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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第1章 異世界編
14/135

014

マキシムとシマホムの会談から2日、城内の雰囲気が変わった。


憲兵隊は 自身の権限が及ばない ペレス家の捜査のため 国務大臣ヨーヒムに


協力を要請、ヨーヒムもペレス家の力の縮小を望んでいるため 協力を惜しまなかった。


自分への監視の目がなくなったこと 城内が騒然としていることから マキシムは


シマホムが上手くやっていることを 確信する。


『動くなら 今だな』


果断即決 それが彼の用兵の妙である。そして 即座に行動に移した。


「コナンはいるか?」


マキシムの言葉で、すぐに団長室に入ってきた。


「はっ どのようなご用件で?」


「私は 私用で 城を出る。午後の訓練は お前に任せる。今日は戻らないので

後のことは 頼む」


「はっ 了解いたしました」


マキシムは城を出て 貴族街へと向かう。貴族街とは その名の通り 貴族達の私邸が


ある地区を示し 中へと続く道には 門があり 警備兵も配置されている。


門番は マキシムに気づき 敬礼する。マキシムも敬礼を返す。


「マキシム様 今日は お早いお戻りで」


「少し体調が優れなくてな、ああ、他のものには 他言無用でな。騎士団団長が 体調不良で早退など 見っとも無いのでな」


冗談めかした言葉であったが 門番達は 「お大事になさってください」と


まじめに返されてしまい 苦笑いを浮かべてしまった。


マキシムの私邸は 貴族街のはずれにあるが、団長に就任したときに 門から一番近くの


大きな屋敷をあてがわれていた。この屋敷は 有事の際 すぐに城へ向かえるように 


代々の騎士団団長が使っているのだ。


一旦 屋敷に入り 外の様子を窺う。ここからの行動は 人に見られたくないため


貴族街 内部の巡回の兵をやり過ごすタイミングを計る。


とは言え 巡回については ルートも時間も把握してるのでたいした問題ではないのだが


今は ペレスの私邸の捜査のため 憲兵隊や ヨーヒムの手のものが ウロウロしている


のが 厄介だった。


巡回は通り過ぎた。外を確認しても 人の姿は見えない。


屋敷を出るが しかし 用心をし 貴族街の一番外側の道を歩き 目的地へ急いだ。


とある大きな屋敷の前 周囲を窺い 重厚な扉をノックする。


しばらくすると 年を取った 侍従が姿を現す。


「私は 騎士団団長 マキシムと申す。約束はないのだが レジアノ様にお会いしたい。 手数だが 取り次ぎを願いたい」


「少々お待ちください。主様にご確認してまいります」


一旦、屋敷に入った侍従はすぐに戻ってきた。


「主様は お会いになるそうです。どうぞこちらへ」

「かたじけない。感謝する」


マキシムの言葉に 侍従は深々とお辞儀で答え レジアノの元へ 案内する。


レジアノは 3年前 勇者が召還される直前に 死去した 王妃の弟で王族の一員である。


応接室に通されると レジアノはすでに待ち構えていた。


「レジアノ様 お久しぶりでございます」


「マキシム殿 久しいな、御前会議以来か?まあ 座ってくれ」


レジアノの言う 御前会議とは 3年前に開かれた 勇者召還を決めた会議で


国の各役職の長や 有力貴族 王族が集められていたものだ。


マキシムが一礼し ソファーへ腰を掛けると 先ほどの侍従が レジアノとマキシムの


前に お茶を用意し レジアノの後ろへ控えた。


「さて、マキシム殿 今日はどのような 用件で参った?」


「その前に お人払いをお願いしたいのですが」


チラリと後ろの侍従に目をやる。


「人には聞かせられぬ話か?」


そう言いながら レジアノは軽く手を上げると 侍従は部屋を出た。


「これでよいか?」


「はっ。ありがとうございます。レジアノ様は ペレス卿の話をご存知ですか?」


「ペレス卿の話というと 例の侍女を襲おうとして 勇者殿に取り押さえられたというやつか?人払いをしてまでする話しか?すでに城内では かなり噂になっておるぞ?」


「さすがに お耳が早いようで。ところで、この話 レジアノ様は いかがお思いになられますか?」


「まあ らしいといえば らしい話だと思うがな」


「失礼ながら ペレスの卿のご趣味や性格は 決して 褒められたものではございませんが、ペレス卿は ペレス家を現在の地位まで押し上げた 有能なお方です。

もし 勇者殿に 現場を抑えられなかったとしても 後日 侍女が勇者殿に直訴すれば

同じことでは ありませんか?勇者殿は 下働きの者に甘いのも有名な話ですし。

だからこそ ペレス卿が このような愚行に走るとは 思いにくいのです」


