55「モテない姉の弟はモテモテなのです」
愛人っていうのは、性別さえ気にしなければ割と簡単に出来るものだとボクは思う。
何故なら現にボクには沢山の彼氏がいるし、お姉様は沢山の女性に慕われている。きっと、1人や2人くらい誘えば応じるだろうに……なにを気にしているのやら。
「どうしました、ラスト。何か気になるものでもありましたか?」
「んーん、なんでもないよー」
ボクは彼を見上げながら、腕に絡めている力を強める。
ボクは男だから、男がどんな仕草や行動、表情をしたら弱いかなんてのは手に取るように分かるんだよね。まあボクが興味あるのはおちんちんだけなんだけど。
別に奢りでなくてもいいし。はっきり言ってしまえばイケメンでなくてもいい。問題なのはサイズ、ただそれだけなんだ。
「あのお店とかどうです?」
「いいけど……高いよ? 大丈夫?」
「大丈夫ですよ、俺はこれでも衛兵の隊長を努めていますので。このくらいなんてことないですよ」
衛兵の隊長かー……うん、手を切ろう。彼と深く関わったら色々と面倒なことになりそうだ。
でも駐屯地で輪姦されるのも……ありだね。ううん悩ましい。モノみたいに扱われるのも捨てがたいけど、面倒な関係になりたくもない。
さてどうするべきか……と悩んでいると、手を引っ張られて入店。
すると鼻腔を擽る良い香り……様々なお肉と香辛料が混ざり合った匂い。割と混んでいるけども、座れないという程では無い。隠れた名店って感じかな?
精霊の姿もちらほら、魔術師ってのが多く利用しているのかな? 精霊の格好って凄い綺麗なんだよねー、しかも自前らしいし。今度服屋さんに頼んで作って貰おうかな?
「どこの席が空いてる……か……」
「何かありましたか?」
ボクは彼の言葉も耳に入らず、ボクの視線は1つの席に釘付けになった。
何故ならそこには――
泣きながら肉の山を貪り喰うアリデレスさんと、その前で野菜の山を獣のように貪り喰うお姉様の姿があったからだ。
「この店はやめない? どこか他の店にしようよ」
「えっ、どうしたんです急に。何所でも良いんじゃ無かったんですか?」
「いやちょっと色々あって」
「大丈夫、君がビッチだってのはよく知っています。他の男と鉢合わせしたとしても俺は気にしませんよ」
男ならどれだけ良かったか……。
いやね、ボクの元利用者なら何の問題もないんだよ。そもそもビッチだって知っているから。
でもね、こう、血縁関係のある人とセフレが出会うのはちょっとね……。どうしよう。
「んあ? ラストじゃない、こっち来て一緒に食べましょうよー!!」
お姉様声大きい! ううっ、声を掛けられたからには行くしかないじゃないかあ……。
精霊さん、なにその面白そうって言いたそうな顔は。他人事だからって笑いやがって!
「え、えっと……大丈夫、かな」
「ああ、お姉様ですか。大丈夫です、俺は気にしませんよ」
気にするって言ってくれたら断る口実出来たのに! ええい、もうこうなったら腹をくくってやる!
いや、問題ないんだけどね。別に彼はお姉様の婚約者って訳でもないし、そもそも婚約者寝取った後でも普通に会話してたし。何発か殴られた事はあったけど。
ボクが手を引いてお姉様の席に行こうと歩いていたら、不意に彼が足を止めた。
「どうしたの?」
「え、えっと……その、やっ、やっぱり他の店にいたしませんか? 俺、ちょっと魚料理とか食べたい気分に――」
「あらアーノルド、ご機嫌よう。一緒に食事でもどう?」
彼、アーノルドって名前だったんだ……。というか、なんで彼はこんなに変な汗を掻いているのだろう。
まあ気にせずボクは、彼から手を放して空いているお姉様の隣の席に座る。
「どうしましたのアーノルド、遠慮せずワタクシの隣に座ってもよろしくてよ」
「いっ、いえ。そんな恐れ多いこと――」
「命令よ」
アーノルドも命令には逆らえないのか、渋々といった様子でアリデレスさんの横に座る。
でもかなりへっぴり腰で、いつでも逃げられるようにスタンバイしているようだ。見ていて情けなくなってくるけども、どうもこういう男って……放っておけないんだよね。
というかお姉様、もしゃもしゃボクの隣で野菜を食べないで。野菜だったら太らないって訳じゃ無いんだから、適量ってのを考えて。
「え、えっと。珍しい組み合わせだよね。お姉様とアリデレスさんが一緒って」
「まあ、色々あってね……」
「妙に服とかが汚れているのは?」
「……まあ、色々あったのよ」
路地裏でボクとアーノルドがコトをやっていた時に突然ミハル教の天井部分が爆発したのと関係しているんだろうなあ。というか、当事者なんだろうなあ。
お姉様ならやりかねない。
でもまあ、そんなのは今に始まった事じゃないから気にしないんだけどね。ジョイク教の偉い人に婚約者寝取られたから、悲しみにくれず嬉々として宗教潰しの口実にしたようなお姉様だからね。
「ラスト、あんたも何か頼みなさい」
「お姉様こそ、野菜ばっかりで大丈夫なの?」
「アリデレスが食べきれなかった分を食べる為に、お腹のスペースを空けとくのよ」
残飯処理する王女様ってそれどうなのお姉様。
そう言ってやりたかったけれど、一応お姉様はこの国では(多分殆どバレてるだろうけど)王女様っていうのは秘密になっているから、どうも指摘が出来なかった。
「大丈夫ですわバルカ様、お腹いっぱいになったら吐けば良いんですの。やけ食いですわー!!」
「アリデレスさん、それ歯に悪いからやめといた方が良いよ」




