【第十三章】明日は雨具を
しばらくして、また私は目を覚ました。
見慣れた天井だった。
隣には、いつもの布団。
子どもたちも、いつものように眠っていた。
やっぱり、夢だったのか。
そう思った。
あんな家も。
あの雨も。
空で起きていた戦争も。
母も、父も。
全部、夢だった。
そう思えば、何もおかしくない。
けれど。
あの家にいた子どもたちのことだけが、なぜか頭から離れなかった。
あまりにも多かった。
保育園みたいに、大人よりもずっと多くて。
そして、父があれほど小さくなったことを思い出す。
あのとき、私の腕の中にいた父は、あの子どもたちと同じくらいの大きさだった。
もし。
あの子どもたちの中にも、父と同じように、身体が変わった大人がいたのだとしたら。
そう考えると、あの異様な人数にも、少しだけ理由があるような気がした。
でも、本当のことは分からない。
夢だったのだから。
ただ、あの家にいた子どもたちの顔が浮かんだ。
見覚えのない顔ばかりだった。
なのに、その中に一人だけ。
なぜか、父のことを思い出す子がいた。
あの子は、本当に子どもだったのだろうか。
私はしばらく、天井を見つめていた。
外は静かだった。
夢のことを考えながら、もう一度目を閉じた。
その時。
どこか遠くで、大きな音がした。
空の中で何かが爆発したような音だった。
私は目を開けた。
けれど、もう一度見ても、そこにはいつもの天井しかなかった。
夢の中で聞いた音だったのか。
それとも――
玄関のほうから、かすかな物音がした。
私は起き上がらなかった。
しばらく、そのまま耳を澄ませていた。
やがて、静かになった。
その時、ふと頭の中に、あの男の声が浮かんだ。
――明日は、絶対に雨具をつけたほうがいいよ。
私は、なぜかその言葉を忘れられなかった。
その言葉を、前にも聞いたことがある。
そう思った。
けれど、いつ聞いたのか思い出せない。
夢の中だったのか。
それとも、もっと前に。
私は目を閉じた。
すると、またあの家が浮かんだ。
知らない部屋。
知らない家具。
たくさんの子どもたち。
そして、窓の外の空。
雲の中で、何かが爆発した。
私は、そこでようやく気づいた。
今まで見ていた夢を、私は一度見ただけではなかったのかもしれない。
何度も。
何度も同じところへ戻ってきていたのかもしれない。
同じ家。
同じ雨。
同じ人たち。
そして、同じ言葉。
――明日は、絶対に雨具をつけたほうがいいよ。
目を開けた。
そこは――
知らない家だった。
見覚えのない部屋。
見覚えのない家具。
なのに、そこにいる人たちは、まるで私がずっとここで暮らしていたかのように接してくる。
大人が何人もいた。
そして、それ以上に子どもがいた。
あまりにも多い。
ふと、窓の外を見た。
空がおかしかった。
雲の向こうで、何かが動いている。
飛行機のようなものが、何機も飛び交っていた。
その時、誰かが言った。
「外には出ないほうがいいよ」
私は振り返った。
そして、まだ雨も降っていないのに、
なぜか玄関に置かれた雨具のことを思い出していた。
――明日は雨具を。




