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【第十二章】母
母は、何も知らなかった。
たぶん。
雨の正体も。
人が変わる理由も。
空で起きていた戦争も。
検査員が何を探していたのかも。
それでも母は、子どもたちを守ろうとしていた。
雨が危ない。
外は危ない。
それだけは、分かっていた。
だから雨具を用意した。
玄関に荷物をまとめた。
子どもたちを外へ出さなかった。
そして、自分は外へ出た。
その結果、母は変わってしまった。
猫のような尻尾が生えても。
知らない言葉を話すようになっても。
それでも、最後に私に言った。
「あなたは外に出なくてよかった」
あの言葉だけは、ずっと残っている。




