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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第1章 異世界編
13/135

013

ペレス卿が拘束された日の深夜、城下町でも 大きな捕り物が行われた。


違法奴隷商の捕縛だ。事件が発覚して 考えられないほどの早さだが 


勇者と姫の依頼であること。更にワーレンの近衛兵団の協力により 攫った娘を装った


密偵を内部に潜入させ また、その受け渡しは トップとしかしないと


伝えると ノコノコ 黒幕が出てきて 首謀者もあっさり判明。


姫の返還を求めたが 一人では足りないと 拒否されたが それは想定のうち。


首謀者は ユウヤ商会の店主 ユウヤであり 誘拐され娘達は ユウヤ商会の所有する


倉庫に監禁されたいたため 憲兵隊のほぼ全員を 動員し ユウヤ商会の店舗や


倉庫数ヶ所 ユウヤの私邸など 一斉に踏み込み 見事に ユウヤの捕縛や証拠の


差し押さえ 誘拐された娘達の 保護に成功した。


捕縛した直後から 厳しい取調べが始まったが ユウヤは 一切 口を開かず


黙秘を貫いている。




昨日から 魔王軍に破壊された砦の 復旧工事の視察に行っていた マキシムは


転移魔法で町から町へ また違う魔法使いの転移魔法で町から町へ 


そうやって 何度か乗り継ぎ 最後の町からは


馬を飛ばし その日の 午前中に 城に戻ってきた。


マキシムは 団長室に入ると 副官のコナンが 迎えてくれた。


「団長 お帰りなさいませ。砦の様子はいかがでしたか?」


荷物を片付け 自分の椅子に座る。


「そうだな、思っていた以上に 工事は遅れているな」


「やはり、人手が足りませんか?」


「うむ、国外の町の復旧に 国内の工夫の多くが 出稼ぎに出ているので仕方がないのだがな。砦は国を守る要、なんとか工事を急がせたいな」


「ですが、勇者様を擁する我が国に 攻めてくる者などおりますまい」


「コナンよ、その考えは 危険だぞ。疲弊した各国からすれば 我が国の物資は

涎が出るほど魅力的だろうに。普通であれば 我が国の物資をめぐって 奪い合いの戦争になっても おかしくはないのだ」


「しかし 勇者様がいらっしゃれば?」


「だから、危険なのだ。勇者殿がもし寝返ればどうなる?それに そもそも勇者殿は

帰還を望まれているのだ。勇者殿が居なくなったときのことを想定し 準備をしておかなくては ならないのだよ。

まあ 寝返りに関しては 勇者殿相手に 砦を復旧したところで 意味はないのだがな」


マキシムは 自虐的な笑みを浮かべた。


「ところで、城下や城内が騒がしいようだが 何かあったのか?」


「はい。団長はユウヤ商会をご存知ですか?」


「知るも何も ユウヤ商会といえば 国内でも最大の商家ではないか。我が家にも

出入りしているし 王家や城とも 取引があるではないか」


「そのユウヤ商会の店主が 違法奴隷取引の罪で 捕縛されました」


「ほー しかし、豪商相手だ 捜査には時間がかかるだろうに?私のところには そんな

噂すら入ってきてはなかったがな」


「それが、勇者様とマリア姫の知人が誘拐されたのことで 憲兵全隊の総力を挙げて

この数日で解決したようです」


「なるほどな。だからか・・・」


マキシムは何かに納得したように 頷き、そして コナンは更に話を続けた。


「実はですね、これよりも 大事件がありました」


「もったいぶるな 早く話せ」


「ペレス卿が 侍女の強姦未遂の容疑で 拘束されました」


「誠か!?」


マキシムは 机を大きく揺らし立ち上がった。


「まだ、公表はされておらず 噂の段階ですが どうやら 真実のようです」


「いや、待て しかし 未遂なのだろう?ペレス卿の力があれば それくらい揉み消すことなど容易いだろうに?」


コナンは こんなに動揺するマキシムを始めて見た。


「相手の侍女というのが 勇者様付きの侍女で しかも現場を 勇者様に取り押さえられたとか」


