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強い信念

コデットの<犯意>は、結局、環境によるものと大人への反発が原因と窺えた。ならば、自分が信頼に足る大人であることを示すのが最も確実であろう。


だからアリシアは、コデットに対してただ誠実であることを心掛けた。それと同時に、自分の方が何枚も上手であることを知ってもらうために、お金については決まったところに置き、彼女が持ち出したらわざと同じところに同じだけの額を置くようにした。


こうすることで、彼女に、自分が気付いていることを悟らせるのである。


ただしこの方法は、あくまでコデットの<犯意>を理解した上での、彼女のためだけの方法である。彼女のような非行少年少女すべてに同じ効果が期待できる訳ではない。


コデットには、


『自分の力だけで生きられるようになってやる!』


という強い信念が見えていた。


『施しは受けない』


とも思っているのが分かる。ただし、今現在はやはり子供なので、完全には自力で生きられるわけじゃないことを理解するだけの利発さもある。


だから食事をもらえるとなれば敢えて素直にもらい、しかし同時に、お金に関しては<自分の力>で奪い取ることを信条としているようだ。


それゆえに、敢えて分かっててお金を置かれていると、


『くそ……っ! 施しのつもりかよ……!』


顔を歪めた。


なにしろ、


『馬鹿な大人の隙をついて掠め盗る』


ことで、


『自分の力で得た』


という形になるのだから、分かってて用意されているのを持っていくのは彼女にとっては、


『可哀想な身の上に同情されて施しを受けている』


以外の何物でもなかった。


『バカにしやがって……!』


完全に自分が舐められていると感じた彼女は、アリシアが用意したお金には手を付けないようになった。


けれど、こうなると今度は、<スティール>を用いて他の大人達から盗むということに力を入れようとする。


が、これについては、もしバレれば絞首刑が待っている。


だからアリシアは、ナニーニとの稽古中に隙を見て抜け出した彼女が、通行人の財布を盗もうとしている背後に立ち、


「死にたいんですか?」


と尋ねた。


「っ!?」


まったく気付かないうちに背後を取られていたことにコデットは跳び上がらんばかりに驚いて、その場に座り込んでしまう。腰が抜けたのだ。


「お、お前…! なんで……っ!?」


尻を地面に着けたまま振り返って、コデットは訊いた。ナニーニとの稽古に夢中になっていたはずなのに。


けれどアリシアは、


「なんでもなにも、あなたが抜け出すにはあの時しかありませんからね。ナニーニには今、素振り千回をこなしてもらってます。その間に迎えに来たんですよ」


微笑みながら言ったのだった。



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