残り香
どれ位経ったのだろう。もう、外から差し込むのは月光では無く、朝日に変わっていた。
「…はぁ。何だったんだろ。」
長くややこしく、甘酸っぱい夢…という事にしたかった。でも、この惨状は?
部屋の中は、本も服等の自分の荷物もぐちゃぐちゃに散らばり、掛け軸は落ちて、押し入れの襖は外れていた。おまけに…
大量の、小さな花びら。白い梅の花びらが、部屋中至る所に貼り付いていた。やっと我に返り出た言葉は、
「あー…掃除大変だな…」
あれから結局、眠る事は出来なかった。まあ、当然だけど。花にまみれながら、散乱した物をマイペースに片付けていた。
「あ〜、こればあちゃんの古い着物かな?」桐箪笥も相当揺れたらしく、引き出しもいくつか開いた状態になっていた。色とりどりの、小紋や訪問着。着物を入れ直し引き出しを戻そうとしたが、何かにつっかえた。
見ると、奥に紙の束らしき物が。引っ張り出すと、それは沢山の手紙と押し花のしおりだった。白梅…既にセピア色になったそれからは、あの香りはするはずも無かった。
結局、あれは何だったんだろう。最後に、気持ち良さそうにどこかへ飛んで行った龍…眠らせた恋心の名残なのか、それともあの二人を見ていた梅の古木の精だったのか。
いずれにしても、祖母が亡くなる事によって解き放たれたんだろう。
「まあ、ばあちゃんも乙女だったってわけだ。」
乙女心の威力たるや、時をも越える…か。




