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転生したら幽閉王子でした~これどうすんの?  作者: サクラ近衛将監
第三章 貴族として

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3―30 北部の異変対応 その十一

 中央政庁かどうかは不明ではあるが、例の大きな幕舎の中で。半時ほども待って、ようやくモナルクの盟主に会うことができた。

 タシュケル・ブントが一緒に来ていて、僕がモアナルクを訪れた理由を最初に大まかに述べた。


 おそらくは事前にそれなりの連絡が届いていたのかもしれないが、盟主が大仰に頷いた。

 その上で言った。


「さてカナロクの民は、我らに具体的に何を望むのだ?」


 明らかに僕にはわからないだろうと思ってタシュケル・ブントに向かってそう言ったのだ。

 タシュケル・ブントが苦笑しつつも僕の方を見る。


 これは、お前が言えということなのだろう。

 僕は、モナルクの言葉で言った。


「良き草原の盟主に挨拶を送ります。

 私の心は、この広い草原に浮かぶ雲のように真っ白で、何者にも縛られることなく、この大地の上を闊歩します。

 私は、ハーゲン王国からの使者としてこの地を訪れた、リック・オルト・バウマー・ブラッセルマンと申します。」


 盟主の驚く表情を他所(よそ)に、僕は続けた。


「その昔、ハーゲン王国は、侵略しようとしてこの地に大勢の兵士を送り、大敗北の上で撤退した事実もございます。

 また、近々(きんきん)においては、ヤーファリ族の縄張りに侵入した我が国の不届き者の兵士がおり、ヤーファリ部族の善良な夫婦を殺害するという悪辣な罪を犯しました。

 ここにいるタシュケル・ブントがモナルクの血の掟に従って、我が王国のヤーファリ族の街クツェンベルクまでやって来て、犯人の引き渡しを求めましたが、生憎とその街の代理の者がその意図を良くわからぬまま、金銭で解決しようと計り、タシュケル・ブント殿の怒りを買いました。

 それでもなお、タシュケル・ブント殿は二日の猶予を与え、犯人の引き渡しを求めましたが、その街の代理人は以後の交渉すら放棄して無視したことから、二日後の時間切れを待ってタシュケル・ブント殿は、一族の戦士に街への攻撃を指示し、その結果、ハーゲン王国の中でも11番目に大きな街一つが壊滅し、そこに居た無辜(むこ)の民も含めて全滅いたしました。

 そこに住んでいた住民は、兵士を含めおよそ1万人ほどでございました。

 我が国王は、その死んだ者への補償を求めるために私を派遣したのではございません。

 我が王国は、あなた方とこれ以上の争いを為すことを望みません。

 それゆえ、過(・)ぎ(・)去(・)り(・)し(・)過(・)ち(・)は(・)そ(・)の(・)場(・)に(・)留(・)め(・)て(・)、お互いの新たな融和の道へ進むことを望むものでございます。

 私はその融和の交渉をするために参りました。」


「我は、モナルクに属し、各部族により選出された盟主として、五年の任期の間、モナルク全体の代表としての責務を果たす者にて、クロカン・ペイラットと申す。

 して、使者殿は融和のために何を為すべきと言われるのか?」


「はい、我が王国とモナルクの領域の一部が接しておりますが、生憎と我が国との交流は古くからございません。

 モナルクを一つの国と見た場合、隣国とは諍(いさか)いをできるだけ少なくするために、互いの掟(ルール)を良く知った上で、例えば生産物の交換などもするのが普通にございます。

 モナルクの人々がカナロクのように貨幣を持たぬことも承知しておりますが、金ではなく物々交換でも交易は成り立ちます。

 そうした交易を通じて互いの掟や為人(ひととなり)を知るようにして行けば、お互いの掟を勘違いせずとも済むようになるものと考えますが、如何でしょうか?」


「ふむ、我は、左程カナロクとの交易を望んでいるわけでは無い。

 我々が必要とするものは既に我らの手に有るか、手に入れられるものなのであり、外部に頼る必要も無い。

 カナロクの人々は、自らの武力に溺れて、モナルクの至る所で小さな諍いを起こしておるのじゃが、そのいずれも我らの力で解決させておる。

 それゆえに、カナロクを対等の相手として観ること自体が難しかろう。

 我らモナルクにとって、ハーゲン王国との融和と交易により、何らかの利を得ることが有るのか?」


「されば、このラドックにても、人が生きるためには水が必要ですが、その泉は町のほぼ中央に有ると知りました。

 但し、水を汲みに行く者は、階段を降りて人の背丈の二倍半以上も地下に降りなければなりませぬ。

 その水汲みは、このラドックに住む者にとっては、女子供の仕事と教えられましたが、これが結構な労働になります。

 病に在る者や,妊婦などにとっては辛い仕事になりましょう。

 その泉の水を近場で汲み上げる仕組みを設けたなら、女子供でも楽に水を汲めるようになると思われますが、如何思われますか?」


 少し考え込んでから言った。


「ほう、水汲み場を作るには結構な労力を必要とするのじゃが、其方はこの町の中央以外の場所でも水を汲めるようにできるということを言っておるのか?」


「はい、一つは水を汲み上げる道具を提供できますし、現在の大掛かりな水汲み場ではなく、要所々々(ようしょようしょ)で比較的小さな井戸を掘り、そこにその道具を設置して簡単に水を汲み上げることができると存じます。

 但し、古来から連綿(れんめん)と続けて来られたモナルクの伝統が有って、そのような物を受け入れるとこができないとなれば話は別でございますが、何か、水汲みに関して禁忌(きんき)はございますか?」