マキシムは少し落ち着き椅子に座りなおした。


「法務大臣も 陛下も 勇者殿相手では 手を打たないわけには 行かないということか。

まあ 陛下はこの手の犯罪がお嫌いだから、ペレス卿相手に 良い口実ができたと

喜んでらっしゃるかもしれないがな」


「ペレス卿に ユウヤ商会か・・・」


マキシムは呟き考えに没頭し始め、副官としてその様子を理解しているコナンは


何か言おうとしたが、口を閉じた。


『しかし、ペレス卿は何をやっているんだ!バカはとことんバカということか・・・

まったく、使えない奴だ。

・・・どうしたものか・・・。

せっかくの火種だ、煽って 燃え上がらすか。最近 ヨーヒムの奴も 俺の周りを

チョロチョロと嗅ぎ回ってるようだし それで 奴らの気をそちらへ向かわせれば

俺も 動きやすいか。

監視が薄くなれば あのお方に会いにいけるしな・・・・・』


意を決したマキシムは早速、行動に移す。


「コナンよ、確か憲兵隊に知人が居たな?」


「はい。兵科学校の同期で 現在 2番隊の副隊長を務めている友人が居ます」


「名はなんと申す?」


「シマホムです」


「では、シマホムを至急 ここへ呼び出してくれ」


「はっ」


コナンは 若干の疑問があったが、熟考したマキシムの指示だったのでん何か深い思惑が


あるのだろうと 急いでシマホムを探しに出た。


上手く 城内でシマホムを見つけれたらしく 30分ほどで団長室の扉がノックされた。


「入れ!」


「失礼します。憲兵2番隊 副隊長シマホムです。お呼びとあり参上いたしました」


「ユウヤ商会の件で忙しかろうに 呼び立ててすまないな」


「いえ」


「まあ 楽にしてくれ」


マキシムはソファーへ促し 自身もソファーに 移動する。


「私にどのようなご用件で?」


実際 シマホムは 多忙なのだろう 早々に用件に入った。


「では、手短に 単刀直入に聞くが ペレス卿の件は 真実か?」


それまで 温和な顔つきが一変し 険しい表情となるシマホム。


「その件について 真実かどうかは 私の口から お話しすることはできません」


「職務に忠実なのだな。しかし 私もただ 興味本位で聞いてるわけではないのだ。

これは 国のため 手遅れになる前に確認している。そう理解してもらいたい。

まあ 話せないというのなら 私の問いに 真実なら 沈黙にて 答えてくれれば良い」


「ペレス卿は 侍女強姦未遂の罪で 拘束されているのだな?」


シマホムは マキシムの威圧感に圧倒される。若くして 騎士団長の地位にあるのは


ただ 家の名前というだけでは ないのだと理解した。


そして、団長室は 数秒間の静寂が包む。シマホムにとっては 永遠とも感じれる


数秒間だった。


「ありがとう」


静寂を破ったのは マキシムの言葉だった。


「これもまた、勇者殿の手柄ということか。どうだ、礼に 勇者殿の手柄に匹敵する 

いや それを超える 手柄を取らせてやろうか?」


シマホムは 意味がわからず 曖昧な返事を返す。


「はぁ?」


「では 私にも立場があるのでな、私は今から 独り言を言う。後のことは 好きにしてくれていい」


「?」


「ペレスとユウヤは 繋がっている」


「そ、それは 本当ですか?」


「私は独り言を言っただけなのだがな」


ハッとする シマホムに対し したり顔のマキシム。


「まあ よい。話は本当のことだ。ペレスは ユウヤに国の物資を横流ししたり、

密輸の手引き 憲兵隊の情報を流したり いろいろ やっている」


「しかし・・・」


シマホムは 信じられないという顔をしている。


「信じられないか?だが事実だ。そうだな ユウヤ商会への手入れだが 容易ではなかったか?日頃であれば ペレスから 憲兵隊の動きは全て 流れてくるので、不要なときに 

無駄に厳重な警戒をする必要はないだろう。だが 今回の手入れの情報は ペレスが拘束されていたため流れてこなかった。ユウヤにしてみれば 無警戒のところへの不意打ちだっただろに」


