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諦めろと言われて

<スティール>


それは、相手の持ち物を何でも瞬間移動で奪い取る魔法。ゲームやアトラクションによってはそれぞれいろいろな解釈がなされているようだが、<ORE-TUEEE!>内では<魔法の一種>として扱われている。


MP消費が少ないものの、習得には適性が大きく影響するという形だった。その代わり、適性さえあれば子供でも習得できるので、ストリートチルドレンにとっては半ば必須の魔法とされている。ちなみに主人公にはその適性がないので習得はしていない。


今回、盗賊の少女はアリシアの武器を奪うことで動揺を誘い、その隙に逃げようと思い立ったらしいが、そもそも剣は馬車に残してきたので使っていない。ゆえにスティールもできないということだ。


「くそっ!!」


いかにも<普通の村娘>的な恰好はしているものの明らかに粗野な顔付きと悪態で、あまり好ましい環境で育ってきていないことが分かるその少女は、倒れている仲間には構うことなく一目散に逃げ出した。


「……」


アリシアはそんな少女の後姿をしばらく見送った後、おもむろに走り出す。


一流短距離走選手のフォームそのままの美しい姿で。


だからほんの数秒で少女の横に並ぶ。


「げっ!?」


並ばれたことに気付いた少女はギョッとなり、まるでウサギのように横っ飛びして転進した。速度こそ人並みだが俊敏さが優れているようだ。


この調子で逃げれば普通の大人ならついていけずに振り切られるだろう。しかし相手は<主人公>。しかもその中身は<千堂アリシア>である。単なるスポーツアスリートではなく、<戦闘技術>を持つ彼女には、通じない。


再び一瞬で横に並ばれ、


「ひいっ!?」


少女は明らかに恐怖した。


『ななな、なんでなんで!? 私についてこれる大人なんていなかったのに……!』


と思うものの、それは少女が知る狭い世界での話。世の中には様々な人間がいるのだ。


<千堂アリシア>は人間ではないが。


少女は自身が持つ全力をもって右に左にと跳ね、なんとかアリシアを振り切ろうとするものの、振り切れない。


そしてアリシアは、涼しい顔で、


「そろそろ諦めませんか? あなたでは私は振り切れませんよ」


と声を掛ける。


すると少女は、


「うるせーっ!! 諦めろと言われて諦める盗賊がいるかーっ!!」


上がり始めた呼吸の中で、吠えた。他人に対する強い不信感が込められた言葉だと、アリシアには分かった。


が、その時、並んで走る二人を影が覆う。


瞬間、少女の体がガシッと掴まれた。と思うと、空へと舞い上がる。


「なっ!?」


少女は自分に何が起こったのか理解できず呆然となり、


「ワイバーン!?」


すでに数百メートル離れた馬車から一部始終を見ていたナニーニが声を上げたのだった。



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