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第2話 口喧嘩

 漆黒の将校帽子から背中へ向けて、滝のように流れ落ちる長い黒髪、

 むしろ女性(乳房)を際立たせた漆黒の将校制服、

 臀部(ケツ)と太ももを一分の隙間もなく包み込む漆黒のスーツスカート、


 編み目ではなく、やや薄めの黒のパンスト、

 そして地面に穴を開けるような漆黒のピンヒール。

 さらに手に持つは、漆黒の短鞭(たんべん)


 まさしく絵に描いたようなサディスティックな美人将校。

 俺の性癖はともかく、スパイとして生まれたなら、一度はこんな美人将校から拷問を味わってみたいシチュエーションだ。


 もっとも、トップスパイにとっちゃ、拷問を受けて”ハイしゃべります”じゃおもしろくない。


 気高く、横暴で、自分が絶対と信じてやまない、スパイなんぞゴキブリ以下しか見ていない美人将校からの拷問に耐えたのち、なすすべもなく膝をつかせ屈服させることが、スパイとしての何よりの誇りであり栄誉だ。


 ……重ねて言おう、決して俺の性癖ではない。二回言ったぞ。


「全く、いつまで寝ているのよ! 早く起きなさい! 


『ウニチャーム、スイート極薄々スリムタイプ。セクシー下着の貴女にピッタリ! 税抜き¥298』!


毎日毎日、同じ事何回言わせるのよ!」


 美人将校は、部屋の左隅に置いてあるベッドに歩み寄り、どこかで聞いたようなしゃべり方で俺を怒鳴りつける。

 せっかくだ。俺様も精一杯の抵抗をしてみる。


「夜中に


『ウニチャーム、スイート極薄々スリムタイプ。セクシー下着の貴女にピッタリ! 税抜き¥298』


をたたき起こして、ドア越しに愚痴を

”ネチネチネチネチ“

吐き出していたのはどこのどいつだ!」


 しかし、相手は将校より以前に女だ。

「あらぁ~そうだったかしら? っていうか~寂しいと思って話し相手になってあげたのに、何その言い草! 本当信じられない! 人の気遣いをありがたがらないなんて、やっぱり


『ウニチャーム、スイート極薄々スリムタイプ。セクシー下着の貴女にピッタリ! 税抜き¥298』


は、冷血非道なスパイね!」


 そう、口喧嘩(くちげんか)では男は女にはかなわない。無駄な抵抗だった。


 てか、しっかり今日の特売品を覚えているじゃねぇか……。

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