64「既に常連になってしまっているのです」
「……アヘン、その格好はなに?」
「なんというか……凄いですわね」
レヴァティエの前で集合した私とアリデレス。私はいつものジャージ、アリデレスは……まあちょっとした黄金持ちの娘みたいな感じの服装ね。目立たない訳でもなく、かといって目立つわけでもない。派手な私服は控えた、という感じかしら。まあ肉食いに行く訳だから当然ね。
で、アヘンの格好はというと……正直びっっくりした。
黒い革のズボンに黒いジャケットと全身真っ黒。しかも中に来ているのは髑髏のシャツ。どこで売ってたのよそれ、というかこの世界の技術で作れるのそれ? んでなんで黒い剣を持ってきているのよこの娘は。
やばい、突っ込み所が多すぎる。
「……治安が悪いと聞いたから」
「私達が行きつけにしている店なのよ? 私達を襲う度胸がある奴なんていないって」
実際、襲ってきたのをちぎっては投げちぎっては投げを繰り返していたら、いつの間にかマの付く人に目を付けられて、なんやかんやあって気に入られたりとか……。
あらやだ私ったらすんごい悪役令嬢道歩んでいるわ。姫だけど。
というか、よくよく考えてみたらあれよね。1国の王女が余所の国の非合法組織とパイプ持ってるって結構ヤバいわよね。
……うん、これ以上は怖くなるから考えるのを辞めよう。面倒ごとは明日の私が解決してくれるさ。そして明日になったら言うんだ、明日の私が解決してくれるさってね。
「……それで、ここがお店?」
「そうよ。高級レストランレヴァティエ、私がよく通うようになってからお昼も開くようになってんのよ」
前までは夜にしか開いてなかったからねー。しっかし、昼間はやっぱり夜と比べりゃ人は少ないけど、それでもチラホラと姿は見受けられるわね。
というかここ、かなり治安悪いところなのに普通に貴族が来ているのよね。謎だわ……。
そんな考えを見透かされたのか、アリデレスがドヤッ、という感じに説明を始めた。
「オーラス大陸だと、貴族は自衛できて当然というのが普通の認識ですわ。バルカ様のところの大陸は違いますの?」
「両極端だな、肥え太っただけの豚もいれば馬鹿みたいに強い冗談みたいな貴族もいる」
「バルカ様みたいな?」
「……まあ、そうだな」
確かに私は強いけども、そこまで冗談みたいに強いという訳ではないぞアリデレスよ。
確か伝承だと、空飛ぶドラゴンをジャンプだけで一気に接敵してぶった斬ったという話があったし、私の同期で……何だったかな、馬鹿みたいにデカい熊を殴り倒した化け物もいたし。本当に極端なのよね。
私は席に着き一息吐くと、ふと故郷が今どうなっているか気になった。
家の方はまあなんともないとして、私兵がどうなっているか気になるわね。バルカ装甲師団、正直私がいなくても世界征服可能なくらいの軍事力を持った、私が1番信頼出来る部隊。
今なにしてるのかなー、アルストは意中の女性と付き合えたのか……たまには顔を出してみるかなー。
なんてメニューを眺めながら考えていると、ふと目がある文字で止まった。前はなかったメニュー、ここは冒険してみるか。
「バルカ様、なにを注文します?」
「南部オオカミのステーキ」
「……私も同じの」
アヘン、絶対後悔すると思うわよ。だって肉食獣のお肉って、なんか臭そうだし。
私? 蛮勇的好奇心には勝てなかったわ。命の掛かっていない場合、蛮勇さは話のネタに繋がるのよ。
アリデレスはオオウシガエルの唐揚げ。ゲテモノと思うなかれ、これは割と美味しいのだ。滋養強壮や美肌に良いらしい。まあ私が1番気に入ってるのは味だけども。
特に皮と肉の間にぷりっぷりの、コラーゲンっていうのかしら? いや脂? まあとにかくそれが濃厚で濃厚で。
オオカミ系統のステーキはどんな味か全く想像が付かない。だからこそ惹かれる。好奇心で殺されるようなことはしないけどね。
私は興奮と緊張を抑えるために、水を一気に飲み干した。あっ、キーンて来たキーンて。




