第1話 プロローグ:ステルス・ホワイトアウト
2035年。
日本領海に浮かぶ、地図に載らない極秘の人工島――「第101号特別実験区」。
最新鋭戦闘機F-3、空母護衛艦「しなの」、次世代人型重機「AUV」、そして選び抜かれた陸海空の自衛隊混成部隊「特殊実験群」の精鋭たち。
その島の地下で極秘に行われていた防衛省の最高機密計画――【オペレーション・ヴォルテックス】は、巨大台風の落雷により暴走のトリガーが引かれ、隊員達はこれから起こる事態など露知れず、島は暗闇に包まれるーー。
――ドンッ、ドンッ、ドンッ!!
静寂の海を引き裂き、太平洋に浮かぶ人工島「第101号特別実験区」通称「0特区」《マルトック》
その広大な演習場に、地を這うような重低音が連続して鳴り響いた。
土煙の向こうから現れたのは、砲塔を横に向け行進間射撃を行う四両の「10式戦車」、そして二両の「16式機動戦闘車」計六両の車列が、遠くに設置された標的に正確な砲撃を行う、少し離れたところでは「87式自走高射機関砲」が上空の標的機に対して火を吹く。
本島周辺の空域では、正式採用されたばかりの最新鋭ステルス戦闘機「F-3」が大地を揺らす轟音を轟かせている。
だが、この合同演習における真の主役は、それら近代兵器のさらに前方に佇んでいた。
キィィィィン――プシューッ!
高圧油圧の鋭い排気音とともに、泥濘を踏みしめて立ち上がったのは、全高十メートルの濃緑色の鉄巨人。
防衛省が極秘裏に開発を進めていた多目的装甲特殊機ーー通称「AUV」《Armored Utility Vehicle》
人間の手を排し、右腕に30mm機関砲、左腕に爆発反応装甲のシールドを直結したその無骨な姿は、ヒーローロボットのような優美さとは無縁の、ただ敵を効率的に屠るためだけに設計されたような冷徹な「動く重機」そのものだった。
ドガガガガガ!と、前へ伸ばされたAUVの右腕が火を吹き始め、設置された標的を蜂の巣にしていく。
少し離れた場所に設けられた指揮所の防弾ガラスの特別席では、東京からヘリで訪れていた防衛大臣や、省の官僚たちが、その圧倒的な科学の暴力を満足げに見つめていた。
「まさか、漫画やアニメで見たような物が現実になるとはな」
同じく指揮所からその様子を見ていた特殊実験群所属、三等陸尉の宮田涼介が呟く。
「そうね、にしても、こんなに大きな演習をこんなに小さな島でするなんて、少し無理があるんじゃないかしら、こんなに物資を揃えちゃって...」
隣にいた二等陸尉の神崎麻衣の言葉がこの演習の異質さを物語っていた。
0特区に詰め込まれた大量の弾薬や燃料の備蓄は、すべてこの一大戦闘試験演習を支えるために用意されたものだった。
誰もが、このまま何事もなく試験は終了し、AUVは正式な自衛隊の装備品となることを確信していた。
――しかし、演習が終了したまさにその夕方。
太平洋上を突如として猛烈な速度で北上してきた、観測史上最大の「超巨大台風十五号」がこの人工島を直撃していた。
近くの海域で別訓練を行っていた最新鋭空母型護衛艦「しなの」やイージス艦「まや」、護衛艦「のしろ」「くまの」、輸送艦「おおすみ」、補給艦「ましゅう」からなる海上自衛隊の艦隊が、嵐を避けるための緊急避泊として、この人工島の港へ寄港していた。
その夜、0特区は過去最大規模の巨大台風の直撃を受け、地上は強烈な雨風に打たれていた。
現場の「特殊実験群」には一切秘匿された地下最深部で、防衛省最機密計画(空間湾曲ステルス実験)の最大出力テストが強行される。
――バリバリバリバリバリィィィン!!!
空間湾曲装置の出力が最大となったその時、地上の発電機に巨大な落雷が直撃し、直結された装置に強烈な電流が走る。
「空間湾曲装置の出力、150%を突破!?、何が起きているんだ!?」
「限界値を超えるぞ!、装置を強制停止させろ!」
「制御用メインコンピューターが焼ききれています!、停止できません!」
技術官たちが、耐電ゴーグルの奥の目を血走らせて絶叫する。
部屋の隅の配電盤から、パチパチと青白い火花が激しく吹き出し、プラスチックの焦げる嫌な臭いが一瞬で室内に充満した。
キィィィィィィン!!!
装置が甲高い音を上げながらさらに出力を上げていき、まるで大地震のように激しく震え始める。
次の瞬間、空間を光ごと折り曲げるための巨大な環状コイルから見たこともない紫色の光が放たれる。
「ーー全電源喪失!、各員、予備電源を……、通信、ロ、ロスト……ザーーーーッ……」
一瞬のうちに島全体の明かりが消える。
隊員たちの誰もが、それを「ただの大規模な落雷による停電」だと、翌朝まで信じて疑わなかった――。
初めて小説を書きました、投稿は不定期ですが、興味を持っていただけたら幸いです。誤字脱字の指摘やアドバイスなどはありがたく次に活かさせていただきます。