「では、マキシム殿は この一件に 違う解釈があると申すのか?」


「はい。ペレス卿は 嵌められたのではないかと」


「嵌められた?」


「つまり 美人局です。勇者殿が 自分の侍女を使い ペレス卿を誘惑させ その気になったところに 自身で踏み込む」


「いや、だが、何故 勇者殿が その様なことを?」


「ここからは 私の推測なのですが、いや正確には 今まで お話したことも 推測なのですが・・・。ダリーンの一団が 勇者殿を表敬訪問したときに 勇者殿は 王妃のことを見初め 深夜 自室に招いたという噂があります。これは いくつかの証言があり

確度の高いものです。

ダリーンの思惑は明白ですが まんまと 勇者殿はそれに嵌ったのか、自身が何らかの

野望に目覚めたのか・・・。ペレス卿は国の重臣、このように事を荒げては 国の屋台骨を揺るがすことになります。勇者殿のやりようは それをこそ 狙っているようにしか

思えないのです」


「そ、それは、事実であれば・・・・」


「推測にしか過ぎませんが 完全に否定できるものでもないかと思うのです」


「・・・・・・」


考え込むレジアノを見つめ マキシムは 心の中で 舌を出す。


『ペレスが有能?ははは 奴は 前後のことさえ読めぬ 愚か者だよ』


マキシムは 人の心を操る才に長けている。それこそが カリスマ性とも


いえるかもしれない。勇者のことを少しでも知っていれば このような言葉に


惑わされることもなかったかもしれないが レジアノは勇者との接点がなかった。


勇者の力はとても大きく 味方であれば これほど心強いものはないが


敵となれば どれだけ厄介な相手か その力の大きさを 知っているが故に


痛いほどわかる。不安をあおり 思考を誘導しているのだ。


「それで、マキシム殿は どうするおつもりか?」


「戦力では 勇者殿には敵いません。そこで、交渉の材料として 召還魔法の秘密を

知りたいのです。レジアノ様は 御前会議にて 唯一 最後まで 召還を反対されていました。どのような 理由でかは私にはわかりませんが もし 勇者殿が裏切れば 全ては

無駄になってしまいます。

どうか、私に 召還の秘密をお教えください。もしもに 備えるならば できるだけ早いほうが良いと思うのです」


「だが・・・私の口から・・・召還が無駄に・・・姉上の犠牲が・・・」


口ごもるレジアノの呟きは マキシムの耳には 届かない。


「レジアノ様!」


「わかった。だが 他言は無用だぞ!」


「承知しております」


「召還には 大量の魔力が必要なのは 知っておるな?」


「はい。存じております。代々の大魔道師様が 毎日 魔方陣に魔力を込め

それを何年 何十年と続けると 聞いております」


「そうなのだが 発動には もう一つ 鍵が必要なのだ」


「鍵ですか?」


「そうだ。そして その鍵というのが 王家の人間の命・・・・。

今回の召還においては 姉上・・・王妃様が その身を捧げたのだ」


悲痛な面持ちで語るレジアノ。


「そ、それは・・・これは 勇者殿に知られるわけには いきませんな。

その上で もし 知られたときの対策を 今のうちに 考えておく必要も・・・

一番近くに居る 王族となると マリア様になりますし」


「マリアが・・・マキシム殿 よろしく頼む。私にできることは 何でもしよう」


「ありがとうございます。王家のため 微力を尽くします」




私邸に戻ったマキシムは 並々と注いだ酒が入ったグラスを片手に ほくそ笑む。


『どうしてやろうか・・・勇者よ・・・楽しみに待っておれ・・・』



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ダリーン城 王の執務室。


王と宰相は作戦の進捗状況を確認していた。


「ドームのほうは どうだ?」


王の問いにグフタスは答える。


「密かに森に入り 魔物の数は 順調に増えているようです」


「あの魔族 なかなか 使えるな。部下に欲しいぐらいだな」


「ご冗談を」


真顔で答えるグフタスに 軽く舌打ちをする。


「例のあれ のほうは どうだ?」


「そちらには 少々問題が」


「どうした?」


「上手く捕獲でき ペレス卿の下で 一時 預けていたのですが タラクシャに送った密偵の報告によると どうもペレス卿は 何かの罪に問われ 拘禁されてるようなのです」


「あの豚は 魔族より劣るのか・・・・手は打ったか?」


「はっ 密偵の応援も送り 連れ出すよう 指示しております」


「あれが 手に入らなければ 計画が 無駄になる。なんとしても 手に入れろ!よいな!!」


「御意」


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