第12章 終章~てのがねぇ~
青森駅前の熱気が少し離れた音環の家にも伝わってくるようだった。
「若くねー」
音環は昨日まで4日間。ねぶた祭りに出ずっぱりである。
やぐらねぶたを引く曳き手として昨日まで熱気の中にいた。
ラッセラーと言う囃子に周りでは跳人が思い思いに跳ねる。体の奥底から湧き上がる命の火が音環を動かしていた。皆を動かしていた。
今もまだその掛け声が、耳の奥底に残っている。
昨年はこんなに疲れなかったぞ、とベッドの上に転がった。LINEもスマホの呼び出しもすべて無視をした。頼む。寝かせて。
すべての音を祭りに持っていかれ、静けさに包まれる夏の夜。音環がうとうととまどろんでいると、突然インタフォンの呼び出しが鳴った。
仕方なく、インタフォンのモニターを確認した。げっ。すべっタローと大河たちだ。
「いるんだろー。出て来いよー」
音環は覚悟を決めた。LINEに電話に突撃。出ないわけにいかない。
ドアを開けた音環の前には、跳人の正装をした4人がいた。……門亜に至っては女性の跳人の格好だ。花笠まで目深にかぶっている。
「着替えて来いよ。いこうぜ」
大河はニヤリとして言った。
「ちょっ!まっ!俺今日行ったら5日目……」
「何言ってるんだよ。これが楽しみで青森に帰って来たんだろ」
と、すべっタローが言う。
「行こうぜ」
眠いが……行くか。
「ちょっと待ってろ!」
音環はそういうと部屋に戻り急いで祭りの衣装を身に付けた。
「待たせたな」
4人はにっと笑った。
まいったな…もう。
音環はタクシーの中でまどろんだ。
祭りばやしがどんどん大きくなって音環の耳に届いていた。
明日、何とかなるだろう。
「着いたぞ。観客参加の部はまだだ。行こう」
すべっタローが音環の腕を引っ張った。
参ったな。すべっタローが一番楽しんでるじゃないか。
巨大な人形灯籠を中から照らすオレンジの光。提灯の灯り。
全ての音をかき消す太鼓の音。そして掛け声。音もが光を放っていた。
すべっタローは駆け出した。続いて音環も追いかけた。
5人は祭りの光へと飲み込まれていった。
終
お付き合いをくださりありがとうございます。
無事に終章を投稿することが出来ました。
読んでくださる皆様がいることにとても励みになりました。
続いて、スピンオフで彼らの小学生の時の話を載せたいと思います。
全て書き終えていますので、時間を見てあげていきます。
また、ゆっくりお付き合いいただければ嬉しいです。
感謝を込めて。
群青 ひら