確かにマキシムの言う通りだった。シマホムは 誘拐された者たちの救出の任に


付いたのだが 実にあっさり 作戦は終了した。監禁場所の倉庫には 誘拐犯が


10人居たが その内9人が 酒を飲み 眠りこけていたのだ。残りの1人も


監禁している部屋の前で見張りをしていたのだが 椅子に座り 半分 居眠りしていた。


他の場所も 似たような感じだったらしい。


「他にもまだ、あるぞ ユウヤは山賊を雇い 他の商人の荷物を襲わせていたとか。

これも 憲兵隊の動きや 護衛の状況がわかれば より安全に 襲える。

後は そうだな ペレスは ユウヤから違法奴隷を買っているとか。

まあ 叩けは いくらでも出てくるぞ」


「し、しかし 俄かには信じられません。そもそも どうしてマキシム様はその様なことをご存知なのですか?」


マキシムは少し困った顔をして 答える。


「どうしてと言われてもな、大貴族の多くのものが知っている常識といったところか」


「なっ・・・」


その言葉にシマホムは絶句するしかなかった。


「不正を常識といわれて 憤るのはわかるが 責めないでもらいたい。

国内最大の権勢を誇るペレス卿と 事を構えたいと誰が思う?私が ほんの僅かの

正義感を出し立ち上がったとしても すぐに潰されるさ。必要となれば 私を

殺すことさえ厭わないだろに。事実 過去にそう言うことが たくさんあるのだよ。

今回のことで ペレス卿の力が 弱まれば 先ほどの話の一部でも 漏れ出てくるだろうが ユウヤが処分されてからでは 立証のしようがないだろう?

噂だけでは ペレス卿の罪を問うことはできないからな」


「では、なぜ それを私に?」


「今は ペレス卿を追い込む好機だろう」


「追い込んで、つまり御家のためですか?」


「家のためか・・・まあ 否定はしないが ペレス卿の力が弱まれば 確かに本家には

大きな利があるが 私は 分家の更に分家、たいした利はないよ」


「では 何故?」


「うむ、身内の恥を晒すのは心苦しいのだがな、騎士団には 少なからず ペレス卿の

一門や 息のかかったものが居る。そいつらは 実力にそぐわない地位に居るのだよ。

そして、私の指示に公然と異を唱えたり 命令を無視したりする。

我々の仕事は 戦争することであって 戦場でそれでは困るのだよ」


「勇者様が居れば 戦争もない。安心して 権力争いをしてるわけですね」


「お前も戦争はないと思うか?」


「そうですね。それこそ、ペレス卿と事を構えるものが居ないように 世界の最大戦力である 勇者様と事を構える国は ないでしょう」


「そうだな。だが勇者殿は 帰還を希望している。もし 帰還の方法を見つけ 明日にでも 勇者殿が居なくなれば どうなる?疲弊した各国にとって タラクシャの豊かさは

犠牲を払ってでも 手に入れたいだろう。

権力争いに明け暮れ ろくに訓練もせず 戦場では命令、指示にも従わない軍隊と

生きるために 食料 物資を求め 死に物狂いで攻めてくる軍隊と どちらが勝つと思う?答えは明白だろう」


「た、たしかに・・・」


「何も 私はその者達を排除したいわけではないのだ。私が排除したいのは ペレス卿の

影響力なんだよ。中には 有能なものも居るしな。

それと ペレス卿の一門たちが 好き放題やっているのは 騎士団だけの話ではないだろう?」


「・・・・・」


シマホムには 思い当たる節が 有り過ぎ それ故に決断も早かった。


「わかりました。今のお話 有効に使わせていただきます」


シマホムの強い眼差しに 納得した マキシムは 「頼む」と一言 告げ

部屋を出る 彼を見送った。



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地下牢に残された 人間と魔族。


グフタスはこの国の宰相であり 優秀な男だ。


しかし 彼の優秀さは かなり歪んでいる。グフタスは 言うなれば


実験者なのだ。つまり 自分の行った政策が どのような結果になるかを


実験しているのだ。


時には 全国民が喜ぶような善政を行ったかと思えば


誰もが 苦しむような 悪政を行うこともある。


実験の過程と結果にしか 興味がないのだ。


その優秀な グフタスが 悪辣な作戦の準備に取り掛かる。


「私はこの国で宰相を勤める グフタスだ。お前に いくつか聞きたいことがある」


「なんだ?」


「お前は 魔物を増やすことはできるか?」


「俺の力で 周辺の魔物を従わせ 集めることはできるだろうが お前の言ってるのはそう言う意味ではないのだろ?」


「そうだ。特定の場所の 魔物の数を増やしたい」


「俺達 魔族自身も どこから生まれてきたのか どうやって生まれてきたのか わからんのだ。だが 魔物が生まれやすくなる環境と言うのもある。まあ 絶対ではないがな」


「では 私の指示する場所を その魔物が生まれやすくなる 環境とやらに してくれ。それと お前の存在は絶対に 知られるな。陛下の言うように 影から勇者を嘲笑うならそれは絶対条件だ」


「ああ わかっている」


魔族の将軍 ドームは 更に細かな作戦を 聞かされ


この王と宰相の 人間離れした 悪辣さに 恐怖さえ覚えたのだった。


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