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ホワイトポインセチア(20年目の再会2)

電話で話したのが月曜日。


木曜日が来るのが楽しみでならなかった。



20年振りに会う深澤に、期待と不安が入り交じった不思議な気持ちであった。



そして、木曜日。



この日に限って午前中の患者が多く


大幅にお昼は回ってしまう。



案の定、ポケットに忍ばしていた携帯を開くと、深澤からの着信があった。



裏口に出て電話をした。


「ごめんね。今日は、まだ終わりそうにないんだ」



すると、



「終わったら電話して。どこかで時間潰してるから」




少し、安心した。




結局、家に帰って着替えると3時前。




そして、私たちは高校時代に待ち合わせていた場所で落ち合い。


ドライブに変更。


20年の月日は恐ろしく私たちを若者から坂道を転がり



「四捨五入すれば五十だね」


と、笑う深澤。



「何言ってるの?四捨五入だと私は四十よ」




お互いの子どもの話。家族の話。




私たちは急ぎ足で20年の隙間を埋めようと喋り捲った。



が、20年の隙間など お互いの顔を見た時点で埋められていたような気がする。




「ごめんね。今日は時間通りにいかなくて‥」



「いいよ、仕事だから仕方ないさ。この借りは、次の木曜に返してもらうよ」



西陽が沈みかけ、西の空が茜色に染まり出したけれど‥




話は尽きない。




いったい!!




この安堵感はなんだろう?



「実はね、次の木曜日、先生が学会で休診なの」



「じゃあ、決まりだな!!」



「何が?」



「魚を食べに行こう〜日本海へ」


深澤は、そう言って この時期の美味しい魚を色々教えてくれた。




「山奥に住んでる癖に詳しいのね」



「あぁ、海辺に住んでる蓉子ちゃんよりね」



「何さ、私だって瀬戸の花嫁で島にお嫁に行ったんだから魚のこと知らないことないほどよ」



「島から離縁された癖に」

深澤は憎まれ口も叩くようになっている。



その時、目と目が合った。見つめ合った。


多分、このシチュエーションでは、キスをする場面なんだろうけど〜



私たちはしない。


この先も 絶対にしないと思った。



何故か?



説明は出来ないけど そういった関係にはならないと思った。




見つめ合っている内に 泪が流れ出した。



「蓉子ちゃん‥」



「‥‥」




「なぜ、泣くの?」




「もう一生会えないと思っていた人に会えたからだよ。たぶん!」





「僕だって、同じだよ。いつも、蓉子ちゃんはどうしているのかと‥思わぬ日はなかったんだよ。あの花は蓉子ちゃんなら良いなぁ〜って思っていたから嬉しかったよ」



私は胸に支えていた事を訊ねてみた。



「結婚しないって‥30までは独身でいるなんて言っておきながら、なんで息子が同い年なの」




深澤は一瞬怯んだようにみえた。



「あの夜、蓉子ちゃんと最後に会った夜。言い出せなかったんだ。僕の所へ来いと‥」




「なぜ、強引にはっきりと言ってくれなかったの?」




「言ったさ、僕も僕なりに精一杯言ったつもりだよ」




「じゃあ、私が解ろうとしなかったの?」




「だから、手紙を渡したのさ。あの後、家まで泣いて帰ったことを憶えてるよ。何だか、急に寂しくなってね。お見合いパーティなんてのに行って出会ったのが今の奥さんだよ」




「そうだったの」






「私がいけなかったんだ。結婚に対して有頂天になっていたのね」




「いやっ、僕が解りやすく言えば良かったんだ」



私たちは、今更言っても、もう取り返しが付かない話をした。



でも‥

20年目にして答え合わせ

をした!心の奥底で引っ掛かっていたものが取り除かれた!



そんな気分だった。


晴々としたものではなく

懐かしい忘れ物を見付けた感じだった。





「でも、考えてみると変だね。私と深澤君って付き合ったことないのに‥ね」



「でさぁ~、蓉子ちゃん、幸せなのか?」



深澤は、また同じことを訊ねた。


私は、はぐらかした。




はぐらかしたのは、訳があった。




もし‥





この状況で私の現状を話せばとんでもない醜態を見せてしまうのではないか?




一瞬の深澤の優しい眼差し細やかな問いに酔いしれ その胸に飛び込んでしまうかもしれない。




私は、この問いかけを消さなくてはと、咄嗟に



「そう言うあなたは幸せなの?」



すると、深澤は真剣な面持ちでこう応えた。





「外から見ると、絵に描いたような幸せ家族をやってるよ!!」



「それなら、いいじゃない!」




「いいのか、悪いのか‥」


深澤の顔は急に陰を落とし、家族が今にも切れそうな細い糸で繋がっていることを話した。












そして、最後に


「今日、蓉子ちゃんに会えたこと‥神さまに感謝するよ」



深澤は、ポツリと言った。




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