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ステータス

現実においても、危険が迫っているというのに避難行動を取らない者は一定数、存在する。


一方、アリシアはロボットなので、人間には<正常性バイアス>と呼ばれる心理的な働きがあることを知っていて、かつ、それを基に行動する設定が行われている。


『避難しない奴が犠牲になるのは仕方ない』


とは言わない。


ただ人間を守るために行動する。自身にできる最大限を発揮する。


もっとも、<加害者>についても、可能な限りは守ろうとするのだが。何しろ、VR内で<戦闘モード>は起動できないがゆえに。


それでも、アトラクション内での主人公の挙動は、要人警護仕様のアリシアシリーズの戦闘モードを参考にしているので、レベルが十分ではない今でも、人間には到底不可能な機動ができる。


また、ラウルには勝利しているので、その分、レベルも上がっていた。


だからこの時点で可能な最大稼動で挑む。


が、


「!?」


ラウルに迫り、彼の顔を掴んで地面に叩きつけようとした彼女は、別の気配を察知して、横っ飛びした。


そのアリシアの体を、何かが掠める。


「ゴーディン!?」


そう、彼女の体を両断する勢いで得物を振り下ろしたのは、ゴーディンだった。


「再戦だぁ!」


空振りして地面に突き刺さった戦斧を引き抜きながら、ゴーディンが吠える。


ラウルがでてきたのだからゴーディンが出てくるのも何も不思議ではなかったものの、問題はそこではない。明らかに昨夜のゴーディンとは動きが違っているのだ。


「どういうことだ!?」


VRアトラクションの外では、宿角(すくすみ)が声を上げる。


「ラウルとゴーディンのステータスがバグってます! HPはカンスト、他のステータスも軒並み通常のプレイでは有り得ない数値です!」


オペレーターを務めていた女性職員がステータス画面を確認し、応えた。


「くそっ! これも不正な挙動の影響か!? アリシアくん! 気を付けてくれ!」


「はい!」


『気を付けてくれ』と言われてもどう気を付ければいいのかは疑問だったが、アリシアはただ『はい』と応えた。具体的な指示ができる段階でないことは彼女にも分かるからだ。


正直、この時点で戦う相手としては有り得ないものだったが、それを嘆いても事態は好転しない。


しかしその時、


「はあっ!!」


ゴーディンに切りかかる影。


「ナニーニ!?」


と同時に、


「スティール!」


詠唱と共に、ゴーディンの手から戦斧が消える。


「コデット!?」


ナニーニとコデットだった。二人がゴーディンに挑みかかったのだ。


すると、さすがに巨人のごとき大男が戦斧を振り回し、それに剣を構えた少女が切りかかったことで周囲の人間達も異常を察知。クモの子を散らすように逃げ去っていく。


『これなら……!』



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