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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第3章 融合世界編
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 日本とタラクシャの間を取り持つことを了承した。新しくできた世界の安定のため俺にできる事の第一歩だと思ったからだ。

 俺に今の世界を救えるなんて大それたことは考えていない。救えるなどと考えるのは傲慢と言うものだろう。でも できることをやらないのは 怠惰と言うものだ。


できることをやる


 それが、今の俺の考えだ。

 できることをやる の一環として総理にお願いをしてみる。


「こちらからも一つお願いがあるのですが」


「なんだね?」


 タラクシャからの帰りにモニリの町に寄ってもらうようにお願いをしたのだ。

 何故かと問われ 知り合いの家族の安否を確かめたいと伝えると 快諾してくれた。


 話はついたと確信した総理は 少しばつの悪そうに 言った。


「早速で悪いのだが今から行ってもらえるかな?」




 などと思い返しながら 俺とマリアは再び機上の人となっている。

 留守番組には 出雲さんの携帯を借りて連絡済だ。モニリの町に寄ってくることをサヤに伝えると涙声でお礼を言われた。

 だけど まだ、サヤの家族の安否を確認した訳ではない・・・・何てことは 今のところ 考えてはいない。モニリの町の魔力を感じた時 相当数の魔力を感じることができた。それこそ モニリの町の人口ほどの魔力をだ。そこから 一部の人だけが居なくなっているほうが 不自然過ぎると 楽観的に考えている。


 ヘリは 王都の目前までやってきた。

 さすがに このまま乗り込むわけにも行かないので 王都から少し離れた所に着陸してもらう。これは 出発前の打ち合わせで決まっていた事だ。

 俺とマリアがヘリから降りると もう一機のヘリから使節団の方々も降りてきた。俺が寄り道を申し出た事で 白鷹首相は ヘリを二機用意してくれたのだ。


「では、頼んだよ」


「はい 任せてください」


 使節団の団長の方と 挨拶を交わし 歩いて王都を目指す。30分ほど歩き 王都外門に着き 警備兵と簡単な言葉を交わし 王都に足を踏み入れる。そこから更に一時間ほど歩き ようやく城門にたどり着く。


「勇者様!マリア姫!お帰りなさいませ」


 城門の警備をしている若い兵は 元気よく挨拶をしてくれた。

 地球に帰れるようになってから 何度も往き来しているのでなれたものだが、それが この事態の原因の一つだと考えると 若干 気が滅入ってくる。


俺は 首を振り 後ろ向きな考えを振り払う。


 確かに 振り返り 検証し反省することも大切なことだが 今は その時じゃないはずだ。

 

 自国の姫と救世の勇者 城への出入りは基本 顔パスだ。そして 自分で言うのもなんだが 俺もマリアも結構 人気者で 城内を行きかう多くの人に声をかけられる。その声をかけてきた 高位の文官に頼み 至急 陛下との謁見を申し込んだ。

 いくらマリアと陛下が親子であっても公務中の王においそれとは会えない。

 待っている間 城や町の様子があまりにいつも通りで 異変など無かったのではないかと思いにとらわれる。

日本のように 空から確認はできないが それでも異変には気付かないものだろうか?


「陛下がお会いになるそうです。こちらへ」


 そんな考え事をしていると 文官の男が呼びに来た。

 連れて来られたのは 謁見の間ではなく 王の執務室。案内をしてくれた文官が 「お連れしました」と声をかけ 重厚な扉を開き 促されるまま 中へと入った。


「陛下、ご無沙汰しております。急なお目通りを お受けいただき 恐悦至極に存じます」


 深く頭を下げ 陛下の配慮に感謝の言葉を捧げる。一歩引いた所で マリアも同じように 頭を下げていた。


「よいよい、勇者殿 畏まった礼は不要じゃ。今は 三人しかおらんのだ。勇者殿はもうじき 予の息子となるのだから この場は 私的な場と言ってよい。それに予も 勇者殿の来訪を待っておったのだ」


