59「ミハル教の神様ごめんなさいなのです」
私はそこまで信仰心は持っていない方だ。この世界に生まれついてから存在している宗教を滅ぼした前科もあるし、そもそも前世でも無宗教だった。
神なんて信じていなかったし、くだらないと吐き捨てていた。
でも、そんな私でも、流石にここまではやらなかったしここまで出来なかったわ。
「インシナレーター!!」
床が突然発火したかと思うと、私達5人は重力に引かれるまま落下する。
地面にぶつかる直前に、アリデレスのかアリアンローズのか分かんないけどエアークッションが発動し、大けがはなんとかせずに済んだ。
しっかし、ああやっぱり驚いているなー。うん、ごめんなさい。私のせいではありませんけどごめんなさい。
「なっ、アリデレス……? モンテクルズ姉弟まで、なんで!?」
「そんなのはどうでも良いですわ! ケツァルコルトニー!!」
いやどうでも良くないんじゃ……と言いたくなるも、ヒートアップするアリデレスが面白いのでこのまま見ておくとしよう。性格が悪い? そんくらいじゃなきゃ軍師は勤まらんよ。
まあ2人が口論している間に、私も動いておくとするかしらね。ええと、あの牧師みたいな人が一番偉い人かしら?
「破壊してしまった屋根の方は、私の方から立て替えさせるわ。それでいいかしら牧師様?」
「しっ、神聖な教会でなにを――」
「返事ははいかイエスだ牧師」
適当に凄めば相手は水飲み鳥、こくりこくりと頷くだけ。
我ながらやってること超悪役だーとは思うけど、私は自分勝手に生きる! それが許されるだけの身分に生まれたんだからね! ノブレス・オブリージュとか知らんわ撃墜されろ!
「最初に言ってただろうが! お前のことは好きだけど恋愛対象としては見れないって!」
「ええワタクシは貴方にパンチ1発くれて身を引こうと思いましたわ! でも! ですが! それでもあり得ませんわ! 何故よりにもよってあんな枯れたババアなんかを!?」
おいアリデレス、ババアて……一応、学園の最大出資者をババアて……いや実際払っているのは教会という組織なんだけども、ババアて。
というか恋している相手をそんな風に言ったら……。
「なんだとテメェ! 俺の惚れた女になんつったぁ!?」
「何度でも言ってやりますわ! ババアって言いましたのよ!!」
やめてあげてアリデレス、そのおばあさんに何の罪も無いから。勝手に惚れたのケツァルコルトニーだから。
ほらちょっと涙目になってんじゃん! おばあちゃん可哀想じゃん!!
「テメェただで帰れると思うなよゴルァ!!」
まず最初に動いたのはケツァルコルトニー、雷塊を作り出す。その直径は……まあ、バスケットボールくらいかしら。私の身体に刻まれたリヒテンベルク図形がうずくわ。
だがアリデレスも負けていない、枯れ専に負けるものかと、巨大な火球を作り出す。大きさは一回り分アリデレスの方が勝っているわね。
突然の魔法使用に教会のシスター達は慌てて外へと避難、だがケツァルコルトニーがお熱なおばあさんは腰が抜けてしまっているよう。
……面白そうなことになってきた。
「ラスト、あのおばあさんの保護を。お2人は一緒に修羅場を見て楽しみましょう」
「あの、バルカ様……止めなくてよろしいんですの?」
「ああいうのはお互いめいっぱい発散させるのが一番なのよ」
まあ実際は、ただ単に楽しみたいだけなんだけどね。ミハル教ってかなり大きいみたいだし、教会がちょっと半壊したとしても寄付を募ればなんとかなるっしょ多分。
楽観主義? まあ他人事だし。
「アリアンローズ様、バルカ様の近くにいた方が安全ですよ」
「……姫の近くにいた方が安全って、それはそれでどうなのかしら」
言うなアリアンローズ、貴族の「そこらの近衛兵なんぞよりバルカ殿下と共に行動した方がよっぽど安全に行けるというものだ」と言われた私のトラウマが蘇る。
べっ、別にそんくらいで傷つくほどナイーブじゃないんだからね! 今は!




