表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/107

闇焦がす獅子焔

アリシアの斬撃は、普通の動物が相手であれば必殺の一撃だっただろう。けれど魔獣の鱗は固く、しかも幾重にも重なっていることでクッションの役目もするらしく、打撃としても十分な威力を発揮しなかったらしい。


なるほど、普通の人間ではどうすることもできないだろう。矢の雨を振らせたとしても、果たしてどこまで効果があったのか……


しかも、魔獣は自身の尻尾で体を支えて、丸太のような両足を同時に蹴り出した。ごお!という恐ろしい気配と共に繰り出されたそれを受けて、アリシアの体は小石のように吹っ飛ぶ。


その攻防を遠巻きに見ていた村人達の間にも、悲壮感が広がっていくのが分かる。


けれど、当のアリシアの表情に焦りの色はない。


「なるほど、こういう感じですか……」


小さな呟きは誰にも届かなかっただろうが、彼女の表情に気付いた者がいた。リティーレだ。


恐ろしい魔獣を前にしても、その途轍もない攻撃を受けても、まるで平然としているアリシアに、リティーレは不思議な安堵を覚えた。


「もうダメだ! 逃げよう……!」


諦めを口にする大人に向かって、少女は、


「大丈夫…! お姉ちゃんは勝つよ……!」


と応えた。


それが聞こえたわけではないだろうが、アリシアが剣を片手に持ち、もう片方の手をぐっと前に差し出した。


同時に、ピリリと空気が緊張する。目には見えない<流れ>が渦を巻きながらアリシアに集まっていくのが、見る者が見れば分かっただろう。


瞬間、その<流れ>はギュウッと圧縮され、たわむ。


「ゲエエアアアアアーッッ!!」


手をかざしたまま動かないアリシアに、魔獣が巨大な口を開けて喰らい付こうとする。


けれどアリシアは慌てることなく、たわめた<力>に点火した。




闇焦がす獅子焔(ラーダャ=イーヴァハ)!!」




発した気勢がさらに力を増幅させ、それは、巨大な<火球>となり、魔獣を包んだ。


「熱っ!?」


何十メートルも離れているというのに、村人達が声を上げる。まるで小さな太陽のようなその火球の熱量がそれだけのものだったということだ。


「ゲエエッッ!?」


魔獣が一瞬、声を上げるものの、それはもはや断末魔でしかなかった。


火球から逃れようともがくが、その間にも体が焼け崩れていく。


逃れる術はない。


そうして、魔獣は跡形もなく燃え尽きたのだった。




で、冒頭のシーンへと繋がるということである。


村人達の熱烈な歓迎を受けて、アリシアは<村長>の自宅へと招かれた。小さいとはいえ迎賓館も兼ねているそこでテーブルに着いた彼女の前に、あっという間に無数の料理が並べられる。


『ははは……私、食べられないんですけどね……』



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