ここでお別れ
こうしてジュゼ=ファートを崇拝する者達の村を脱出。予定よりもかなり遅れてアリシア達を乗せた馬車は次の街へと到着した。
本当なら夜明け前に到着しているはずがすっかり朝になってしまい、アリシア達よりも後に出た馬車の方が先に着いている始末だ。
なので、予定を狂わされた乗客達の中には御者に苦情を言っている者もいる。
が、今回の件については御者も被害者なので、それを言うのは酷だろう。結局、困った御者が乗客達と共に役人の下を訪れ、それがきっかけで、あの村はこの後、ジュゼ=ファートの狙い通りに軍によって蹂躙され、まんまとプロパガンダに利用されることになるのだが、正直、もうアリシア達にとっては<枝葉末節>に過ぎない話となっていく。
それどころじゃない状況になっていくからだ。
しかしアリシアにとっては、<ORE-TUEEE!本編>については、もう、これ以上進める必要はなかった。なにしろ、この街で、始まりの村の前に接触した<ハートマークの牛>に再会し、<例のイベント>へと進むことになるのだから。
そして、ナニーニとコデットとも、イベントが終わるまでは再会できない。
アリシアはアトラクションをクリアするのが目的ではないため。実質的にはここでお別れということだ。
それだけに、二人の関係が多少とはいえ改善されたことが、アリシアにとっては救いだったと言えるだろう。
アトラクションをクリアすれば、二人は共に幸せな人生を送ることになっている。そこまで見届けることができないのは残念ではあるものの、ゲームオーバーにならない限り無事なのは分かっているので、お別れする前に関係を改善できたのがよかったのである。
疲れ切って宿に着いた途端に寝てしまった二人に、
『幸せになってくださいね……』
声には出さずにそう告げて、アリシアは、<ハートマークの牛>が連れてこられた街外れの牛舎へと一人で向かった。
そこで、この時代の人間達には意味も価値も分からずにただ放置されていただけの<古代文明の名残である石碑>が、偶然にもハートマークの牛の体の模様が<古代魔術>を起動させるキーとなってしまい、それに巻き込まれた主人公が過去へと飛ばされるというのがこのイベントの概要である。
これをクリアすると、エンディングの直前でファリ=ファールが幼い頃に主人公と出逢っていたことを思い出し、いい雰囲気になるという<差分>が生じるのだった。
とは言え、もちろんアリシアはそれが見たくてやるわけじゃないので、ただ淡々と準備をしたのだけれど。




