖で、緑髪の絶世の美女が水浴びをしていた。

予想外の出来事に頭が混乱する。


「だれかや?」


直接脳に響くように澄んだ声。


「おっと、すまない」


目をそらす。


「覗き見するとは悪い男じゃな」


笑みを含んだ声色。からかってるのか?

だが、不思議と腹は立たない。


「こんな森の奥深くに人が居るとは思わなかったんだ。申し訳ない」


「よいよい。わらわは今機嫌がよいからな」


「そうか。すまないが服を着てくれないか? 目のやり場に困る」


「ウブじゃのぅ。ほれ、もう大丈夫じゃぞ」


「ありがとう」


彼女は緑の目を細めて笑っている。白い絹の服を身に纏っていた。



「それで……、お前はなんでこんな所に居るんだ。森に住んでんのか?」


彼女はキョトンとして、首をかしげた。


「はて、住んでるというのじゃろうか、わらわの住処(すみか)は大空じゃぞ」


そんな、なにを当たり前な事をというような声色で、重要な言葉を発する。


「お前、人間じゃないのか。魔鳥(まちょう)か、それとも、天神族(てんじんぞく)か」


空の領域を支配してる種族を挙げると、彼女は(しか)めっ面になった。


「あんな者どもと同じにするでない。わらわはミストラル! 原初の生物、風竜(ふうりゅう)なのじゃぞ!」



目が半眼になる。


「ミストラル、お前か。領主に追われてるドラゴンは」


「領主とな?」


疑問符を飛ばすな。


「知らないのか?お前は人の領域を襲ってるってぇ名目で、追われてるぞ」


ミストラルはハッと表情を変えた。


「ああ! あのしつこい者どもかや! 追い払っても追い払っても、ついて来おって。どういうつもりじゃ!」


言葉の端々からうんざりしているのが伝わってくる。


「理由はわからねぇのか? なにか変わったこととか」


ミストラルは考え込む。しばらく考えて、結論が出たようだ。


「一度、お主と同じように、水浴びしてるとこを人族に見られた事があるくらいじゃな」


その後追われる様になったらしい。


あの領主、ミストラルに惚れたか?


女好きという噂があるし、あながち間違いねぇだろぉな。


俺ですら一瞬、思考が止まるほどの美女だからな。

領主の前に連れてくのは可哀想だよなぁ。


「この森に(とど)まってたら、いつか本気で捉えられるぞ。どうする?」


「もうここに居る必要はないのじゃ。違う地に向かえばよい」


ミストラルはあっけらかんと言い放つ。


「それなら、俺も連れてってくれねぇか?」


「なぜじゃ?」


しょうがねぇ。


「お前を連れて行かねぇと、俺の首が飛ぶからさ」


連れて行けねぇなら、帝国からおさらばするしかねぇってこった。


幸いな事に、俺に身内はいねぇし。行方をくらましても、誰も損しねぇな。


「そうじゃのぅ、それなら、わらわの背に乗るがよい。一緒にどこへでも行こうではないか!」


ミストラルは竜の姿に変化した。


その姿は強大で、俺一人では勝ち目は無かったのかもしれねぇ。


「竜の背に乗るのは流石に初めてだぜ」



「ところで、お主の名はなんじゃ?」


「俺か? 俺の名は、ラルジャン。S級探索者のラルジャンだ。これからよろしくな」


俺を乗せたミストラルは、帝国に背を向けて、空高く舞い上がった。

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