「いや、無いな。

 個人で作業が可能な者は、井戸を掘っている者も多少は居るが、少なくとも2丈から3丈は掘らねばならぬし、人が降りるためにはどうしても大掛かりにならざるを得ないのだ。

 従って、我らの間では共同の水汲み場を作ってそれを使うのが昔からのやり方ではある。」


「特段の禁忌が無ければ、盟主の都合の良い時に、このラドックの指定する場所に井戸を作り、水を汲み上げる道具を設置いたして、ご覧に入れたいと存じます。」


「ふむ、その出来上がりを見てからでも良いのじゃが、その労力の報酬は如何にするつもりじゃ。

 我らの持ち物や産品では、其方たちの街で有用になるとも思えぬが?」


「いいえ、このモナルクの地に有って、我らカナロクの地には無い物がございます。

 一つは、ネブロンと呼ばれる鉱石にございますが、盟主殿はご存知でしょうか?」


「あぁ、知っておるな。

 確か、鍛冶師が金属で道具を作る際に触媒として使う特殊な金属と聞いておるが?」


「はい、その通りにございます。

 ネブロンは、このモナルクの中でも山岳よりの地下に眠っている鉱石と聞いておりますが、我がハーゲン王国では入手ができないものの一つにございます。

 また、あなた方が乗馬として使う馬も、交易の際の対価になりましょう。

 モナルクで使っている馬は、我らの王国で使っている馬に比べて健脚であり、丈夫でもあります。

 また馬の皮革で造られたものや、馬乳、あるいは、それを元にして作られた食品も交易の対価にはなるかと存じます。

 然しながら、商人というものは儲けに走る者が多く、抜け目がありません。

 その意味では、交易をする際には、モナルクの人々が騙(だま)されないようにすることも大事かと思われます。」


「ふむ、・・・。

 我らもカナロクの有象無象(うぞうむぞう)が、我が地に勝手に入ってもらっては困るからのぉ。

 これまで同様、仮に交易を許したとしても、当然に入域の際には厳格な規制をかけるつもりじゃが・・・。

 その件は、明日の午後一番で、其方たちが現在パルネオを建てているであろう来客用のパルネオ用地に井戸を作って、其方の言う道具を設置するところを見せて貰ってから色々と詰めるとしよう。」


「はい、では、明日の昼前には、準備してお待ちしております。」


 僕はそう言って引き下がったのだが、タシュケル・ブントは、盟主にその場に留まるよう要請された。

 来るときは二人に加えて大勢の護衛付きで来たのだが、帰りはその護衛付きで僕の幕舎へと戻ったのだった。


 ◇◇◇◇


 一方で残されたタシュケル・ブントは、盟主から使者であるリック・オルト・バウマー・ブラッセルマンについて聞かれていた。


「あの、使者は随分と若く見えるのじゃが、いまだ成人前では無いのか?

 一体どのような人物なのじゃ?」


「年若にはございますが、我らと違い、彼らは齢(よわい)10歳になると一応の成人と見做(みな)され、大人と同じような職に就くことが可能となります。

 そうは言っても、技術を伴う職人等に育て上げるにはかなりの年数を要しますが、10歳になると独り立ちは出来ずとも徒弟になったり、冒険者ギルドに属することができるようになります。

 冒険者ギルドとは、魔物の討伐や薬草採取或いは雑用等を仕事とする者達であり、10歳になればギルドに登録することにより冒険者としての活動が可能となります。

 そうして彼の場合は、名乗りの際には、申し上げてはいませんでしたが、カナロクの国ではかなり高位の人物となります。

 王国の中で国王の配下として多くの貴族が存在していますが、彼の階級は公爵であり、貴族階級の中では二番目の階級です。

 なぜあの年で公爵となったのかは聞いておりませんが、普通、貴族は世襲制を取っていますので、親が貴族であって引退するか、早死にしたので跡目を継いだというところかと思われます。

 肝心なのは、私が彼の周りに少なくとも10名以上の者を配置している点でございますが、盟主の元へは報告が届いておりましょうか?」


「ふむ、そちが20名の精鋭を連れて、ラドックに入ったとの報告は受けている。

 些(いささ)か物々しいラドック入りじゃな。

 道中左程に危険が有ったのか?」


「いいえ、道中に問題もあろうはずが有りません。

 普段なれば精々二、三人の供がいれば十分にございますが、20名もの戦士を連れて来たのは、あの客人の所為でございます。」


「ん?

 カナロクの使者だからとあれほど大仰なことをするそちでもあるまい。

 では、あ奴が危険だからという意味合いか?」


「左様にございます。

 彼のものは精(・)霊(・)使(・)い(・)にございます。

 私と最初に有った時、我らの言葉を解するのは、何故かと聞いたところ、この地に住む妖精から教えてもらったと言っておりました。

 また、彼は空間収納の魔法がつかえます。

 我らモナルクで収納魔法を使える者は非常に希少ですが、それらの者が収容できるのは精々樽一つ分程度。

 然しながら、我の目の前で彼が土産物として空間収納から出した量は、樽の50個分ではきかぬ量がございました。

 また、彼のパルネオは、我らのパルネオに比すると小さく見えますが内部はとても広く、10倍以上もの広さがございます。

 また内部は非常に壮麗に仕上げられており、やはり彼が高位の貴族と思わせるものがございます。

 いずれにしろ、我らが抱える戦士以上の潜在的な魔法使いと思われたので、念のために彼の警護ではなく、彼が不用意に動いた際の阻止役として戦士20名を引き連れて参りました。」



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