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ゴブリン先生、異世界を行く  作者: 青背表紙
12/154

12 迎撃

 はぐれオークを倒してから9日後、俺たちの群れの営巣地はオークの襲撃を受けた。


 この頃には網を使った狩りが成果を上げ始め、弓の扱い方に慣れてきたオスたちが鳥などを獲れるようになってきていた。一番若い母さんの出産も無事終わり、あと10日もすれば子供たちを連れて移動できるだろうと思われた。


 そんな日の昼少し前。木漏れ日が俺たちの営巣地を明るく照らし、オスたちはねぐらでのんびりと寛いでいるときに、ついにオークたちがやってきたのだ。


 俺は父さんたちと相談し、この来るべき襲撃に備えて何をすべきか考え、準備を進めてきていた。


 オークたちは営巣地を囲むように三方向から侵入してきた。襲ってきたのは比較的若いオスのオークが3匹。大体俺が予想していた通りだ。


 オークは家族単位で群れを作り行動する。ゴブリンよりもやや大きい縄張りを持ち、その中にいる生き物を狩る。この暗黒の森外縁部では食物連鎖の頂点の一角である。


 ゴブリンの群れを追うように行動し、群れを3~5日周期で襲撃してくる。襲撃してくるのは昼。群れが営巣地や森のねぐらで休憩しているときが多い。


 これはゴブリンの方が暗闇で活動するのに適しているからだ。夜間、闇の中を移動しているときのゴブリンを襲うより、昼間休憩しているゴブリンを襲うほうが楽なのだ。


 逆にウルフ種は夜間移動中の群れを狙う。彼らの高い敏捷性と探知能力を考えるとその方が効率が良いのだろう。ただ彼らは単体で行動し個体数も少ない。遭遇する可能性は低いのだ。


 俺は次のオークの襲撃まで、ある程度時間が稼げるかもしれないと予想していた。その理由は、はぐれオークだ。はぐれオークは見境なく近くにいる生き物を襲う。


 群れの中ではぐれオークが出現すれば、その群れは全滅かもしくは散り散りになってしまっているだろう。すると縄張りを維持できなくなる。


 つまり現在、俺たちの縄張りにはオークの群れが存在しないことになる。これは俺がじいちゃんからオークの習性について聞いたときに立てた仮説だ。


 主のいなくなったオークの縄張りには、別の群れから新たな縄張りを求めて若いオークがやってくる場合が多い。若いオークは縄張りを得るとやがてメスを見つけ、その縄張りの主となるのだ。


 そんな訳で次の襲撃までは時間がかかるだろうと予想したのだ。どうやら予想が的中したようだ。この若いオークたちは別の縄張りからやってきたに違いない。おそらくは縄張りを求め、群れを離れた兄弟だろう。


 オークが狙うのはほとんどの場合、巣の外側にいるオスである。巣の中にいるメスを捕まえるのは大変だし手間がかかる。子供を守るメスから手痛い反撃を受けることもある。


 食べるためにはどうせゴブリンを1~2人捕まえれば事足りるのだから、わざわざそんな面倒なことをすることはない。食料を全滅させないという本能なのかもしれないが、その辺はよくわからない。


 だがどうやらこのオスたちは狩りの経験が未熟だったようだ。俺たちの不意を衝くでもなく、ただ漫然と営巣地である広場に侵入してきたことからもそれが伺えた。


体の大きい2匹は森の中に逃げ出したオスを追いかけてきたが、一番小さな奴はなんと俺たちの巣がある倒木の隙間に入り込もうとしたのだ。


 想定外のオークの行動に少し焦ったが、直後に上がったオークの断末魔の悲鳴を聞いて、万が一の準備が功を奏したことが分かった。隙間から侵入しようとして動きの鈍ったオークを母さんたちが槍で仕留めたのだ。


 この槍が今回の迎撃の秘密兵器だ。体の大きなオークにもダメージを与えられるよう考えて作っておいた。槍の穂先には、はぐれオークの骨を削って作った刃を木の皮で作った紐で取り付けてある。


 体の小さいオークといっても、その身長は2mを超えている。倒木の巣の隙間はゴブリンが通り抜けるのもやっとなのだ。オークが入ろうとすれば体を伏せて捻じ込むしかない。


 中にいるのは戦う力のないメスと子供たちばかりと侮ったのかもしれないが、あまりにも愚かな行動だ。確かにメスには戦いの経験はないが、力自体はメスゴブリンの方がずっと強いのだから。


