出迎え
それは余談なのでまあさて置くとして、アリシアは出迎えてくれた少女と共に歩く。
「私、リティーレ。お姉ちゃんは?」
<リティーレ>と名乗った少女が笑顔で問い掛けてくる。
けれどその時、アリシアの体にピリッと電流のようなものが奔った。
<気配を察した>演出だ。
それが伝える方向に視線を向けると、異様な影が、
「魔獣だ!」
誰かが声を上げる。
改めてリティーレに視線を向けると、少女は蒼褪めて固まっていた。恐怖のあまり動けないのだろう。
だから、村目掛けて猛然と迫ってくる、後ろ足で立ち、首の周りから生えた無数の刺を逆立てた、どこか<エリマキトカゲ>を思わせる魔獣の前に立ち塞がった。
「危ないぞ! あんた!!」
「逃げるんだ!!」
村人が口々に声を掛けてくるが、アリシアは、まだ足が竦んで動けずにいるリティーレの方に向き直り、
「大丈夫。見ててね」
と声を掛けた。
そのアリシアに、魔獣が飛び掛かる。
「グィイイエエエエエエッッ!!」
直立時の頭高二メートル強。推定体重約二百キロ。
野性の肉食獣として捉えれば、おそらく虎に匹敵するような強大な猛獣だろう。生身の人間では束になっても普通は勝てない。熟練した弓兵十数人を揃えて、離れたところから休まず矢を放ってようやく倒せるかどうかという感じだろうか。
高い攻撃力を擁した備えがされているようにはまったく見えないこの村では、およそ対処できるような存在ではないと思われる。
だからアリシアは、腰に下げた剣を抜き、構えた。
自分が迎え撃つ為に。
彼女の手にあるのは、女性どころか屈強な男性でも手に余りそうな大型の<バスタードソード>と呼ばれる両刃の直刀だった。それも、鍔に当たる部分が大きく張り出して<握り>になっている、本来ならそこを握って対象に向けて真っ直ぐ体ごと突進、刺突によって必殺のダメージを与えるものだというのが分かる造りの剣だ。
なのにアリシアは、それを、薙ぎ払うようにして魔獣へと叩きつけた。
ガンッ!という硬い手応え。切れ味自体はそれほど高くないであろうバスタードソードでも、言ってしまえば<鉄の棒>と同じである。この勢いで叩きつけられれば普通は虎でも怯む。人間ならもちろん斬り伏せられるだろうし、そうでなくても骨折は免れない。
なのに魔獣は、僅かに体をぐらつかせたものの踏みとどまり、逆に剣を掴んできた。
全身を覆う鱗がまるで鉄の鎧のように硬いのだ。
するとアリシアは、鍔の部分の取っ手を掴み、ぐい!と剣を回転させる。と、当然、刀身も回転し、魔獣もそれを掴んでいられずに手を離した。
直後、剣を引いたアリシアが独楽のように自身の体を回転させ、その遠心力を利用してさらに強力な一撃を叩きつけたのだった。




