ワイバーン
<ワイバーン>
<竜>と称されるこの世界に生息する大型動物で、程度の差こそあれすべての種が魔力を持ち、それによって普通の動物では有り得ない巨体ながら空を飛ぶ、生物ピラミッドの頂点に位置する生物の一種で、比較的小型かつ飛行能力に特化した竜のことである。
一般的に竜はほとんどが<六肢>で、そのうちの一対が翼として機能するものが多いが、ワイバーンは他の竜の<腕>に当たる一対が退化しており、外見上は巨大な翼を兼ねた前腕と脚の四肢に見えるのが特徴だった。
―――――という設定のモンスターだ。
習性は一口で言うとカラスに近く、雑食かつ凶暴。知能もカラス並みにはある。が、実はそれは竜の中ではかなり知能が低い部類になる。種類にもよるが、一部には人間さえ軽く凌ぐ知能を持つものもいるのが竜という種だ。
その中でもワイバーンは、ある意味、
<巨大なカラス>
的な動物として設定されている。
そして時折、人間の子供などを攫って食べるとも言われていた。
さらに、狩りに関してはハヤブサのような猛禽類に似て、空高くから獲物に狙いを付け急降下。しかも雲などに隠れて気付かれないように接近、気付いた時には自分のすぐ上にいるということさえあるという。
だからアリシアでさえ接近に気付かなかった。
しかし、気付けばもう何ということもない。
<疾き斬風!!>
圧縮された詠唱にて魔法を発動。空気の刃がワイバーンの翼を切り裂く。
実はワイバーンの翼は魔力を発生させてその巨体を宙に浮かせる器官でもあり、それを大きく切り裂かれると魔力が生み出せず空を飛べなくなるのだ。
「きゃああああっっ!!」
悲鳴が空気を叩く。
ワイバーンに捕えられた少女の悲鳴だった。高さはまだ十メートルほどではあったものの地面に向けてワイバーンごと真っ逆さまに落ちていく。
するとアリシアは地面を蹴り、走り幅跳びの選手のように空中を駆けた。
と、落下するワイバーンの足から少女を奪還。その体を抱えたままふわりと地面に降り立った。
一方、ワイバーンの方は、魔力によって体を浮かせることができなくなれば象にも等しい巨体が徒となり、ぐしゃりと地上に落ちて自分の体重によって潰れてしまった。
少々可哀想にも思えるものの、人間の子供を攫うワイバーンはその味を知っていると見做され見付け次第処分されることが法によって決まっていた。
アリシアもそれに倣っただけに過ぎない。
ちなみに、これもももちろんイベントの一環だった。ワイバーンに襲われることは知っていたものの、アリシアにとっても不意を突かれた形なのだった。




