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ホワイトポインセチア(20年目の再会1)

夫婦間の会話も儘ならなくなっていた。





そんなある日、家族で夕飯を囲んでいた夜半のこと。





一本の電話がなった。


この頃の携帯電話以外の固定電話に掛かってくるのは決まって支払いの電話か、



子どもたちの塾だの家庭教師だの勧誘。




そんな類いの電話に違いないと頭から疑っておらず





着信番号を覗くと‥


やはり、06発信。


大阪からだ。




受話器を取ると女性の声だ。



私の名前を確認した上で、一瞬、主人が私のカードでキャッシングした分なのか、保証人にでもされているのか?




この時の私は、金銭的なノイローゼに掛かっていた。



すると、その女性は




「ちょっと待ってくださいね」




と、男性に代わった。





私は怖くなって主人に電話に出てくれと受話器を渡した。





すると、電話は相手の方から切れてしまっていた。






「誰だったんだ?」


主人に聞かれたが‥


結局、冷静に考えると誰だったのか先方は名乗らなかった。






それでも、私は主人を疑っていた。



その頃は、次々と借金が判明していた頃だったのだ。





次の朝、午後からの仕事の為、掃除機を掛けていると電話がなった。







身に憶えのない番号だったが、息子の学校の方の局番からだったので‥支払いが滞っている駐輪所からだと思って出てみた。







「もしもし、蓉子ちゃん?蓉子ちゃんだよね!!」






聞き覚えのある声だった。

何だか体ごと力が抜けて 込み上げてくるものを感じた。


鼻がツーンとなり泪が今にも出てきそうになった。





「僕だけど‥分かる?分かるよね」



懐かしい声に、泪を堪えられない。



「分かりますよ。忘れる筈ないじゃない!どうしたの?突然だね。びっくりするじゃない!!」




深澤だった。



20年の歳月が流れているなど信じられないほど、その陽気な深澤の声は身近に感じた。




「驚かせて、ごめん。あのさぁ〜蓉子ちゃんさぁ、クリスマスに僕に花を贈ってくれただろう。そのお礼を言いたかったんだ」





「花を?」




「あぁ~」




「知らない!」





「あっ、ごめん。説明不足だったね。僕の息子がね。ヒロの母ちゃんからだと言うもんだから!?」







「えっ、待って。クリスマスに持っていかせたポインセチアのことね。と、言うことは翔ちゃんって深澤君の息子???」







「あぁ〜そうだよ。知らなかったのか」









「知らないも何も。翔ちゃんのお母さんが私の名前を訊ねたって聞いて‥変だと思っていたの」









「やっぱり、聞いたか!!ごめんよ、嫌な思いさせちゃったね」









「僕さ、嘘でもなんでも嬉しかったんだ。花を贈ってくれた女性を想像してたよ。その人が蓉子ちゃんだったらいいなぁ〜そう思って捜したんだ」







「捜したって?」










「真弓ちゃんに聞いたら、その姓は蓉子ちゃんの名前じゃないと言うし‥取り敢えず確かめてみるからと電話番号を教えて貰ったんだよ」










「私ね、離婚して、五年前に再婚したんだ。だから名前が分からなかったのね!」






つまり、こうだ!!










息子たちがクリスマス会をした。


殺風景な男部屋に少しでもクリスマスらしい雰囲気をとの思いで私は、




息子にポインセチアを持たせた。








真っ赤なポインセチアではなく

然り気無くホワイトポインセチアを‥



お調子者の息子は、何をどう話したのか‥




友達のパパ宛てに

私からの贈り物になってしまっていた。






神さまの悪戯?



こんなにまでして神さまは、私と深澤を引き合わせた訳はなんなのか?



何の為に‥





眠っていた私の20年前の思いを甦らせたのか!!?






「蓉子ちゃん、再婚しちゃったんだ!」



なんだか意味深な言葉だと思いながら‥


黙っている私に深澤は続けて、




「蓉子ちゃん、幸せなの?」


私は、心で泣いているのに満面の笑みを浮かべて



「幸せよ」



と、答えた。



深澤も、ホッとしたようだった。



最後に深澤は食事に誘ってくれたが‥



「今、仕事が忙しいんだ!!」


そう言うと、先に私の休みを聞いてきたのだ。



これまでの深澤ではない積極的なというか強引な深澤がいた。




「木曜と土曜日は午後が休診なんです」







「何処行ってんの?」






「歯医者さん」








「じゃ、木曜日の午後に連絡するよ」








「はい」






こうして、私たちは20年振りに会うことになった。




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