表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄とドラゴン  作者: ヒトミ
海上都市ラルーナ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/60

海上都市ラルーナ①

大陸から離れた南方の海。

海上を遊泳(ゆうえい)している島がある。

どういう原理で動いているのかは定かではない。

そこは、海人族(かいじんぞく)が統治している都市である。

(うた)い文句は、療養と観光の都市だ。



魔石で温泉を造り、滋養(じよう)にいいと宣伝し、大成功を(おさ)めた都市だそうじゃ。


都市の周りは海の泡で(おお)われていて、普通の人間が見つけるのは至難の技だのぅ。


必然、この都市に来られるのは、魔石技師(ませきぎし)魔人族(まじんぞく)、大貴族ぐらいのものであろう!


この都市での争いは御法度(ごはっと)じゃぞ。


これ全てミストラルの(げん)だ。



「こんな都市があるなんざ、知らなかったぞ」


宿屋の一室で入都(にゅうと)のさいに配られた本を眺めながら、物思いにふける。


本の表紙には


【海上都市ラルーナへようこそ】


と書かれている。都市の説明書らしい。


パラパラとめくりながら、事の始まりを振り返る。


あれは、帝国から飛び立ってすぐの事だった。





上空は思ってた以上に空気が薄くて、さみぃな。


「おい、ミストラル! 寒さとかなんとかできねぇのか!?」


そんな事おかまいなく飛んでいる風竜(ふうりゅう)にイラつく。乗せて貰ってる身分でなんだがな。こういう性分なのはなかなか治らない。


「人は軟弱じゃのぉ。これでよいかや?」


途端に呼吸が楽になり、寒さも収まった。

ミストラルが風の膜を張ったらしい。


「おぅ、すまんな。人はそんなに丈夫じゃねぇんだ」


「まあよい。ところで、お主は行きたい所とかあるのかの?」


「帝国人に見つからねぇとこなら何処でもいいぞ」


「それなら、わらわは海上都市に行ってみたいのぉ」


「海上都市ぃー? どこだそこは」


そんな都市、聞いた事ねぇぞ?


「この大陸より、南の海を遊泳してる都市らしいのじゃ」


「誰から聞いたんだ?」


「そりゃ、お主。わらわの同族に決まっておろう?」


ああ、こいつが居るなら、そりゃ、他の竜も存在するよなぁ。なぜ考えつかなかったのか。


大陸の大森林上空を抜けると、広大な水の世界が広がっていた。


こちとら、大陸を出たことなどない訳で。


当然こんな一面水の光景を見たのは初めてだ!


「こりゃあすごいなぁ! 世界はまだまだ知らない事だらけだぜ!」


気分も高揚する。


しばらく景色を堪能してると、透明な膜で覆われた都市が見えた。


「ミストラル、あそこか?」


「そうじゃな。あそこだろうの」


都市の門から見えない位置に着地し、ミストラルは、人の姿に変化(へんげ)する。


そうだ、こいつは絶世の美女だった。このまま門まで行くと騒ぎになるのが目に見えてんぞ。


「おい、なんか顔隠せるもんとかねぇのか?」


ミストラルは早く行きたそうにソワソワしながらこちらを見る。しっかし、人間離れしてるよなぁ……。


「なんじゃ、ジロジロと。うっとおしい」


竜族はみんなこんな感じなのか?


「これでよいかや?」


いい加減ジッと見られるのが嫌になったのか、ミストラルはお面を被った。なぜ、お面? それも絶妙に恐怖を与えてくる面だ。これはなんだ、認識阻害術(にんしきそがいじゅつ)か?