 相手がアホで本当に助かった。この調子で他の準備にも、うまくハマってくれるといいのだが。


 仲間の断末魔を聞いて他の2匹は一瞬動きを止めたが、すぐに怒りの声を上げ、オスたちを追いかけ始めた。仲間を殺された怒りで我を忘れているようで、意味なくも手にした棍棒を振り回してながら追いかけてくる。


 これはよい兆候だ。オスたちは俺と父さんの合図に従って二手に分かれ、あらかじめ決めていた方向へ逃げる。


 それぞれの殿を務めるのは俺と父さんだ。全力で追ってくるオークを挑発するように動き回りながら森の中へと誘導する。森の中に入った俺はピョンピョン飛び跳ねるように木の根を踏んで移動する。


 オークたちは木々で見通しが徐々に悪くなっているのにも気が付かず、俺に誘導されるがままに森の中を駆けてくる。怒りに我を忘れているとはいえオークの方がゴブリンよりもずっと強く移動速度も早い。


 2m30㎝はあろうという巨人が、手に丸太のような棍棒を持って追いかけてくるのだ。足を取られて転びでもしたらそれこそ一巻の終わり。命懸けの鬼ごっこだ。


 それもやがて終わりを迎える。俺は地面に隠しておいた目印を見つけると、少し大きくジャンプして、2m程先の木の根に飛び移る。オークは逃げる俺に追いつこうと速度を上げた。


 その途端、オークの足元が大きく崩れ、オークの体が地面に沈む。続けて上がるオークの叫び声。太ももの辺りまで地面に沈んだオークは痛みに怒りの声を上げ、手をでたらめに振り回しながら今落ちた穴から足を抜こうともがいている。


 だが簡単に抜け出すことはできない。オークの足には穴の中に設置された木の杭が深々と突く刺さっているはずだからだ。穴の底には上向きの杭を、壁面には簡単に抜け出せないよう下向きの杭を仕込んである。


 杭には触れると激痛をもたらす植物の樹液がたっぷりと塗り込んである。自分で仕掛けておいてなんだが、あまりの痛がりようにちょっと引いてしまった。うわーないわー。えげつないわー。


 オークが罠にはまるや否や、すぐに木の陰から網を持ったゴブリンたちが現れ、オークの後ろから網を投げかけた。この網も特別性だ。網の内側には鋭いトゲのある植物のツルが仕込んである。


 殺傷力はないが内側でもがけばもがくほど体に絡まり自由を奪う。それを次々投げかけるゴブリンたち。これは若いオスたちだ。暴れるオークに及び腰だが、そのおかげで一人もケガ人を出さずに済んだ。


 オークの動きが鈍ったところで、槍を持った大人のオスたちが現れる。もがき続けるオークの隙を油断なく突いて、オークの体に槍の穂先を沈めていく。


 深々と刺さった槍の傷から血が吹き上がる。やがてオークは断末魔の声を上げるとそのまま動かなくなった。オークの血を浴び、呆然とするゴブリンたち。


 それはそうだろう。絶対の捕食者だったオークを、若く未熟な相手だったとはいえ、最弱のゴブリンたちが倒したのだ。しかしその直後、我に返ったゴブリンたちは大きく勝鬨を上げた。


 営巣地の反対側からも同じような声が聞こえてくる。どうやら父さんの方もうまくいったようだ。父さんは無事だろうか。ゴブリンの犠牲者が出ていないといいのだが。

 

 こうして俺が考え、群れの皆で協力して実行した『オークを倒して豚肉まるっとゲット作戦』(作戦名考案:俺)は、大成功を収めたのだった。今夜は豚肉祭りじゃ、やっほーい!!

  



個体名:ガウラ(後藤 武)

種族名:ゴブリンソルジャー

生息地:暗黒の森

装 備:魔獣の黒角

レベル:7(17)

スキル:突撃L5 格闘L3 短弓術L1 登攀L2 潜伏L3 武器防御L1 魔力操作L1 魔力感知L1

魔 法:影隠L1

言 語:ゴブリン語

称 号:真の名を持つもの

状 態:狂化の呪い

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