「私を?」


 陛下は まずはと、俺達にソファーを勧め 自身もソファーに移動すると 机の上に置かれた ベルを鳴らす。澄み切った ベルの調べが部屋に響き渡ると 一人の侍女が執務室に入ってきた。

 彼女は小麦色に焼けた肌 緑色の瞳を持ち 少しウェーブし 茶色がかった長い髪を纏めている。


「アンナ!」


「お久しぶりです ナオキ様」


 初夏 木陰に吹く爽やかな風を思わせる笑みを湛えつつも 手早く お茶を用意すると すぐに部屋を出て行ってしまった。

 彼女は 亡国の姫君であり その生い立ちを考えると 侍女としての引き取り手はなく 勇者付きの侍女として 俺に押し付けられたのだ。そして 俺が帰還し ドラゴンの一件の後 陛下付きの侍女として引き取られた。王宮次女は みな 王族や貴族の考えを察する程度の器量は持ち合わせているが アンナに至っては 自身が元王族であり ドラゴンの一件での陛下への対応が 陛下の琴線に触れたらしい。

 そして これから陛下と重要な話があるのだと言う事は アンナでなくとも分かる事。ここに居座り 俺と長話をすることは侍女として許されなかった。


「では、まず予の話から聞いてもらおう。実は数日前 大きな魔力爆発があってな。それは 魔力感知ができない者ですら感じられるほどの魔力が 一気に広がったのだ。三賢人によると 空間や時空に干渉する類の魔法が使われたようなのだが それ以上詳しいことは分からないらしい。それから 暫くの後 轟音と共に空を飛ぶ物が度々現れるようになったのだ。それはまるで 翼を広げたドラゴンのようなのだが そこから魔力を感じない。民も不安がっていてな・・・・勇者殿には その調査を願いたいのだ」 


 俺とマリアは 一瞬 視線を交差させ 手を握り合い 陛下に対する。


「実は 私達も その事で今日は 参上したのです・・・・・」


 俺は 陛下に何が起こり 現在どうなっているのかを説明した。説明が進むにつれ 陛下は身を乗り出し 説明が終わると 渋い表情をしながら 背もたれに体を預け 考え込む。


「俄かには 信じられぬな・・・・」


 信じられないと言いながらも 王は 頭の中で 事態を整理し 次に何をすべきかに 思考は移っていた。


「で、勇者殿・・・・今日は 親書を携えた使節団も同行していると?」


「はい・・・・急で申し訳ありませんが」


 既に陛下の目は 再開の時に見せた家族を見るものから 国を統べる為政者の物に変わっている。そして その鋭い眼光を 俺に浴びせかける。


「勇者殿の国の 宰相から直接頼まれれば 嫌とは言えぬのだろうが 確かに 急だな」


 俺と陛下の視線はぶつかり合い 火花を散らす。見かねたマリアは 思わず声を上げた。


「お父様、これは・・・・」


「マリアよ!お前は黙っていなさい!」


 マリアの言葉を遮り 一喝する。

 だが、陛下もマリアの横槍で気が削がれたのか 小さく溜息をついた。


「まあ、良い。友好的な関係を望んでいるのならこちらからそれを蹴ることもなかろう。ただし、こちらからも条件はある。

当然 こちらにも準備は必要だ。それに、その空を飛ぶ乗り物にも興味があるので 城までそれで着てもらいたい。だが、そのためにも 城下に触れを出さねば 混乱が生じよう。そのための時間も必要だ」


 親しき中にも礼儀ありではないが 国と国とのやり取りなのだから 次からは 正規の段取りを踏めと 釘を刺したかったのだろう。

 おそらく 俺の予想は 間違っていないはずだ。何故なら 陛下の目 元の優しい暖かい物に変わっていたからだ。


・・・・しかし


 確かに ことが 性急過ぎるのではないか?それ程 日本は切羽詰っているのか?いや、もしそうだとしても だからこそ 相手に 不快感を与えないためにも 慎重になるのでは?政治や外交のプロが たくさんいる中 この対応は おかしくないか?