「これはのぅ。森人族(しんじんぞく)から譲り受けた、鬼女(きじょ)の面よ! とくとみやれ? 恐ろしゅうて、顔を背けたくなるであろ?」


なにを得意げになってるのか。肩の力が抜けちまったぜ。


「そんな種族も居るんだなぁ。やっぱり世界は広いぜ」


「お主と同じ人族の一種じゃぞ? 気にならんのかや?」


ミストラルが下から覗き込んでくる。その面のまま顔近づけんな。微妙に恐ぇえ。


他人(ひと)に教わるより、俺自身の目で確認してぇ」


「お主はそういう性分なのじゃな。嫌いじゃないのぅ」


そうこうしながら門に近づく。

門の入口には、入都するための列ができていた。



門番の前に着いた時、ミストラルが騒ぎ初めた。


「そなた!何を隠し持っておる!!よもや、飛竜の卵ではなかろうな!?」


斜め前に居る商人の団体を睨みつけている。周囲の人々もざわついた。


「飛竜……? なにを言っているのだね? ごふじ……ん……」


お面姿の女を確認したせいか、商人の語尾が消えてなくなる。気持ちは分かるぜ。あんな恐い面を着けてる人間なんて、そうそういねぇもんなぁ。


「しらばっくれても無駄じゃ! 気配を感じるのじゃから! そんな物を持って来て、何を企んでおるのじゃ!? はよ、申せ!」


どっから出したその扇子! なんか重そうだな、鉄扇か? 武器は不味いだろ!


門番の目の前での騒ぎだ。すぐに止められた。


「ちょっと、ここで騒ぎは困ります。連行しますよ?」


「じゃが! そやつが」


止められても興奮は冷めないらしい。


「おい、落ち着け。こういうのは証拠が無いとどうにもなんねぇ」


「じゃが……」


やっと少し冷静になったのか、ミストラルはうなだれる。


「ご婦人がこう(おっしゃ)られておりますので、申し訳ございませんが、お荷物確認させていただきます」


門番も看過(かんか)できなかったのか、検査を始めた。


「どうぞどうぞ。飛竜の卵なんて、そんな危険な物持ってる訳がありません」


様子を見るに、絹織物の商人だろうなぁ。


沢山の色鮮やかな織物が取り出される。


怪しいものは無さそうだ。


……ん?商人の首飾りが嫌に目を引く。あれは……。少女が祈りを捧げている像だなぁ。天神教徒(てんじんきょうと)か。まあ、俺には関係ねぇな。


結局、門番も無実だと判断したのか、商人は無事に入都して行った。


商人の次は俺たちの番だ。


探索者証(たんさくしゃしょう)を取り出す。ミストラルはどうするのだろうと見ていると、当たり前のように探索者証を出していた。お前、探索者協会に登録してんのかよ!


「ラルジャン殿と、ミストラル婦人ですね。海上都市ラルーナへようこそ。何泊のご予定でしょうか?」


門番は、俺たちの探索者証を見て一瞬静止した後、言葉を発した。


「考えてなかったなぁ。どうする?」


「わらわは、ラルーナで夜景をみたいのじゃ!それも満月の日の夜景をじゃぞ」


満月か、後何日後だ?とりあえず

「一ヶ月間泊まりてぇ」


「かしこまりました。一ヶ月間の入都ですね。お二人で大金貨十六枚です」


「はあ!?」


たけぇよ……。二ヶ月分の金が吹き飛んだぞ。


「これは、宿屋での食事代込みの宿泊費です。街の店舗でのお買い物では、別途お支払いいただきますので、ご了承ください」


食事代込みなら、妥当なの……か? いや! 普通の宿屋は一ヶ月泊まっても、二人で大金貨三枚もあれば事足りるぞ。


「都市内では、先程のような騒ぎは、起こされないようお願い申し上げます」

念を押されちまった。


案内人について行きながら、未だに文句を続けるミストラル。


「知らんのか? 飛竜は、卵を盗まれると、群れで地の果てまで追ってくるのじゃぞ?」


そりゃまぁ、あの魔物は家族愛が強いからなぁ。賢いしな。


「それは知ってるぜ。試した事があるからなぁ! あん時はやばかった。命の危機を感じたのは久々だったぞ」


「なにやってるのじゃ、お主は……」


呆れられちまったか?

繁華街の坂道を登り、しばらく行った先には立派な宿が建っていた。



そんなこんなで、今は宿屋の部屋にいる。

外観を見ただけで分かる高級さ加減。

三階建てぐらいか?

ぜってぇ、貴族とか泊まってるぞ。

ミストラルは、さっそく宿屋内の温泉に繰り出して行ったので、部屋には、俺一人だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