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大丈夫……?

極大魔術<冥府の断罪(ア・ルスィ・オーネ)>は、空間断裂魔術の極致だった。


一度発動すれば防ぐ方法はないとされる、究極の破壊魔術。


実は<ラスボス>は、それを二回防いでみせるのだが、さすがにラウルはそこまでではなかった。


歪に膨れ上がったラウルそのものが、周囲の空間ごと削り取られ、消え失せる。


周囲の建物に融合を始めた<ラウルの一部>は残ったものの、さすがにそれだけでは何もできず、崩れ落ちていく。


「な…っ!?」


それを見たゴーディンが、一瞬、気を逸らすと、その隙をナニーニも見逃さなかった。


剣を真っ直ぐに突き出し、自身の力の全てを切っ先に込めてゴーディンの脇腹を貫いた。


「う…ぐ、お……おぉ!?」


だが、ゴーディンも、咄嗟に手を伸ばし、ナニーニの首を掴んだ。そして渾身の力を込めて、少女の細い首を折ろうとする。ゴーディンの手にかかれば、ナニーニの首など、なるほど一瞬で折ることができるだろう。


「……!!」


その手に込められた力を感じ、ナニーニも自身の死を直感した。


『申し訳ありません、アリシア様……! 私はここまでみたいです……!』


しかし、


「スティール!」


その詠唱の直後、ナニーニの視界にあったのは、自分を見詰めるコデットの顔だった。コデットがスティールでナニーニを奪い取り、救ったのである。


「最後まで油断すんな! バカヤロウ!!」


コデットの叱責に、


「ごめん……ありがとう……」


ナニーニがしおらしく応えたのだった。




ナニーニの一撃は、確実に致命傷であった。


「くそ…ったれ……」


呻きながら、ゴーディンの体が地面へと崩れ落ちる。血が、辺りに広がっていく。命が、流れ出していく。


その様子を、ナニーニが泣きそうな表情で見詰める。


するとコデットがまた、


「アリシアも言ってただろ。剣士になるってのはこういうことなんだよ。お前はその覚悟を決めたんだろ。顔を上げろ。お前の勝ちだ……!」


諭すように彼女に告げた。盗賊として人の生き死にを目撃してきたコデットは、そういう意味ではナニーニよりもずっと<先輩>であった。


「……うん……うん……」


自分の肩に置かれたコデットの手を掴み、ナニーニはそれに縋るようにして何度も頷く。


「……」


そんな二人の姿を、アリシアもまた、泣きそうな表情で見ていた。


人的被害がなかったことは良かったものの、ラウルとゴーディンを助けられなかったこと、ナニーニに人を殺めさせてしまったことが悲しくて……


そんなアリシアに掛けられる声。


「お姉さん、大丈夫……?」


彼女が視線を向けた先には、なんとも言えない穏やかな表情でアリシアを見詰める、幼いファリ=ファールがいたのだった。



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