 陛下とのやり取りで 猪突猛進していた俺の気持ちは 冷静さを取り戻し 次々に疑問が頭に浮かんでくる。

 タラクシャは 異変があったことは分かっていたが 何がどうなっているのかは 分かっていなかった。しかし 日本は 飛行機を飛ばしたりして 何があったかは分からなくとも 何が起こったかは ある程度理解している。

 それが、混乱を呼び この様な 対応になったのだろうか・・・・?


まあ、普通に考えて 日本人・・・・いや 地球人が 異世界と地球が融合したとか 信じられないだろうし 戸惑うのも無理はないのか・・・・




 その後の予定を 陛下と相談し 俺たちは 一端 ヘリに戻る事となった。


「首尾はどうだったかな?」


「陛下は 会ってくださるようですが 準備が必要なので 時間が欲しいと言われました」


 戻った早々 使節団の団長さんに 聞かれ ありのまま 答える。


「それは仕方のないことだし 予想もしていたよ。寧ろ この様な突然の来訪で 会って下さるのは 君たちのおかげなのだから 気にする必要はないさ」


 物腰の柔らかい 使節団団長を務める官僚の男は にこやかに言ってくれた。

 3~4時間を目処に 準備を整え 準備が出来次第 王城から使いの者が来てくれることを伝えると 俺たちは それまで 自由にしていて良いと言われたので 持ち込んだ 缶コーヒーを片手に 少しはなれた小高い岡の上で休憩する事にした。

 ここ数日 体の疲れはないものの心の疲れは大きく この のどかでゆっくり進む時間に 癒されたのかいつの間にか 寝てしまっていた。


 どれくらい寝ていたのだろうか、遠くから聞こえる馬車の音で目を覚ました。と、言っても 常人には聞こえないだろうが・・・・。

 一緒になって寝ているマリアも起こし 使節団の方々の元へと戻る。


「お目覚めかね?」


 聞きようによっては 嫌味にも聞こえるが 団長の男の 物腰の柔らかさから そのようには 聞こえない。ニコニコした表情を崩さないのは やはり交渉事に長けているのだろう。

 先程 感じた疑念も含め この人達に対しても 一歩引いて 冷静に見つめた方が良いのかもしれない。


「間もなく 使いの者が来るようなので」


 団長さんは 目を凝らし 王都の方向に視線を移すが 彼には まだ何も見えないようで 不思議な顔をする。しかし ヘリのパイロットを務める自衛官は 双眼鏡を覗き 声を上げた。


