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鬱憤を溜めないように

コデットの思考パターンは、メイトギアをはじめとしたロボットが実用化され、日常的に人間の傍で運用されるようになった二十二世紀以降、ロボットを通じてAIが蓄積してきた非行少年少女らのそれを参考にして構成されている。


それまでにも児童心理や犯罪心理といった面での研究は行われていたものの、聞き取り調査による当事者らの証言だけでは、実は深いところまでは十分にリサーチできていないというのが現実だった。


なにしろ、人間は嘘を吐く。事実を事実として告げないことがある。また、嘘ではなくても<記憶違い>や個々人の解釈によって認識にズレが生じている事例が非常に多く、正確性に欠けていたというのもあった。


けれど、ロボットにはそれはない。目撃した事実は事実のままで記憶し、『このクソガキが!』と色眼鏡で見ることもなく、脳内で記憶が改竄されることもなく、ありのままのデータとして取り出すことができる。


これにより、非行少年少女らの実態がより明確に正確にデータとして得られるようにもなった。


するとやはり、おしなべて大人への信頼度の低さが、反社会性の醸成に深く関わっていることが数値で確認されるに至ったのである。


そのこと自体はかねてから言われてきたことではあるものの、実際に可視化されるようになったことが非常に大きい。


それらから得られたノウハウが、特にメイトギアに搭載されるAIを設計する際には活かされている。


こうして、親の目や耳や手や心配りが届かない部分をメイトギアが補うことで、未成年による非行事案は劇的に減ったのだった。


ただし、以前にも触れたとおり、だからといってメイトギアだけに育児を任せてしまうと、どれほど高性能であってもあくまでロボットでしかないメイトギアの下では<他人に対する共感性>が十分に育たず、凶悪事件を起こす傾向にあることも指摘されているのも事実。


ゆえにメイトギアはあくまで<人間のサポート>に徹し、人間は人間の手によって育てられるのが好ましいと結論付けられている。


とは言え、これ自体がまだまだ研究段階にある話なため、いずれまた新たな見解が出されることもあるだろう。




などという背景を基に、アリシアはまず、コデットからの信頼を得ることを優先した。


彼女を威力によって抑圧することは避けて。


そんなアリシアに対してナニーニは、


「アリシア様は甘すぎます! そんなだからあいつはつけあがるんですよ!」


と不満をぶちまけるが、そう言うナニーニ自身がまだ、<礼儀>や<自分の立場>をわきまえてない<子供>なので、これも蔑ろにしては今度はナニーニからの信頼が得られないので、彼女が鬱憤を溜めないように、へとへとになるまで稽古の相手をしたのだった。



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