「馬車が一台 こちらに向かってきます」


「馬車?」


 団長さんは表情を崩さないが 他の団員さんからは 失笑とも取れる呟きが聞こえてきた。

 馬車は 俺達のそばで止まると 降りてきたのは 団長さんとは正反対の 感情を全く見せない表情の男だ。


「ヨーヒムさん!」


 俺が思わず声をかけると ヨーヒムさんは 一瞬 眉毛を吊り上げ 一瞥しすぐに 元の無表情へと戻る。


「私は タラクシャの国務大臣を務めるヨーヒムと申します」


 名乗りをあげると 団長さんは にこやかに 近づき ヨーヒムさんの手を両手で握る。


「私がこの使節団の団長です。よろしくお願いします」


 両極端な二人だが どんな場面でも 表情を変えないのは 似た者同士なのかもしれない。そして それが 二人の 戦いの場である 「交渉」で使われる武器なのだろう。

 話がついたのか ヨーヒムさんは 俺達の元にやってきたかと思うと 今度はヘリの周りを回りだし、時に立ち止まり 機体に触れたりしている。

 何時ぞやのマリアのようだ。


「しかし、驚きですな・・・・この様な鉄の塊が空を飛ぶとは・・・・」


 感嘆の言葉を吐きながらも 表情は変わらない。さすがは、ヨーヒムさんだ。


「では、参りましょうか」


 ヨーヒムさんは 案内のため俺達と共にヘリに乗る事となったようだ。とは言え 使節団のヘリではなく俺とマリアの乗るヘリに同乗するらしい。

 振動と共に フワリと浮遊感を感じ ヘリは徐々に高度を上げていく。窓の外を見ているヨーヒムさんは 今度こそ 驚きの表情をしている。

 魔法で自分の体を浮かせることはできるが、それを 持続し移動手段として使えるほどの魔法使いは 極々一部であり、異世界出身者のほとんどは 空を飛ぶ事などできない。

 だが、やはり、ヨーヒムさんは ヨーヒムさんだ。驚きと不安の入り混じった表情ながらも パイロットに対し 気丈に 着陸場所を指示していた。

 着陸場所は 城の裏庭だった。ここは 裏庭と呼ばれてはいるが実際は 菜園や牧場となっている。戦争になり 篭城した際の食料を供給するための物らしい。

 着陸後 ヘリの周りには人だかりができている。異世界人には 鉄の塊が空を飛んできたことを自分の目で見ても尚 信じられないのだろう。

 使節団の面々も困惑した様子で どうしたものかと困り顔だ。だが、ヨーヒムさんのわざとらしい咳払いで ようやく 場は収拾された。



 使節団と俺達は 謁見の間に通され 陛下を待つこととなる。

 が、一分も経たずに 陛下は姿を現した。


「遥々 ご苦労であるな。予が タラクシャの王だ」


 俺は 少々 驚いた。国力や 色々な上下関係もあるが 陛下から 名乗るなど普通に考えて ありえない。「対等な立場」を 意識し 陛下が相当 折れてくれているのだろう。


「突然の訪問を お受けいただき ありがとうございます。私が この使節団の団長を勤めさせていただいております」


 団長は 深々と頭を下げ 感謝の言葉を述べ 更に 言葉を続ける。


「私は 我が国の首相より 貴国に宛てての親書を預かっております。ですが、その前に 少々よろしいでしょうか?」


「ああ?構わんが?」


 陛下も 何をしだすのか 若干 戸惑っている。団長さんは 振り向き 部屋の隅に控えている俺とマリアに向かい声をかけてきた。

 

「ここまで来れたのは君たちのおかげだ。本当にありがとう。

後は 私達に任せて 先に帰っていなさい。総理に聞いたが 君たちは どこか寄る所があるのだろ?国と国との交渉だ。1時間や2時間ですむものではない。数日、数週間 はたまた それ以上かかるかもしれない」


「団長殿の 言う通りだな。勇者殿がこの場にいても することはないだろう。勇者殿は 勇者殿で できる事をすればよい」


 陛下も 団長さんの言葉に 同意した。

 確かに 一介の高校生が 外交交渉に立ち会ったところで できることは 「邪魔」だけだろう・・・・。

 俺とマリアは 陛下と団長さんの好意甘え 一足先に 帰ることとなった。



 途中 モニリの町に寄り サヤの家族の生存も確認できた。

 サヤの家族は 一筋縄ではいかない。お母さんと すずちゃんに いいように弄ばれた・・・・。

 まあ、これだけ元気ならサヤも安心するだろう。




そして 10日後


 これと言って 政府からも 出雲さんからも連絡は無い。上手く行ってるのか行っていないのか・・・・。

 まあ 10日くらいでは 結果は出ないのだろ。

 最近は 魔法の検証にも行き詰まり 特に することもないので 本棚のラノベを読み返している。


 が、突然 大きな物音が 玄関のほうから 聞こえてきた。こまちは 何か叫んでいるが お構いなしに 足音が近づいてくる。

 俺は 読みかけの本を 机の上におき 腰を上げ 様子を見ようと 扉のノブに手をかけようとした瞬間、扉が 勢いよく開かれたのだった。



 


 


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